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月喰いの花嫁  作者:
2/7

第二章:月の契約


 舞踏会の最中、ジュリエナは意図的にルチアのワインに毒を混入する──という、悪役令嬢の定番シナリオを演じた。

 もちろん、毒は偽物。

 彼女は「悪役」の役を演じつつ、自らの身を守るための策略を練る。

 だが、その夜──


「ジュリエナ・ルミ・バルクロア、反逆の罪により逮捕する!」


 突然、衛兵たちが彼女を取り囲んだ。

 皇帝の命令だという。


「なにを……? 私は何も──」

「証拠は十分。ルチア嬢の毒殺未遂、王太子への脅迫、そして……禁忌の魔術の使用」


 ──魔術?

 ──そんなもの、使った覚えはない。


 混乱の中、ジュリエナは牢獄に幽閉される。

 そこは地下深く、月光さえ届かない暗闇。

 だが、満月の夜──ガラスのない窓から、銀の風が吹き込んだ。

 そして、彼女の前に現れたのは──銀色角を持ち、月明かりを纏う鹿の獣。


『ジュリエナ・ルミ・バルクロア。お前は、月喰いの一族と契約する資格がある』


 声は、男とも女ともつかない。

 だが、心に直接響く。


「なぜ……私を?」

『お前は、偽りの運命に縛られ、真の声を殺されている。だが、お前の中には、月の血が眠っている。私の花嫁となり、契約を結べば──お前は、運命を断ち切れる』

「……花嫁? あなたと?」

『人間と獣の契約。異類婚姻。禁忌だが、真実の力を持つ』


 ジュリエナは、震えた。

 だが、逃げ場はない。

 処刑されれば、終わりだ。


「……承知したわ。契約する。あなたの花嫁になる」


 獣は、角をかざし、ジュリエナの額に触れると──銀の紋が、額に刻まれた。

 同時に、体中を走る熱。

 記憶の断片が蘇る──幼い頃、母が囁いた言葉。


「ジュリエナ、お前は月の子。決して、人間だけのものではない」



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