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異世界食べ歩き日記〜チートでもぐもぐ旅 ~  作者: 犬沼わんわん
第1章はじまりはじまり
17/23

お誘い。



「闇魔法はッ、基本的にッ、東の帝国のッ、魔族の一部がッ、得意とするッ、隠密行動ッ、暗殺ッ、幻影ッ、などに特化したッ」



「あー、ごめんごめん!!トレーニング終わってから教えてくれれば大丈夫!」



『そういえば、私、闇魔法も使えるらしいけど、闇魔法って何?』と、呟いた私に、木刀で素振り中だったアルが、律儀に説明を始めたのを慌てて止めた。



兄弟は、私が生産魔法で作った木刀を使って、素振りや立ち合い稽古をしたり、筋トレに励んでいる。体力や筋力の回復を目指して、洞窟の前に作ったトレーニングスペースで黙々と汗を流している途中だ。



私は、まだまだ病み上がりの兄弟の護衛役。ここは終焉山脈、洞窟の外に一歩踏み出せば、危険がうじゃうじゃしている。



2人は、倒れる前に身体の中の魔力を全て使い切ってしまったせいで、得意の身体強化魔法が使えない。そのため、自分たちをか弱い子うさぎちゃんと自称している。うさぎに謝って欲しい。



魔力を使い切ると、その後魔力が溜まり始めるまでに時間がかかるらしい。多分、携帯電話の充電を10%から11%にするより、0%から1%にする方が時間がかかるって感じかな?



私は自称うさぎちゃんたちの横で魔法の練習をしたり、旅に出る際に必要な野営道具を作成したりしていたけど、今はお手製のスポーツドリンクを準備して、2人が休憩を取るまでボーッとその様子を眺めていた。



「ぷはぁー!うまい!もう俺、このすぽーつどりんく?無しでは訓練頑張れる気がしないよぉー。」



と笑顔のレオの横で無言で空のコップをこちらに差し出して2杯目を催促するアル。負けじと同じくコップを差し出すレオに2杯目を渡すと、喉を潤したアルが説明を再開した。



「闇魔法は、影や暗闇、幻影を操って相手に気づかれずに近づいたり、視覚を欺いたりする魔法で、隠密行動や暗殺なんかに特化している。使い手の存在感を消し去ったりでできるらしいな。直接的な破壊力はないが、敵を翻弄して気づかれずに制圧したりできる。」



「【スパイ、忍者、シーフ系】ってやつか…ねぇ、アル、それって自分の正体を隠すような変装とか偽装もできるってこと?」



「ああ、聞いた話だと、性別や年齢を偽ることもできるらしい。実際に闇魔法の使い手に出会ったことがないから本当かどうか怪しいが。」



「ま、出会ってたとしてもそれに気がつけないから厄介なんだけどねぇ〜!」



会話に割り込んできたレオをよそに、私はふと思いついて、それから頭をフル回転させて数日過ごすことになった。





私は2人に聞いたことがある。『そんなに狙われて苦労するくらいなら、もう片方のツノを抜いてしまったほうが、むしろ平穏が訪れるんじゃない?』と。もちろん、これは単なる素朴な疑問だった。



するとおどけたレオが



「おー、こわい。こわい。可愛い顔してすっごい提案してくれちゃったよこの子!聞いた?兄貴!」



するとアルも笑いながら



「まぁ、訪れるだろうな平穏というか、安息というか永遠の安らぎが!」



「え?どういうこと?死んじゃうの?ごめんなさい!そんなつもりで言ったわけじゃなかったの…」



慌てて謝る私にアルが説明してくれる。



「まぁ、ツノが無くなったからといって、すぐに死ぬわけじゃないしツノが無くなった事が直接的な理由で死ぬわけじゃない。弱くなるんだよ。身体が。魔力がなくなるから勿論魔法が使えなくなる。老化が急激に早まり怪我や病気になりやすくなって最終的にあっけなく死ぬ。」



と教えてくれた。だからこそ、2人は命の危険があっても、ツノを手放すことができない。ツノが無くなれば長くは生きられないから。ツノを守るために必死に戦い、逃げるしかない。



眉の上、額に沿って緩やかに湾曲するように生えた、10センチほどの目立つツノ。それは、彼らの逞しく大柄な体格と相まって、隠して生きていくのは難しいだろう。



すでに2週間ほど一緒に暮らして、2人には好感を抱いている。自分で言ってしまうのもなんだけど、こんなに美しい見た目の少女である私に対して、いやらしい不純な感情を抱くことなく、むしろ私に対して誠意を持ち、誠実な態度や行動を示してくれるし、明らかに歳下の見た目をしている私に対して心からの優しさと尊重を感じる。こうした接し方に、私も安心感と信頼を覚えている。



どうにか、2人がこの先、幸せに生きていける方法はないのか考えていた。私が2人をこの洞窟に匿い続けることもできるけど、それって幸せって言える?



正直なところ、私は2人に異世界を巡る旅についてきてほしい。まだまだ常識に疎いし、これが初めての旅だし、この可愛さで1人旅だとどんな危険な目に合うかわからない。なにより2人が一緒ならどこへ行っても心強いと感じる。



けれど、今のままでは「ツノ狩りの危険に巻き込んでしまうから」と、一緒に旅することを断られてしまうのは目に見えている。



だから、なんとか考えなければならない。ツノ狩りから身を守る方法を。そして、3人で一緒に旅をしようと思ってもらえる理由を。



それから数日間、地球の漫画やアニメの知識を思い出しながら、生産魔法で試行錯誤を繰り返し、眉間に皺を寄せて悩み続けていた。そんな私を見て、兄弟の心配も最高潮に達しそうな頃。



夕食終わりに話がしたいと兄弟に声をかけた。



ちなみに今日の夕食は、デスラッシュボアの肉を数時間かけて角煮の肉のようにトロトロにした後、厚切りにしてさらに強火で表面を炙り、にんにくと山葱とレモンで作った塩タレをかけて温泉卵を乗せたスタミナ塩豚丼。



それに山で採れたキノコと野菜をじっくり煮て旨みを引き出した野菜スープと、デスラッシュボアのベーコンと特製マヨネーズを使ったポテトサラダ。ジュエルドロップの実と果汁をそのまま凍らせて作ったシャーベット。



味付けはすべて素材の旨みと塩。

そう。塩だけ。



「ねぇ、今日の夕ご飯美味しかった?」



「うん!毎日美味いけど、今日もとびきり美味かった!いろんな場所を旅してきたけど、こんなに美味い飯は初めてだよ!いつも本当にありがとう!」


「あぁ、今日も最高に幸せな時間だった。この食事の対価が、ただ常識を教えることだけだなんて、少し申し訳なく感じるくらいだ。」



兄弟の嬉しい返答に、思わず顔がニヤけそうになるのを必死で堪え、深刻そうな雰囲気を作りながら、再び質問を投げかける。



「私ね、もっと美味しいもの作れるの。もっと美味しいご飯食べたくない??」



「もっと美味いなんて想像がつかないけどそんなに美味いものがあるなら勿論食べてみたいよ。」



目をキラキラさせてそう言うレオの横でアルも頷いている。



「では、私、リンからお願いです!!もっと美味しいご飯を作るための調味料、醤油・味噌や、美味しい食材を探す旅に一緒に来てくれませんか!?」



そしてアイテムボックスから2個の指輪型魔道具を取り出して差し出す。



「私がツノ狩りから守ります!!幸せにします!!よろしくお願いします!!」



私からしたら胃袋幸せにして掴んで離さない作戦だったが、兄弟からしたら



「「結婚の申し込み?!?!」」



顔を赤くして慌てて否定してから、お兄ちゃん属性全開のアルに、その見た目で男を勘違いさせるような言動や行動をしてはいけないと、少し長めのお説教を受けた後、ようやく指輪型魔道具の説明に取り掛かることになった。



「えーっと、これはモンスターの魔石に隠蔽と共有と魔力供給の魔法を付与した指輪じゃなくてツノ輪です…」



ちなみに、モンスターの魔石とは、異世界のお決まりでモンスターの体内にある石のこと。強いモンスターの魔石ほどサイズが大きく、使い勝手も良くなる。



「ほぉー?ふむふむ。続けて?」



全く理解していないのに、わかったフリをしながら説明の続きを促すレオに、思わず笑いそうになりながらも、必死で続きを話し続ける。



「これをツノに装着すると、隠蔽魔法でツノの存在を隠すことができます。それから、一緒に旅をするなら便利だと思って、私の探索スキルの一部の感覚を共有できるようにしてあるの。あとは、もう片方のツノの代わりに魔力を溜めて使えるように、魔力供給の機能も付与してます。」



「私が持っている魔石だと、これ以上魔法を付与すると、あまり魔力を溜め込めなくなっちゃうみたいで…。あ、それと、隠蔽魔法と共有魔法を常時発動させておくために結構な魔力を消費するから、定期的に私が魔力を補充したほうがいいと思う。」



「もう少し便利に作りたかったんだけど、今の私の知識と発想力ではこれが限界で…。あの、勝手に一緒に旅する前提で作っちゃったんだけど、もし嫌だったら、共有魔法の付与を外して渡すこともできるんだけど…どうかな?」



兄弟から反応がなくて不安になっていると、放心状態から先に冷静になったアルが真剣な顔で問いかけた。



「それで?伝説級の錬金術師が作ったような最高級品の魔道具をもらったら、俺たちはリンに何を返せばいいんだ?」



伝説?錬金術師?最高級?…え?…あー、、…



「………そんな…大層なものだと気づかずに作ってしまうこの無知な少女を導き…守護していただけませんか…?」



「…ぷッッ、はっはっはっはー!あーはっはっ!!ダメだよ、兄貴!!もう、リンを1人で旅に出したら、、速攻で悪いやつに捕まって、、慰み者にされながら、、死ぬまでいいように使い潰されるって想像しかできないもん!」



レオは息も絶え絶えに笑いながら、ひどい想像を口にしているけど、その通りすぎて反論もできずバツが悪い顔をしているとレオが続ける。



「俺はいいぜ、兄貴!リンを導き、守護する役目なんてかっこいいじゃん!その代わり、ツノ狩りから俺たちを守って、幸せにしてくれるんだろ?最高かよ!」



苦し紛れで考えたお役目だったけど、どうやらレオは気に入ってくれたようだ。アルは渋い顔をしながら、



「まあ、俺たちからしたらその条件で不満なんてあるわけないけど、リンからみたらこの条件だと不平等に感じるだろ?」



「いいえ!不平等だなんて全く何のことか分かってないけど、この条件で私も満足しています。だからお願いアル!一緒に旅するって言って!じゃないと私、悪い奴に慰み者にされて使い潰される未来しかないの!!」



必死に涙目でお願いすると、彼は吹き出して笑いながら「わかったよ」と言って、頭をポンポンと撫でて了承してくれた。





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