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月喰いの花嫁  作者:
3/7

第三章:目覚める血


 契約の翌日、ジュリエナは牢獄から消えていた。

 衛兵たちは騒然としたが、誰も彼女の行方を知らない。

 実は、彼女は月の影を操る能力を得ていた。

 夜の闇に溶け、月光を纏うことで、姿を消し、跳躍し、風のように移動できる。

 そして、彼女は城を抜け、母の故郷──月の森へと向かった。

 森の奥には、古の祠。

 そこに刻まれた碑文には、こう書かれている。


 月喰いの一族、人ならざる者と契約し、運命を喰らう者なり。


 ジュリエナの母は、かつて月喰いの末裔だった。

 だが、皇帝にその血を恐れられ、処刑された。


「……お母様……」


 彼女の目から、涙がこぼれる。

 だが、それは悲しみの涙ではない。

 怒りと覚悟の涙だ。


「もう、誰にも操られない。私は、自分の物語を書く」


 その夜、ジュリエナは再び獣と会う。


『花嫁よ、お前はまだ、契約の半分しか得ていない。完全な力を使うには、婚礼の儀が必要だ』

「婚礼……?」

『月の満ちる夜、お前と私が一つになる儀式。それにより、お前は月喰いの真の力を得る。だが、代償もある』

「何?」

『人間としての心の一部を、獣に捧げねばならぬ。感情の柔らかさ、優しさ、儚い愛……それらの多くを失う』


 ジュリエナは、静かにうなずいた。


「構わない。優しくなんて、なりたくない。この世界は、優しい者を踏みつぶす。私は、強くなる。そして──正義を裁く」



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