84.ソース
リーゼはぺこりと頭を下げると、唇を一度、結び、そして質問する。
「界さんは……どうやって…………どうやってドウマ様を落としたのですか?」
「へ……?」【……~~】
(……落とすとは一体?)
「え、えーと……どういうこと?」
「あの……だから、私はローレライと……えーとその……」
首をかしげる界に、リーゼもおずおずと困った様子だ。
(あっ、つまりリーゼさんの持つ精霊ローレライにも意思があって……)
「仲良くなりたい……ってこと?」
「っ……! ……えーと……まぁ、はい……」
リーゼは少し恥ずかしいのか俯き気味に頷く。
「そ、そういうことだね……」
(うーむ、リーゼさんの目的がわかったのはいいんだけど……)
「リーゼさん、僕とドウマも仲が良いかと言われると……うーん……」
「そ、そうなのですか?」
【…………】
「うーん……、さっきも言った通りドウマは僕にとって師匠みたいな存在で、敢えて言うなら、僕の方が一方的に、尊敬しているというか……」
【……~~、だ、だからお前なぁ……!】
(ん……? しばらく黙っていると思ったら、急にどうした……?)
などと、界が考えている一方で、
「そ、そっか……。師匠、尊敬……それに、一方的に……か……」
リーゼは界の言葉をしっかりと受け止めていた。
「私にはない考え方だった……かも……」
「お……?」
「ありがとう……私、もう少し真摯にローレライに向き合ってみるね」
そう言って、リーゼは目を細めて微笑む。
(……)
界は初めて見るリーゼの顔に、少しだけハッとする。
【おい、小僧……なんなら儂様がそのローレライという奴をビビらせてやろうか?】
(「ちょっ……!」)
【儂様の闇の魔力を見れば、そやつも……】
(「ありがとう、ドウマ。でも……多分、いらないよ……」)
【……そうか。そうだな】
(「あぁ……」)
「それじゃあ、界さん、また……修行がんばろうね!」
「あ、うん……」
リーゼはどこか足取り軽く、部屋に戻っていった。
【時に……田介よ……】
(「ん……? なに……」)
【儂様も……】
(ん……?)
【儂様も……意外と……田介を……そ、そ……】
(「そ……?」)
【そ、そ…………ソースという現代の調味料は結構、美味であるな!】
(「はい……? ま、まぁ……おいしいとは思うけど……」)
【目玉焼きに、ソース……これは目から鱗であった! あははははは!】
(「まぁ、そうだね……」)
(なぜ急にそんな話を……)
(「よくわからんが、僕は訓練の続きをするからね!」)
【あ、うん……】
そうして、界は訓練を再開する。
【…………尊敬……してる】
ドウマが何かをぼそりと呟く。
「…………ん?」
(へ……? ソンケイ? …………尊敬? ………………へぇえええ!?)
◇
翌日以降も、ヨハン、リーゼとの訓練はしばらく続いていた。
特に、リーゼは以前に比べ、なんとなく顔付きが変わり、とても真剣に訓練に打ち込んでいるように見えた。
そんなある日のこと。
訓練中に、ヨハンのスマートフォンが鳴った。
それ自体はたまにあることで、珍しくもない。
ヨハンは、皆に軽く詫びつつ、着信を受ける。
だが、その日のヨハンの様子は明らかにおかしかった。
「ヨハンくん、どうしたのじゃ?」
電話を切ったヨハンにじいじが尋ねる。
普段、冷静なヨハンが明らかに狼狽えた様子で答える。
「た、大変です! 爺さんが……うちの爺さんが……倒れたみたいで……」
コミカライズ開始、いよいよ明後日!(1/14)




