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【爆アド】生まれた直後から最強悪霊と脳内バトルしてたら魔力量が測定可能域を超えてました〜悪憑の子の謙虚な覇道〜  作者: 広路なゆる


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20.魔力お借りします

「魔力発現がまだの者は魔力発現の練習。すでにできるものは初級妖術の練習を行う」


 その日、界達は魔力制御の訓練を行うこととなった。


 界と雨を除く四人の子供たちは魔力発現の練習をすることになる。


 魔力発現の平均年齢は10歳である。

 しかし、練習自体はそれよりもかなり前から少しずつ始めるのが一般的だ。

 早い子では3歳くらいから始める家庭もある程だ。


「よし、それじゃあ、一人ずつやっていこうね」


 柔和系おじさん教官の栗田の号令で、まずは四人の子供たちが順番に魔力発現の練習を披露していく。


「んんーー、えい!」

「やぁあああ!」

「ぬぬぬぬぅ」

「…………にゅん!」


 しかし、そんなに簡単に発現するものではない。


「うんうん、皆、もう少し肩の力抜こうなー。でも大丈夫、上出来だよ。心配しなくても大丈夫。魔力発現ってのはある日、突然できるようになるものだから」


 栗田はしゅんと落ち込んでいる子供たちを励ます。


「それじゃあ、次は銀山雨さん。雨さんもここでの魔力制御の訓練は初めてだよね」


「……はい」


「雨さんはそれじゃあ、初級妖術をやろうか」


 雨は元依代の子であるため、すでに妖術を会得済みだ。

 元依代の子の多くは若くして、妖術を使うことができるようになる。


 だが、


「大丈夫、ここにはクラス3の破魔師も二人いる。もしも暴発しても大丈夫。落ち着いてやろう」


 栗田はそう言って、雨を励ます。


(「……暴発?」)


【……依代の子ってのは、生まれた時から慰霊の魔力で、タガが無理矢理、外されているような状態なんだよ】


(「……な、なるほど。ドウマがやろうとした奴ね」)


【あん……!? そんな生意気なこと言うと、教えてやらんぞ! まぁ、そうなんだけど……】


(「ごめんて」)


【まぁ、だから、慰霊が抜けた後は、感覚がずれて魔力の制御に苦しむ子が多いのは事実だな。その子本来の属性を慰霊によって上書きされている場合も多いからな】


(「……そうなんだね」)


 界は赤池が言っていたことを思い出す。



『そもそも悪憑の子ってのはね、七歳で悪霊が抜けた後はただの抜け殻。それまでの悪霊の支配がかえって邪魔になり、大成しないと言われている』



(…………大成しないか)


 そして、少しだけどんよりとした気持ちになる。

 自分は違うと思いたいが、過去の事例や統計というものは、往々にしてその通りになることが多いのだ。


(多くの人に認められる……みたいな大成がしたいわけではないけれど、せめて大事な人を守れるようにはなりたいな……)


 界がそんなことを考えているうちに、


「では、いきます」


 雨は準備を整え、そして、手を前方にかざす。


 と、


「ひゅー、どんな爆弾が拝めるやら……」


 数日間、おとなしかったいびり教官の兵藤が皮肉めいたことを言う。


(「あんにゃろ……」)【あの野郎ぉ……】


(……! ……えーと)【……! ……え、あ、おう……】


 思いがけず、界とドウマがシンクロしてしまい、なんかちょっと気まずくなる。


 しかし、雨は淡々と続ける。


「水術〝水環(すいかん)〟」


 水術〝水環(すいかん)〟。それは水の輪を作り出す水術である。

 水の輪を飛ばすことで、牽制(けんせい)の用途にも使うことができる初級水術だ。


 雨の手の平に、直径50センチほどの水の輪が発生する。

 非常に整った美しい輪だ。


「「え……?」」


 それを見て、教官達は驚きの声をあげる。


 更に、水の輪が、氷結した円環へと変化していく。


(「……氷? 綺麗だ……」)


【……ほーん、あの小娘、元依代の子にしては魔力が乱れていないな……】


 ドウマのその言葉が全てを現していた。


 だから、教官達も驚いているのだ。

 通常、元依代の子が繰り出す妖術はいびつな形に乱れ、うまく制御することができないのだ。


(「さっき、感覚がずれて魔力の制御に苦しむ子が多いって言ってたけど、雨さんはそうじゃなさそうってこと?」)


【まぁ、そうだ。偶然、憑依していた慰霊(雪女アサネ)の魔力と元から持つ子の魔力が近しいもので、親和したのかもしれぬな……】


(「なるほど……」)


(…………雨さん、すご……)


「上手じゃないか、雨さん……!」

「……っ」


 栗田は雨を称賛し、兵藤は気まずい顔をしていた。


「えーと、それじゃあ、次は……」


 雨の番が終わると、皆が界の方を向く。


「界くんはどうしますか? やってもやらなくても、どちらでもよいですよ」


 栗田も流石にドウマは怖いのか、そんなことを言う。


(……うーむ、父に言われている通り、光の魔力を出すわけにもいかないし、ここはスキップ……。っ……!?)


 スキップしようとした界であったが、他の子供たちが疎ましそうに界を見ていることに気付く。


「……う」


(……雨さん以外はどういう事情で保護観察にされているのかわからないけど、俺が一番年下なのに、なんかちょっと特別扱いされててな……、他の子の視線がちょっと痛い……。かといって光の魔力を出すわけにもいかない……)


「…………」


(「なぁ、ドウマ……ちょっと折り入って頼みがあるのだが…………魔力貸して。返せないけど」)


【いいよー】


(「え……? い、いいの……!?」)



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