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「はあっ……はぁっ……!」


 どこまでも続く荒野の中を、私は走っていた。

 ただ、ひたすら。


 足がもつれる。転びそうになる。

 後ろを振り返り、地に手をつき、また立ち上がり、走る。




 異世界系。


 悪役令嬢、最強スキル、なろう系あたりに代表される、別世界線を舞台にした小説ジャンル。SFとかも、広く捉えれば入るだろうか。

 そんな物語において、異世界はしばしば「希望の象徴」として描かれる。


 当たり前だろう。そりゃあそうだ、創作だし。

 そうして人は、多かれ少なかれ異世界に憧れを抱く。


 しかし、私は思うのだ。


「はぁっはぁっ……はあっ」


 異世界は、救いなのだろうか。

 異世界は()()()()()()()()()()()()()


 ──少なくとも私にとっては、違う。

 それを今更になって理解するだなんて、私は馬鹿だな。異世界系に酔わされていたとしか思えない。


「はぁっハ、んぐっはぁ……はぁっ」


 剣と魔法。異世界特典で最強。世界征服。そんなものくそくらえだ。現に私はなにも持っていない。そんなこと、できるビジョンすら見えない。

 私の手元にあるのは、手に余る不安と虚無、そして後悔だけだ。


「はあっ……はぁっ……もうっ、帰りたいよおお」


 そう。

 私はなにも持っていない、いたって普通の人間で。

 私の思い描いていた「異世界」は所詮想像の域を脱しず。


 私は、一刻も早く「世界」から抜け出してしまいたいのであった。


─*─*─*─


 この物語は、ただの異世界譚である。

 わかりにくいだろうか、もう少し噛み砕くならば、ただの人生譚である。……噛み砕けてないか。


 でも、とにかく。

 私は、この物語を──私の人生を、生きていく。


 生きていかねばならないのだ。

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