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第六章:花嫁の選択
数月後。
帝国は改革され、平民の代表が議会に参加するようになる。
月の森も保護区となり、異類の存在が公に認められた。
ジュリエナは、王宮を離れ、月の森に住むことを選ぶ。
獣──彼の名はルナールと知った──と共に。
『花嫁よ、お前は満月の力を持つ。だが、人間としての日々を捨てた。後悔はないか?」
「後悔? あるわ。優しくなれなかったこと。誰かを、ただの恋で愛せなかったこと」
『ならば、契約を解こう。お前の心を取り戻すこともできる』
ジュリエナは、首を横に振った。
「いいえ。あの優しさは、この世界に生きていくには、脆すぎる。私は──強さを選んだ。そして、あなたを選んだ」
『……花嫁よ。ならば、もう一つの契約を結ぼう』
ルナールは、角をジュリエナの手に触れさせる。
『今度は、心の契約。お前が失った優しさの欠片を、我の心から分けてやろう』
光がふたりを包み、ジュリエナの胸に、温かい何かが戻った。
涙が、頬を伝う。
「……ありがとう、ルナール」
彼女は初めて、非人間の存在に、恋をした。




