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【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜  作者: 広路なゆる


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38.一之瀬家

「界様だ……! 界様がおいでなさったぞぉお! (こうべ)を垂れよ!!」


 敷地の外で十人くらいが並んで、深々と頭を下げていた。


「ははっ……なんかごめんね……界……」


 母は困ったように苦笑いする。


 界に深々と頭を下げている大人達。

 それは母の実家〝一之瀬家〟の方々であった。


「あぁあああ、界様ぁ、界様ぁ」


 十人の真ん中で、うやうやしく界の手を握る(おきな)が一人。


「お久しぶり、くまじいじ」


「っ……!!」


(ひっ……)


 界が挨拶をすると、爺はぶわっと大粒の涙を垂れ流す。


「界様……、こんなにも……こんなにも……立派になられて……」


「ちょ、お父さん、大袈裟すぎなの!」


「何を言うか! 真弓ぃ! 大恩のある界様への正当な態度であろう!」


「そ、それはそうだけど……」


「ははは……」


 界も苦笑いである。


 この翁こそが界の母である真弓の父であり、界にとっての母方の祖父である。

 通称、くまじいじ。


(した)ってくれるのは有り難いのだけど、なにごとにも限度ってものがあるぞ……)


 界はそんな風に思う。


 くまじいじの界への愛はもはや溺愛を通り越して、信仰に近かった。


 しかし、限度を突破する程の出来事があった。


 依代の子の……それも鬼神ドウマを宿した子の母が、歴史上初めて、依代の子の母として死を免れた。


 それはその実父からすれば、それ程までのことなのだ。


(正直…………前世では、くまじいじ、ちょっと苦手だったんだ)


 母方の祖父は寡黙(かもく)であった。

 祖母はすでに他界していて、田舎に帰っても祖父一人だった。


 父方の祖父のように、明るいタイプでもなく、あまり喋ることがなかったから、界はなんだかちょっぴり怖かったのだ。


 それが今世では、こんなにも変わるのだなと、界は少し不思議な気分になっていた。


(今も別の意味でちょっと怖くはあるんだけどさ……)


「ちょっと(じい)、いつまでも界様を独占してないで、私達にも譲れ!」


「ん、なんじゃ!? あぁああ!」


 くまじいじは端っこに追いやられる。


「界様、本当に大きくなられて……。真弓を救っていただき、なんとお礼を言えばいいのか」

「界様、なんて凛々しいお姿。できることなら握手していただけないでしょうか」

「界様……!」「界様……!」「界様ぁ……!」


 伯父(おじ)を始めとする母の親族や従者に、界はもみくちゃにされる。


【六歳のガキをこんなに持て(はや)して……教育上、よくないと思うぞ】


(……ごもっともすぎて、何も言えない)




 その後も散々、持て囃された界であったが、


「ちょっといくらなんでもやり過ぎ……! 長旅で疲れてるんだから、界と彰彦さんを休ませてあげて!」


 という母の発言により、なんとか父と界は静かな別室に案内されるに至った。

 母はなんだかんだもう少し親族の方々と一緒に話をしていた。

 ぷんぷんと怒る母の姿は、界にとってもあまり見ない光景であり、なんだかんだ心許せる場所なのだろう。


 ちなみに父と母はほとんど喧嘩をしない。

 喧嘩するほど仲がいいという言葉がある。

 でも、別に喧嘩をしなくても、仲がいい人は仲がいいと思う、などと界はふんわりと考えていた。


 その後、界と父は一緒にお風呂に入ることにする。


 まるで温泉宿のような大きな浴槽に父と二人。

 父には前世ではなかった古傷がいくつもあった。


 そんな父が界に尋ねる。


「界……、私が言うのもなんだが、大丈夫か?」


「え……?」


「あ、その……母さんのご家族の界に対する……えーと……」


 父は流石に言いづらいのか、ごにょごにょする。


「うん、まぁ、大丈夫だよ」


「そうか……」


 父は安心したように微笑む。


「そう言えば……界に、あまりちゃんと伝えたことがなかったな」


(ん……?)


「界…………母さんを救ってくれてありがとう」


「……!」


「私には、この家の方々の気持ちが痛い程わかる」


(…………だから、本来だったら教育上よくなさそうな俺への持て囃しっぷりにも、父ちゃんは嫌な顔一つ見せずに……)


「……だけど、父ちゃん」


「ん……?」


「俺はまだ……父ちゃんと母さんをちゃんと救ってない……」


「え……? い、いやいや、界、父ちゃんも母さんも界には救われてるぞ……?」


「違う……!」


「っ……!?」


「違うんだ、父ちゃん…………、救うのは……()()()()なんだ……」


「…………」


「……いや、なんでもない。ごめん……」


「…………」


 父は驚いたような顔をしていたが、それ以上は何も聞かなかった。


 風呂から上がると、父は事切れたように眠ってしまった。


 界もそろそろ寝ようかとしていた時、


「界くーん」


 部屋の(ふすま)の向こうから界を呼ぶ声がした。


(ん……? って、え……?)


 そこにいたのは、小学生低学年くらい。

 少し青味がかったショートヘアの可愛らしい女の子。

 要するに(あきら)であった。


「てへっ、来ちゃったのです!」


「え……!? な、なんで暁先生がここに!?」


「その先生っていうのやめてくださいです。普通にさん呼びでお願いしますです」


「あ、はい」


「よしなのです。なんでここに? については、青海家と一之瀬家はとっても仲良しなのです。だから出入りなんて自由なのです」


「そ、そうなんだね……」


(そ、それはそれとして……)


「暁さん、本当におうち戻らなくていいの? 暁さんのお母さんって瑠美(るみ)さんだよね?」


「え、はいです」


(暁のお母さんが瑠美(るみ)さんなら……その……もうずっとは居られないんだ……。少しでも長く一緒に……。いくら天才とはいえ、八歳児は八歳児。その意味を理解してはいないのか?)


「え? でも、お父さんがお母さんは死なないって言ってたのですよ?」


(え……?)


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