66.技術交流会
「それじゃあ、破魔師と霊の審判者の技術交流会を始めるぞ」
(技術交流会……?)
じいじは更に続ける。
「ヨハンくんとリーゼちゃんは知っているかもしれないが、実は界には事前に何も言っていなかったから、この交流会の主旨を説明させてもらうぞ」
「「はい」」
ヨハンとリーゼが返事をする。
「破魔師と霊の審判者は同じ霊魔を祓うという目的を持っている。しかし、それぞれの土地で、それぞれ異なる文化で発展してきたため、両者に異なる技術が根付いている」
(ほぉ……そうなのか……)
「どちらが優れているということはないが、ある点においては習うべきものがあるかもしれない」
「なるほど、じいじ、つまり僕はドイツ式の技術を、ヨハンさんとリーゼさんは日本式の技術を取り入れてお互いに強くなろうってこと?」
「単純に考えればそうじゃ。ただし、そこまで単純な話でもない」
「……!」
「人にはキャパシティというものがあるのじゃ」
(……! ……じいじ、横文字使えるんだね)
「つまるところ、日本式とドイツ式、両方を取り入れようとすると、場合によってはどちらも半端になってしまうリスクもある。この偏りも人それぞれであるが故、注意しながら取り入れる必要がある」
「そうなんだね」
「界、これでこの技術交流会の主旨は理解できたか?」
「はい」
「よし、それじゃあ、何か質問はあるか?」
(……! 質問か……うーん……あっ)
「じいじとヴィンターシュタイン家の方はどういった関係なの?」
「ぬ……? 界はそういうことに興味があるのか?」
「え、まぁ、うん」
「まぁ、よかろう。じいじとヴィンターシュタイン家というか白神家とヴィンターシュタイン家の関係じゃな」
「うん」
「そうだな、白神家とヴィンターシュタインの関係は80年程前の世界大霊災の時、じいじのじいじの代から始まった。まぁ、言う程、歴史が古いというわけでもないのだが……。当時、その名の通りだが、世界規模の霊災が発生した」
(まじか……。80年程前というと、第二次世界大戦の頃だよな……。この世界では、戦争の代わりに大きな霊災が起きていたってことか……)
「中でも大霊災の初期に大きな被害を受けたドイツは孤立していた。そんな中、日本の破魔師がドイツの支援に動いた。それがきっかけで二者は同盟を結び、その後の日本が更に大きな被害を受けた際には逆にドイツに支援を受けた。で、その最初にドイツの支援に派遣されたのが白神家のじいさんだったというわけだ」
(ほぇー……)
「最初、ドイツは日本の支援を拒んだそうで、その対応に当たったのがヴィンターシュタイン家であった。それでまぁ、なんやかんやあって、ヴィンターシュタイン家の当主は白神家の説得を受け入れたってわけだなぁ……。それでまぁ、なんやかんやあって、親友となった」
(その、なんやかんやが気になるんだが……)
「それから霊災が収束して、国同士の同盟関係がなくなっても、白神家とヴィンターシュタイン家の関係は子、孫に引き継がれ、今に至るというわけだ」
(詳細は不明だけど、なんとなくわかったよ)
「じいじ、ありがとう……」
「白神のじいじさん、ありがとうございます。というわけだから、界くん、僕ともリーゼとも仲良くしてくれよな?」
ヨハンが爽やかにウインクする。
「あ、はい」
(……恐縮です)
界はちらっとリーゼの方を見るが、リーゼはまだつーんとしていた。
「ありがとう、ヨハンくん、リーゼちゃん。ヴィンターシュタインの爺さんから二人の話も聞いているぞ。ヨハンくんは一族でも随一の才能で超優秀」
「ふふ、爺さん、そんなことを」
ヨハンは苦笑いするが、否定もしない。
日本人のように謙遜を美徳とする文化ではないのだ。
「リーゼちゃんは……うん……ポテンシャルはあると聞いている」
(なんだ、その微妙なニュアンスは……)
じいじもヨハンの時より、若干、歯切れが悪い。
リーゼはちょっと俯いている。
「ありがとうございます。我々も爺さんから界くんの噂は聞いております。霊魔大国日本においても最強の霊、鬼神ドウマ様をその身に宿していると……」
(……ドウマはドイツでも知られているのか)
「そうじゃ……。うちの界は紛れもなく一族の歴史上で最大の才能じゃよ」
「「……!」」
じいじの言葉にヨハンとリーゼの顔色が変わる。
(あの……、じいじ、嬉しいけども、それはじじバカという奴では……)
「ふふ、それは……楽しみです」
ヨハンは不敵に微笑む。
「うむ、それじゃあ、主旨の説明はこれくらいにして、早速、技術交流に入っていこう。ヨハンくん、まずはお願いしてもいいかの?」
「はい、お任せください。ドイツ式封魔術をご覧ください」
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なにとぞよろしくお願いします……!




