唐揚げ食べたい。
「リン!!本気であれを倒すつもり? レッドホットバードは肉が食べられないし、倒されそうになると自爆して周囲を巻き込む危険な習性があるんだよ!」
モンスターに詳しいレオが焦った声でリンに呼びかける。
「ちゃんと鑑定したから、危険なのはわかってる!でも、レッドホットチキンは絶対に見逃せない!!」
「え、ちょっと待って。チキンじゃなくてバードだよ?!本当にちゃんと鑑定した?名前間違ってるって!」
レオは困惑しながらも、アルと目配せを交わし、リンの後ろを追いかける。
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鑑定結果
レッドホットバード
**特徴**:大型で体長2メートルほどまで成長する鳥獣モンスター。全身が真紅の立派な羽根に覆われているが、飛行能力はなく長い脚で地上を俊敏に走り回る。主な攻撃手段は口から吐き出す高温の火炎。
**特性**:縄張り意識が非常に強く、決まった個体同士4匹から10匹ほどで群れを作って縄張りや卵を守り、特に巣に近づく者には容赦なく襲いかかる。最大の脅威は、自分が倒されると悟ったときの「自爆」習性。日頃から胃袋に溜め込んだ石を爆発時に周囲へ飛散させるため、非常に高い殺傷力を誇る。この爆発は一帯を焼き尽くし、石の破片による二次被害をもたらすため、討伐には細心の注意が必要。
肉付きの良い身体には高濃度の辛味成分が含まれており、可食部分は多いものの食用には向かない。しかし、辛みさえなければ非常に美味な肉で、旨味が豊かでジューシー。一部の激辛愛好家にとっては、絶品と珍重される。辛味を和らげる調理法の研究が進められている。卵は非常に大きく、重さは約2キロ。一般的な鶏卵の25個分に相当する。卵の黄身は濃厚でクリーミーな朱色をしており、微量の治癒効果と疲労回復効果があり非常に美味。しかし、卵を盗まれたレッドホットバードは激怒し、周囲を焼き尽くす恐ろしい反応を見せる。そのため、卵を手に入れるためのリスクと、その卵を食べることを天秤にかけると、卵を狙う者はほとんどいない。
**価値**:真紅の羽根は常に熱を放ち、寒冷地では貴重な素材として重宝される。これを加工して作られた衣服は極寒の環境下では必需品とされる。また、その美しい色合いから高級装飾品の素材としても取引されることがある。
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「粉まぶして揚げたらレッドホットチキン♪熱々ジューシーレッドホットチキン♪」
ウッキウキで鼻歌を歌いながら走っていたが、ふとある疑問が頭をよぎり、急ブレーキをかけて立ち止まる。
「ねぇ、もしあのモンスター、自爆しちゃったら……お肉も羽根もなくなっちゃう?ちょっと待って!そういえば私、あのモンスターの倒し方知らなかった!!」
慌てる私の様子を見たレオがお腹を抱えて笑い出した。
「あははは!!爆発したらなくなるに決まってるじゃん!本当にリンは面白いなぁ!」
「まぁまぁ、落ち着けって。とりあえず倒したいのは分かったから、冷静になってくれ。レオも笑ってないで作戦立てるぞ!」
アルにため息混じりに言いわれ我に返り、こくりと頷いた。とはいえ、テンションがここまで上がってしまった理由は、実に単純だった。
こちらの世界に来てから、一度も「鶏肉の唐揚げ」を食べていないのである!
森で生活している間は嫌でもクワックバニーの肉が手に入るので、わざわざ鶏肉を買うことはなかった。クワックバニーの肉はササミや胸肉のような淡白な味わいで、それはそれで美味しい。でも、ジューシーさが足りない。唐揚げの衣を噛んだ瞬間にジュワッと溢れる肉汁――それを想像するだけで、食欲が爆発しそうになる。
「絶対に逃がさない……!絶対に揚げてやるからね!!あれは、どうやって倒すのがいい?ポケ◯ンだと、ほのおタイプの弱点はみず・いわ・じめんだったと思うけど!!」
「ポケ◯ンってのがなんなのか、揚げる気満々なのしか伝わってこなかったけど、いつものように、リンが氷魔法で動きを止めて、俺たちでとどめを刺す作戦でいいだろう。」
「えっ、でもポケ◯ンだと、ほのおタイプに対してこおりの攻撃はいまいちだけど……大丈夫かな?」
「氷魔法は攻撃じゃなくて足止めが目的だから。心配しなくていい。うまくいく。」
「だ、だよね。……じゃあ、アルの作戦でいこう!!でも、私のポケ◯ン戦法、いつか役に立つかもしれないから覚えておいて!」
ポケ◯ン理論を諦めきれない様子で言うと、アルは苦笑しながら「はいはい」相槌を打ち、レオは目をキラキラさせながら「あとでポケ◯ンについて詳しく教えて」と耳打ちしてきた。
現在、村は5匹の鳥獣モンスターに襲われていた。その鋭い鳴き声は耳を裂くようで、口から吐き出される炎が村の周囲を焼き熱波で空気が歪み、村を囲む森はすで焦げている。
村人たちは石壁の内側に身を隠しながら、手にした石やバケツの水を使って必死にモンスターを自爆させずに追い払おうとしているが、モンスターは容易に引き下がる様子はなく、追い詰められた村の危機は刻一刻と迫っていた。
「レオ、準備はいいか?」
アルが低く声をかける。彼の手には黒燐魔鋼の双剣が握られていた。魔法攻撃を弾く「魔障の盾」を展開してまずは兄弟がモンスターに近づく。
「もちろんだ。そっちはどうだ、リン?」
レオが自分の大剣を軽く構えながら振り返る。アップグレードされたばかりの剣は、彼の手にすでに馴染んだようだ。
「大丈夫だよー!2人を凍らせないように気をつけるから、2人も火傷しないように気をつけてぇー!!」
「了解だ。行こう、レオ!」
アルとレオは一気に前進し、モンスターの猛攻を盾で受け止めながら距離を詰める。灼熱の火炎が幾度も襲いかかるが、魔障の盾がそのすべてを弾き返す。
「もう少しだ!」
レオが叫ぶ。モンスターたちは動きを止めることなく攻撃を続けているが、2人はぎりぎりまで接近することに成功した。
その瞬間、大きな声で合図する。
「いっくよー!」
放った氷魔法は凍てつく冷気を広げながら一直線に進みモンスターたちを瞬く間に覆い尽くし、その動きを完全に封じる。何が起こったのか理解する暇もなく、モンスターたちは凍りついた姿で硬直した。
「やるぞ!」
アルとレオは迷うことなく動いた。凍結したモンスターに向かって疾風のごとく駆け寄り、その首元を剣で正確に斬り払う。
ズサッ、ボトッっと首があっけなく切り落とされ、モンスターの巨体が地面に崩れ落ちた。即座に首を刎ねられたことで、自爆する暇さえ与えられず、モンスターたちは沈黙した。
「2人とも、怪我はない?!さすがだね!!あっという間に終わっちゃったよ!!」
軽く手を振りながら近づく。
「いや、リンがいなかったらこんなに簡単にはいかない。凍らせるタイミング、完璧だった。」
「うん!こんなにレッドホットバードを簡単に討伐できるなんてリンの魔法はやっぱりすごいよ!」
アルとレオが肩越しに振り返り微笑む。褒められて照れ笑いを浮かべていると、石壁の内側から村人たちが一斉に出てきた。倒されたモンスターを見て誰もが安堵の表情を浮かべる。
「本当に助かりました!!」
一人の村人が声を上げ、感謝の気持ちを込めて頭を深く下げる。
「冒険者の方々ですか?」
別の村人が興奮気味に問いかける。
「あと少しで村人全員、焼き殺されるところでした…」
もう一人が、震えた声で続ける。焼け焦げた村の周辺の風景を眺めながら、その言葉に恐怖が滲んでいる。
「村を救っていただき、ありがとうございます!!」
全員が口々に感謝の言葉を述べ、改めて頭を下げてくるが、レオが疑問を口にする。
「どうやってレッドホットバードをあそこまで怒らせたんだ?縄張りを荒らしたり、卵を盗んだりしなきゃここまで襲ってきたりしないだろう??」
とのレオの問いかけに腰が曲がり気味の村長と名乗るおじいさんが渋々語り出した。




