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異世界食べ歩き日記〜チートでもぐもぐ旅 ~  作者: 犬沼わんわん
第1章はじまりはじまり
8/23

村を訪問。



「何者だ!武器を捨てて手のひらをこちらに向けて両手を上げろ!!」



異世界初めての会話に胸躍らせて村に近づいた第一声がこれだ。



なんでよー!!!と期待を裏切られた悲しみと予想だにしていなかった第一声に慌てる。村に来るまでは順調だったのに。。。










今日は、昨日とは全く違う感覚で目を覚ます事ができた。硬い床の冷たさを感じることなく、地球の寝具程ではないが、心地よくふかふかの感触に包まれていた。



ゆっくりと体を伸ばし、深く息を吸い込むと、清々しい朝の空気が胸いっぱいに広がる。「こんなに気持ちよく目覚められるなんて…」と、思わず微笑みがこぼれた。



ベッドの上での眠りは、体の疲れをしっかりと癒し、心まで軽くなった気分だった。



身支度を整えたらさっそく朝日が森の木々の間から差し込む中、村へ向かって歩き始めた。足元には露が光り、空気はひんやりとしているが、清々しい気配が漂っている。




「もうすぐ村に着くわね」と花畑の先、遠くに見える石壁に囲まれた村が、少しずつその姿をはっきりとさせている。石壁は、村を守るようにぐるりと囲み、入り口らしき大きな門と門番のような人間ががかすかに見える。



牛がのんびりと草を食べている姿も見え、平和な日常がそこに息づいていることが感じ取れた。



「なんて穏やかな村なの…」と思ったのも束の間、門番がバタバタと動き、門番役の人間が増えた。その光景を見つめながら、何事かあったのかと少し足を早める。



そこで冒頭の第一声に戻るのである。



最初は私の後ろに不審な人物でもいるのかと、慌てて後ろを振り返ったが、見えるのは高台まで続くなだらかな坂に咲く花々。



え?この門番さん達私に言ってる?しかも鋭い槍をこちらに向けて少し怯えた青い顔をしている。



頭の上にクエッションマークとはまさにこの事。言われた通り武器など持っていないので素直に両手を上げる。



「あの…何か誤解を与えてしまったようですが怪しいものではありません!」



慌てて声をあげる。



「はぁ?なに言ってんだ!死告げの花園を下ってきたのを見たぞ!!」



「武器も持たねぇ、荷物も持たねぇ、身なりも綺麗で怪我ひとつねぇ!!怪しい以外なんだってんだ!!」



「悪い魔女か器用に化けたモンスターの類だろ!この村にはたいしたもんはねぇ!森に帰れ!」



と緊迫した声で門番の人達が警戒の声を張り上げる。

状況理解できました?私はやらかしてしまったようです。



そしてこの花畑。【死告げの花園】っていうんですね。なんと物騒な。



頭を働かせて嘘八百を並べる。逃げ帰るのは嘘で説得してからでも遅くはない。



「確かに!この花畑を下ってきました。ですが高台までは森の奥で修行している仲間に送ってもらったんです!私は魔法が少し使えるので武器は持っていません!!」


「収納スキルがあるので荷物も持っていません!食材や物資が心許なくなってきたので補充させて貰えませんかー?」



と矢継ぎ早に話を進める。これで信じてもらえるか??



「身分を証明できるものをみせてみろ!ギルドカードは持ってるか?」



1番強そうな門番が聞いてきたけど、持ってないよぉー!!3日前に森の中に転生してきましたー!なんて正直に言わない方が良い気がするもん!



「山奥の田舎から出てきたのでまだ身分を証明できるものがありません…素材を買い取ってもらったり食材を売ってもらうことはできませんか?」



と悲しそうに小首を傾げてみる。なんといっても今の私は美少女だ。早速の最終手段だが。



門番達が狼狽えて言葉に詰まり、もう一息かと思われた時、



「ガルド隊長ー!!!大変です!マリウスがクワックバニーの群れに襲われて!!!」



最初に両手を上げろぅ!!と凄んできた貫禄のある壮年の男の元に、若い衛兵隊員が息も絶え絶えに走り寄ってきた。



「俺の許可なんていらねぇ早くポーションを使え!」



慌てて言葉を返している。



「それが、中級ポーションをきらしています!!初級ポーションでは間に合いません!!」



「まずい…次に行商人が来るのは?!」



「明後日だそうです!!」



と緊迫した会話が目の前で繰り広げられる。



私の治癒魔法使えばいいんじゃない?怪我人は助かるし、私は信用を得てwin-winじゃない?



「あのぉ…お話中すみませんが、私、治癒魔法が使えます!!お手伝いできるかもしれませんが…どうでしょう?」



するとその場に居合わせた衛兵隊員達が目を見開いて驚き顔をみせた。



「治癒魔法持ちだなんて一層怪しいじゃねぇか!!嘘だったらタダじゃおかねぇぞ!」



「嘘じゃありません!!実際に怪我された方の治療が終わるまで皆さんは私に槍を向けたままでいてもらって構いません!」



ガルド隊長と呼ばれた男は眉をひそめた思案顔で私を見つめてから「着いて来い」と村に引き入れた。



案内された詰所に横たわる1人の男性。男の体は、血と汗にまみれており、呼吸は荒く、胸は上下していた。



クワックバニーの鋭いクチバシ攻撃による無数の傷が、腕や脚、そして胴体にも刻まれている。



幸い、致命傷には至っていないが、痛々しい傷跡がいたるところに見える。男は両手で腹部を押さえていて、その苦しそうな表情からは、激しい痛みが伝わってきた。



顔をゆがめながら、彼の額には汗が滲み、顔色も青白くなっているが、今は何とか持ちこたえている状態だ。



深呼吸し、両手を1番傷が深そうな胴体にかざした。実際に探索中に負った自分の切傷や擦り傷を治癒魔法を使って治していたがここまで深い傷を治療するのは始めてだ。



傷口を清潔にする為『クリーン』の魔法をかけてから、血管、筋肉、神経を繋ぐイメージで血液の正常な循環と組織の再生を意識して魔力を注ぐ。



『キュア』



両手からは、柔らかな光がゆっくりと放たれ、男の傷口を包み込むように広がっていった。光が肌に触れるたびに、深く裂かれた傷口がじわりと収縮し、自然の治癒力が何倍にも強化されたよう少しずつ結びついていく。



後遺症や不具合を残さないよう慎重に治療を進め、時間がかかったが傷跡すらほとんど残らないほどに治療できた。

苦痛に顔を歪めていた男は、顔色が悪いが今は静かに眠っている。



「これで…大丈夫」と、リンは額の汗を拭いながら呟く。



途中から武器を置いて固唾を飲みながら治癒の様子を見守っていた隊員たちは、やがて安心したように息を吐き、それぞれが口々に感謝の言葉を述べ始めた。



「本当にありがとうございます」


「お嬢さんが村を訪ねてくださって良かった」


「武器を向けて申し訳ありませんでした。」



そこにガルド隊長が小銭袋を差し出してきた。



「さっきは無礼な態度を取ってしまって、申し訳ありませんでした。こいつは俺の甥っ子です。助けていただき本当にありがとうございました。今はこれしか手持ちがありませんが、受け取ってください。残りは必ず用意します。」



深々と頭を下げてきた。お金は大事だ。しかし今は、信用や情報が欲しい。



「治癒のお代は結構です。その代わり、今後この村を訪れた際に、私を信用して村に迎え入れていただけませんか? それと、この村の雑貨店や食材屋に案内していただきたいのと、世間知らずなので、色々と教えてもらえると嬉しいのですが…」




ヒロインスマイルでお願いする。金を受け取ってもらえないなら必要な資材や食料に変えて渡すときかなかったが、丁寧にお断りしそのお金でポーションを買い置きするように頼んだ。




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