スピンオフ③.課外授業(前編)
「すずなさん、今日は課外授業です」
「エッ」
レア領白ロ地域中心部トモリ邸中庭。
あくる日の朝、今日も今日とて言霊の訓練を始めようとしたところで、エリーは突如として報告する。
なんだか少し楽しそうな顔をしている気がする。
「課外授業ったって、どこに。誰と?!」
「私だよ、スズナ」
廊下から姿を現したのは、見知った面影。
深紅の髪に、鮮やかな黄色の目。褐色がかった肌は数週間を隔てた今も健在。
「ガド!どうしてここに?」
「えへへ、スズナが頑張ってるってきいて、来ちゃった」
そう言うとパチとひとつウインク。
──ガドリニウム・キドレア。この世界で初めてのともだち、のような存在。
たしか赤眼地域という領土を治める「赤眼地域守護家」出身で、いつも忙しかったはずだが……。
「すずなさんの為ならと予定を開けてくださったんです」
「そ、そうなんですね……!」
私の疑問を察してか、エリーが補足を入れてくれる。
きっと私の思考をエリーの言霊が読み取ったのだろう。
「それでエリー。あたしたちは今日どこに行くのさ。知らされてないんだけど」
「それを今から発表しようとしていたところです。そこは……」
エリーはフフンと鼻を鳴らす。
─*─*─*─
「ここ、どこだよ……」
あれから小一時間後。なぜか私たちは深い森の中を歩いている。
エリーに連れられるがまま歩いた挙句のこれである。
樹々がざわざわと音を立てるのが、落ち着くような気もすればひとつまみの恐怖心もあおる。
まさかエリー、道に迷ったんじゃ──
「ばかにしないでください」
「っぱそうですよね。さすがエリーさん」
おっと、いけないいけない。
エリーはこういう心のボヤキでさえも読み取ってくるのだ。
気をつけねば。
エリーを先頭にしてしばらく歩みを進めていく。
エリー、メイド服なのによくこんな茨道歩けるなぁ、とか、そういえばガドもワンピースみたいな民族衣装着てるのに枝に引っかからないな、とか、考えながら歩く。
歩けば自ずと思考が広がる。
こういう、上手く歩くってのは慣れなのだろうか。
私ときたら、風になびくスカートを必死に手繰りながら歩くので精いっぱいである。
久しぶりにこんな歩いたからなぁ、なんて思いながらも、この歳で歩き下手ってなんだよと自らを戒める。
だいいち数週間前に大逃走したばかりだし。
……うわ、変な虫いる。きも。
早く着かないかなぁ、目的地。




