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異世界食べ歩き日記〜チートでもぐもぐ旅 ~  作者: 犬沼わんわん
第1章はじまりはじまり
20/23

朝のひととき。



日が昇る少し前の静かな時間。



焚火の小さな炎が揺らめき、辺りを淡い光で照らしている。俺はその光をじっと見つめながら、背後から聞こえてくる兄とリンの穏やかな寝息に耳を傾けていた。



オブスキュアリングの共有効果により、近くにモンスターが現れれば警告音が3人全員に鳴るため、本来は夜の見張りをする必要はない。それでも、万が一の事態に備え、兄弟が交代で見張りをすることに決めた。



リンは「私も見張りをする」と主張したが、リンが探索スキルを常時展開しているので夜の見張りは俺たちに任せろと一方的に断り、強引に役割を分担した。



リンは少し納得がいかない様子で眉をひそめたものの、「役割をできるだけ平等に分担したい」という俺たちの主張を理解してくれたようで、渋々ながらも従ってくれた。



兄弟一緒にいれば何も怖いものなどない――そう信じていた俺たちの考えが、いかに甘かったかを思い知らされた日々。



笑顔は消え、空腹に耐え、傷ついた身体で歩き続け、兄を失うかもしれないという恐怖に苛まれた。



兄は少ない食料を俺に多く分け与え、何か危機が訪れるたびに自分を犠牲にして俺を守ろうとする。



俺はただ、兄に俺と同じくらい自分のことを大切にしてほしいだけなのに。毎日笑顔で、幸せに過ごしてほしいと願っているだけなのに。



それでも、俺にできることは少なく、ただ歯がゆい思いを抱えながら毎日必死に生き延びるしかなかった。



けれど――リンに出会った今、すべてが変わった。



星空を見上げながら、しみじみと思う。リンに出会えて本当に良かったと。



命すら危うかった俺たちを、彼女は救ってくれた。美味い食事を与えてくれた。傷だらけの身体も心も癒してくれた。清潔な衣服と暖かい寝床。こんな「普通の生活」が、こんなにもありがたいものだなんて…今の俺たちには痛いほどわかる。



その時、モゾモゾと寝床から起き出してくるリンの姿が見えた。



「おはよー」



「あれ?まだ寝てて大丈夫だよ。夜が明けるにはもう少し時間があるし。それとも、寝付けなかった?」



「目が覚めちゃったから起きてきちゃった。外で寝るの、初めてだったから少し緊張してたのかも。見張り、ありがとうね。寒くない?ホットミルク作ろうか?それとも見張りを交代して、少し休む?」



「いや、兄貴と交代する前にぐっすり寝たから大丈夫。それより、ホットミルクが欲しいな。」



「はーい。顔洗ってくるから、ちょっと待っててね!特別に、蜂蜜入りホットミルクにしちゃうから!」



寝起きの少しふわふわした口調で微笑むリン。月明かりに照らされるその美しい笑顔に、胸の奥がじんわりと温かくなる。



リンのおかげで兄に笑顔が戻った。重い怪我も癒え、飢えと絶望の底から俺たちを救い上げてくれた。ツノ狩りに怯える日々も、彼女の力で終わりを告げた。



これからは、俺がリンと兄の笑顔を守る番だ。蜂蜜入りホットミルクを待ちながら、俺は静かに心に誓った。



――リンに出会えた奇跡に、心から感謝しながら。



「はぁぁぁ。美味い!!」



一口飲んだ瞬間、ふわりと広がる優しい甘さが、冷えた体も心もじんわりと温めてくれる。ミルクのクリーミーなコクに蜂蜜の自然な甘みが絶妙に溶け込み、飲むたびに漂うほのかな蜂蜜の香りが、心をほっと癒しリラックスさせてくれる。



「ふふふ、レオもアルも甘いもの好きだもんねぇ。甘党兄弟って呼ぼうかな。」



「はは!それに関しては異論なしだね!」



笑い合う声が静かな夜明け前の空気に溶け込む。すると、背後の寝床からモゾモゾとアルが起き上がる気配がした。



「おぉ?兄に隠れていいもの飲んでるねぇ?さぁ、それをこちらに渡したまえ。」



寝ぼけ眼のアルが、冗談混じりで弟からホットミルクを奪おうと手を伸ばす。



「おはよう。アルの分もちゃんとあるよ。先に顔を洗っておいで。」



リンがそう告げると、アルは嬉しそうにそそくさと寝床を出ていく。背中を見送るリンの顔には、柔らかな微笑みが浮かんでいた。



「リン、本当にありがとう。」



急に真剣な口調で感謝の言葉を告げられ、リンは思わず首を傾げる。



「え、どうしたの?」



「リンと出会ってから、兄貴に笑顔が戻ったんだ。不安に押しつぶされそうだった日々が嘘みたいに、今は毎日楽しそうに過ごしてる。もちろん、俺も同じだよ。だから……本当にありがとう。」



「それは私も同じだよ!」



リンはまっすぐにレオの目を見つめ、笑顔を浮かべた。



「2人がいてくれるから、私も安心して過ごせるし、毎日がすごく楽しいんだ。だから、こちらこそありがとね!」



その言葉に顔が少し赤くなるのを感じながら、再び焚火を眺めた。





穏やかなホットミルクの朝を過ごした後、甘いもの欲に火がついた兄弟のリクエストで、朝食はパンケーキに決定。まだ早朝で時間もたっぷりあるので、メレンゲを使ったふわふわパンケーキを作ることにした。



生産魔法で卵白を泡立て、砂糖を加えてしっかりとしたメレンゲを用意する。それに先に混ぜておいた卵黄、牛乳、ふるった薄力粉を数回に分けて優しく混ぜ込んだら、最後に溶かしバターを加え、フライパンに生地をゆっくり流し超弱火で蓋をしてじっくりと焼き上げた。



シンプルに蜂蜜とバターでも十分美味しいけれど、今日はひと手間かけてジュエルドロップとリンゴの簡単ジャムを作ることにした。



フライパンに少量のバターを溶かし、切ったリンゴを炒める。そこに砂糖の代わりに、細かく刻んだジュエルドロップを投入。ジュエルドロップは火を通すと溶けて形を失い、トロッとした液状に変化する。リンゴと絡ませながら少し煮詰めると、ほどよい甘酸っぱさのジャムが完成した。



だが、それだけでは足りないだろうと少しボリュームのあるものも用意する。昨日の終焉サーモンの塩焼きを使ったおにぎりを作る。炊き立てのご飯にほぐした塩焼きと、刻んだ山葱を混ぜ込み、しっかり握る。海苔がないのは少し残念だけど、これからの旅の中で見つける楽しみにしよう。



パンケーキの甘い香りが広がる中、兄弟たちは目を輝かせながら待っている。



「リン、今日も最高の朝ごはんだね!」

「これなら朝から元気が出る!」



喜ぶ兄弟の声を聞きながら、ふわふわのパンケーキを丁寧に皿に盛り付けた。柔らかな朝日が射し込む中、甘くて幸せなひとときが始まる。



ふんわりプルプルと膨らんだパンケーキを目の前に、3人でフォークを手に取った。ふわふわの生地は触れるだけでスッと切れ、パンケーキの柔らかさに驚くように兄弟の目が少し見開かれた。



一口頬張ると、生地は驚くほど軽く、口の中でシュワッと消えていく。その直後に、ジュエルドロップの爽やかな甘味とトロピカルな香り。リンゴのシャキッとした食感とフレッシュな酸味が弾む。



「これは…美味すぎて止まらないよ!」

「パンケーキが口の中で溶けていく!」



幸せそうな笑顔を浮かべながら、夢中になってスフレパンケーキを味わっている様子は、こちらまで幸せな気持ちにさせるほどだった。



「「おにぎりもうまーい!!」」



やはり甘いものの後はしょっぱいものが恋しくなる。終焉サーモンと山葱のおにぎりをひと口頬張ると、香ばしく焼かれたサーモンの旨みと、ほのかに辛みを感じる山葱の風味が、ご飯の優しい甘さと絶妙に混じり合う。甘さが引き立てた塩気が、口の中にじんわりと広がり、さらにその美味しさを際立たせていた。



「うん、これよこれ。甘いものの後に食べるしょっぱいものって、なんでこんなに美味しいんだろう。」



呟きながら、次の一口を口に運ぶ。サーモンの脂がほんのりご飯に染み込み、山葱のシャキッとした食感がアクセントとなり、飽きるどころか食欲がどんどん湧いてくる。



パンケーキだけでは足りないだろうと兄弟のために作ったおにぎりだったのに、思わずもう一つ手を伸ばしたくなるほど、その味わいは格別だった。



朝食を終えると、本格的に兄弟が無くしてしまった武器の捜索に取りかかることにした。



「探すのは簡単だよ。」そう言った私に対し、兄弟は「またちーとだ……」と小声でコソコソ話している。そんな二人をよそに、私は探索スキルの設定を操作し始めた。



最近、鑑定スキルを活用して自分の持つスキルの仕組みを一つずつ解析しているおかげで、探索スキルもだいぶ使いこなせるようになってきた。今回は無くした武器を効率よく見つけるため、探索スキルの「表示詳細設定」を開いて、表示対象を「無機物」に切り替える。さらに、選択肢の中から「鉱石」「宝石」「魔石」「加工された無機物」「建材」「その他の無機物」と細分化された項目を確認し、「加工された無機物」だけに絞って設定を変更する。



聞けば、二人が武器を無くした原因は、ジュエルドロップに夢中になってしまったせいらしいから、探索スキルの範囲を広げ、ジュエルドロップのシルエット付近に「加工された無機物」の反応がないかを慎重に探すことにした。



ちなみに、兄弟が共有している探索スキルは、危険を察知するための「ハイライト表示」と「警告音」だけのシンプルなものだ。そのため、広範囲にわたる詳細な探索ができるのは私だけ。



集中して探索を続けていると、ようやく目当ての反応が見つかった。



「これかな?すぐ近くにデスラッシュボアの反応もあるから、きっとこれがそうだと思う!」



探索スキルでは無機物が緑色でハイライトされるのだが、兄弟の武器は1ヶ月ほど野晒しにされていたせいで劣化が進み、貴重度が下がっているらしい。そのため、ハイライトの色が薄く、探し出すのに少し時間がかかってしまった。



「野晒しだとここまで劣化しちゃうんだ……武器はちゃんと管理しないとやっぱりダメなんだね。」



そう呟きながら、私は反応の位置を慎重に確認して、近くにいるデスラッシュボアをどんな連携で討伐するか相談しながら気を引き締めて、私達は目標地点へと足を踏み出した。



エピソード20投稿となりました。いつも応援ありがとうございます⸜(●˙꒳˙●)⸝

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