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ことだまの紡ぎ手  作者: 大場景
ふたばの章
40/41

スピンオフ②.聖地シュケーオンにて(前編)

「こんにちは、ハナモモ」

「あら、トモリさん。随分とお綺麗な格好ですね」


 約2時間後。

 ニジ教会聖地シュケーオン大聖堂にてトモリとハナモモが相対する。


「この格好さぁ、着心地すごい悪いんだよね……色も真っ青だし」

「色関係あるんですか」


 トモリは渋い顔でうなるが、ハナモモの方はひとつため息。

「いつものぼやきね」と軽くあしらう。


「それにしても随分と早くお着きになられましたね」

「そりゃあ、ハナモモに会いたいからね」

「言霊の話したいだけでしょ、適当言わないで」

「そういうハナモモも喋りたいんでしょ?」

「否定は……しませんがね」


 暫く談笑が続く。

 ハナモモとトモリは()()()()()()()()()()()()()

 だからこそ冗談も言えるし、それくらいが自然な関係性なのだ。


「最近はどんな言霊をお使いになったんです?」

「ふふん、炎を空中に留まらせることができたんだよ、これすごくない」

「炎を……。聖術では『最難(災難)属性』なんて呼ばれてるのに、すごい……」


 ハナモモは年甲斐もなく身を乗り出し、目を輝かせる。

 それにトモリも鼻を伸ばし、ない胸を張る。


「でしょう?我ながら天晴れ」


 ──ハナモモ・シレンチウム。50歳。

 言霊学者でありながらニジ教会穏健派首長の大役も担う敏腕聖職者である。

 これに加え世界中のニジ教会管轄孤児院を監督する「言霊強化省長官」の任も担っているのでかなり特殊な経歴の持ち主と言える。


「『聖術』では通常適合した属性しか行使できません。なのにトモリ様はなんでもこなされる。やはり言霊は興味深いですね」

「いや、言霊も聖術と同じだよ。基本はひとつしか能力を扱えない。だから多分私がおかしいだけ」

「そんなことわかっています。何年修行したと思ってるんです」

「そうだったかね」


 トモリはとぼけたように目を逸らす。口元はニヤと笑っている。

 それを見てハナモモも笑みが零れ……


「ぷっ」


 ふたりして吹き出し大笑い。

 しばらく他愛もない時間が流れる。


 ─*─*─*─


「トモリ様がいらしていると聞きましたがこちらですかな」

「お、スタビリスじゃん久しぶりだねぇ」


 応接室の扉に手をかけたのは、前『青の大司教』カロジャス・スタビリス。

 名門スタビリス家の13代目当主であり、穏健派の隆盛を主導した張本人である。


 現在ではハナモモの一人娘アネモネ・シレンチウムに『青の大司教』を譲っているものの、教会への影響力は依然保っている。


「大司教をクビになって早1年かぁ。老けた?」

「ちょっとトモリさん言い方」

「いいのですよシレンチウム卿。いつものことです」


 カロジャスは顎いっぱいに蓄えた白髭を触りつつ目を細める。


 ──『青の大司教』時代、トモリにされてきたことを思い返しているのだ。

 彼もまた「トモリに振り回された人物」の内のひとりなのである。

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