100.界vs怪鳥
「えーと……救援、到着しました」
軽自動車から降りてきた界は周囲を見渡す。
状況としては、鳥が一匹、ヨハンがその鳥に対峙し、その傍らで横たわっているリーゼにじいじが寄り添っている。
「界っ……!」「リーゼさん……!」
じいじと界の声が被る。
「界、なぜここに?」
「なぜって、破魔師ポータルに情報発信されてたし」
「許可は……!? 彰彦か真弓さんにちゃんと許可はとったのか?」
「ぬかりなく」
界はサムズアップする。
「それより、リーゼさんは……!?」
「毒を浴びてな……。だから、俺が治療している」
「……じいじに任せていれば大丈夫ってことでいいの?」
「あぁ、そこは信じてもらってかまわん」
「わかった」
(じいじがそう言うなら大丈夫だな……)
「じいじはそのままリーゼさんの治療を続けてほしい。俺はこの鳥をなんとかすればいいんだね……」
「か、界くん、奴はグリム・アスシュナーベルといって、子供一人で何とかできるような相手じゃ……」
「光炎術〝白蓮凛火〟」
「ギィイイイイアアアアア」
グリム・アスシュナーベルは輝く炎に包まれ、奇声をあげる。
「Hä?」
ヨハンはその光景に口が開いてしまう。
「ギィイア……! ギィアアア……!!」
グリム・アスシュナーベルは明らかな苦悶の奇声をあげながら、なんとか炎から逃れる。
界は、そのグリム・アスシュナーベルに再び手の平を向ける。
「光炎術……」
「ギィア!!」
界は再び白蓮凛火を放とうとしたが、グリム・アスシュナーベルは素早く全方位に漆黒の矢を放つ。
(あっ……、この……!)
界自身、ヨハン、リーゼ、じいじ、鏡美、軽自動車は光の壁により守られるが白蓮凛火を放つことはできなかった。
【ふふ、田介、まだまだ修行が足りんのぉ】
頭の中で、ドウマが冗談めいた口調で言う。
(「わかってるよ!」)
ドウマの言う通り、界はまだまだ未熟であった。
例えば、広範囲の魄術による壁と、響術の大技を同時に出すところまではいけてない。
また壁自体にも地面に接していないと出せないなどの制約もあった。
(なら……)
界は懐から二枚の札を出す。
そして、
「封ぜし鎖、今解かれたり。
汝が意、汝が在り処へと。
望むなら共に歩まん、我が覇道へと!」
解印の呪文を唱える。
二枚の札は強い光を放つ。
「うにょ!」
一枚の札からは、意気揚々と熊燐が現れた。
そして、もう一枚からは、
「うねぇ……」
龍が現れた。
封魔術の実戦訓練の時に、蛇から龍へと〝変態〟した龍である。
その時に界により封魔されたのだ。
蛇の時には、峨蛇という霊魔名がついていたのだが、突如、変態したことで、新種の霊魔となってしまい、正式名称が決まっていなかった。
というわけで、ドウマのアイデアの元、界が命名した。
その名は、龍門である。
「熊燐、龍門! 皆を守ってほしい!」
「うにょ!」「うねぇ……」
二体は界による封魔が影響しているのか僅かながら光属性を持っていた。
光属性の共鳴により、二体には〝常時発動型の壁〟を付与することができたのだ。
(これで……ひとまずは奴に集中できるか……)
界は再びグリム・アスシュナーベルに視線を向ける。
と、
(あれ……?)
界は首を傾げる。
「ギィイ……ギィイ……」
奇声をあげるグリム・アスシュナーベルは周囲を漂う瘴気の量は増えており、一方で、なぜか二回りくらい小さくなっていた。
大きさで言うと、アンデスコンドルくらいである。
そして、
(っ……!)
グリム・アスシュナーベルは、非常に素早い速度で周囲を飛び回る。
まるで、「もう大技には当たりませんよ」と主張するように。
それを見て、界は息を呑み、思う。
(………………あれは……ちょうどいいサイズ感だなぁ……)
コミカライズ1巻の発売日が3/9に決まりました。




