第四章
『私は何もしない。ただ、見てるだけ』
「この犬、可愛い!ねぇ、圭太も思わない!?」
「ホント。連れて帰りたくなるよね」
私は今、彼氏の圭太とペットショップでデート中。私は動物が大好きだから、いつもデートはペットショップ。それに飽きずに、付き合ってくれる圭太も大好き。
「でも、美優さ、犬飼ってなかったけ?」
「ああ……。あれ、ね。あれは、気に入らないから、捨てちゃった」
瞬間、圭太の表情が固まる。
「……捨てたって?」
「保健所に連れて行ったの」
そう。私はいつも、その繰り返し。家が金持ちだから、すぐに飼っては捨てるの繰り返しだ。今回飼っていた犬も、全然可愛くないから、捨てちゃった。今日は、次のペットの下見に来たのだ。
「どうしたの?圭太が落ち込むことじゃ無いわ」
なぜか、表情を無くした圭太を不思議に思いつつ、励ました。
「……そうだね」
圭太は静かに言った。
「美優さん、おはようございます」
「おはよう」
私の取り巻き達が挨拶をする。学校は私の天下だ。誰も私に逆らわない。教師も私が後ろ盾を持っていることを知ってるから、文句も言わない。私は世界の全てだ。
「美優、おはよう」
「圭太!」
そして、圭太とはお似合いのカップルだ。取り巻き達もいつも噂している。
「ねぇ、圭太。昨日の犬、結局買ったんだけど、今日、見に来る?」
「うん。でも、勝手に行っていいの?」
「いいの!」
昨日の犬はお父さんに買ってもらったのだ。頼むと、「またか」みたいな感じで、さっさと買ってくれる。結構値の張る犬だったが、私に手の届かないモノは無い。
「じゃあ、今日来てね」
「うん」
「ちょっと、早く紅茶出してよ!圭太が今来たら、どうすんのよ!?」
「も、申し訳ございません。ただ今……」
「だからー、謝ってる暇あるんなら、入れてきてよ!」
ため息をつきながら、ソファに座る。全く、うちのメイドや執事は出来損ないが多い。お父さんとお母さんに言って、代えてもらおう。
やがて、圭太が家に来た。いつもより少し遅くて、心配してたんだけど。
「圭太!見て、これが新しい犬」
「ホントだ。可愛いね」
圭太はトイプードルを優しく撫でた。その手つきがあまりにも優しいから、トイプードルに嫉妬しちゃうとこだった。
「ね、私の部屋行く?」
「うん……。行きたいけど、俺、犬いっぱいいるとこ知ってるんだけど……、行ってみない?」
もしかして、そのために遅くなってたの?私のため……。
「うん、行く」
その瞬間、圭太の瞳がキラリと光った。
「ここ」
「え、ここ?」
見たところ、普通の野原だ。こんなとこに犬がいるはずが無い。それに、さっきから寒気がして、気分が悪い。圭太は場所を間違っているのでは無いだろうか?
「圭太?ここ、気持ち悪い。さっさと帰ろうよ」
「何言ってるんだい?」
圭太がそう言った瞬間、シュッと野原から何かが、抜け出してきた。それは、見たところ狼みたいなものだった。
「ひっ!?圭太……助けてよ。早く帰ろうよ」
「美優だって、過去に助けなかったことがあっただろう?」
「え……何言ってるの?私、そんなことしてないよ……?」
した覚えが無い。私はいつも賢くしてて、欠点なんか無いはずなのに……。目の前に迫る狼を見ながら、息も絶え絶えに答えた。
「……まだ分からない?最後のチャンスをあげるよ……。中沢千恵って子、憶えてるかい?」
最後のチャンス……?それよりも、中沢千恵って……。
「何で圭太が知ってるの?アイツも馬鹿よね。まんまと作戦に、引っ掛かったんだから。でも大丈夫。私は何もしてないもの。見てただけ」
圭太の目が赤く光った。それに伴い、狼が私により一層近づいた。
「君は最後まで、罪を認めなかった……。罰を受けてもらおうか」
「それって……」
「……Remeber Me」
圭太がそう呟いた途端、狼が私にぐっと近づいた。
「いやあああっ!!」
辺りがシン、となった。先程まで、あれほど騒いでいた美優も今では、血と肉の残骸でしか無い。仲間の狼は久しぶりの獲物に満足そうな表情を浮かべていた。
「Remeber Me……」
圭太はこれ以上、面白いことは無いと言う表情をした。気持ちもいつも以上に高ぶっている。
「罪深き者の肢体は美味しかっただろうね」
圭太は言った。
「次は……あの馬鹿な教師だ」
圭太が言った。そう、圭太が一番恨んでいたのは、千恵がいじめられている時に、何の対処もしなかった馬鹿教師……。
「千恵ちゃん、あともう少しで、君の傍に行けるから……待っていて」