表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界食べ歩き日記〜チートでもぐもぐ旅 ~  作者: 犬沼わんわん
第1章はじまりはじまり
16/23

回復はのんびりと。



♪〜♪♪〜〜〜♪〜♪



鼻歌が聞こえる。しかも2人分。



ゆっくりと元気を取り戻しつつある兄弟は、只今入浴中である。



昼食の後、兄弟が『何か手伝えることはないか?何か役に立てることはないか?』とキョロキョロしたり、フラフラしていたので、大柄な2人でもゆっくり浸かれるように拡張したお風呂を試してもらうことにした。



湯船にはハーブを入れて薬草風呂にしてあり、行商人から買った石鹸も、生産魔法で髪から身体まで洗える万能石鹸に改良した。セントリーナから抽出した香料を加え、心地よい香りも楽しめる。



秘密を打ち明けてから数日が経ち、この異世界について教えてもらいながら、兄弟との共同生活も順調に進んでいる。お互いのことを知るにつれ、親睦も少しずつ深まってきた。



兄のアルは、少し天然なところがありながらも穏やかで、頼りがいのある優しい兄貴肌。彼は大陸の国々の文化や環境にも精通していて、異世界の一般常識を丁寧に分かりやすく教えてくれる。特に魔法に詳しく、あれこれと理論的な話をしてくれるが、自分ではうまく使いこなせず、知識だけが増えてしまったと言っていた。



一方、弟のレオは、話上手でユーモアがあり、誰とでもすぐに打ち解けるカリスマ性がある。モンスターや武器についても詳しく、過去に旅をして各地で出会った人々や経験を、面白おかしく語ってくれて聞いていて飽きることがない。



体調は順調に回復してきたけれど、まだ体力や筋力が戻っていないため、トレーニングを兼ねて外に出たいと思っても、この終焉山脈の険しい環境では危険が伴う。だから、今は洞窟内で過ごす時間が多くて2人とも少し退屈そうにしている。



そこで今日は、彼らにご飯作りを手伝ってもらおうと思いついた。下ごしらえから調理まで、少しずつ教えれば、楽しみながら動く練習にもなるだろうし、何より皆で一緒に料理を作ることでさらに仲が深まりそうだ。



「お風呂サイコー!!俺、お風呂で暮らしたい!」


「なんだよあの石鹸!フワフワのツルピカだよ?」



子供みたいに興奮したお風呂上がりの2人に、レモン水を手渡しながら「ツルピカの所残念ですが、粉まみれになって労働してもらいます!!」と冗談混じりに声をかければ



「粉まみれになったらまたお風呂に入れるじゃん!」


「労働の後のお風呂は絶対気持ちいいよ!」



とさらに笑顔になっていた。相当お気に入りのようで何よりです。




「今日は2人にうどんを作ってもらいます!」



「「うどん?」」



「そう、うどん。小麦粉をこねて、踏んで、伸ばして、切る!!」



「「踏むって言った?」」



相変わらず声を揃えている2人をよそに、作業工程だけ聞くと鬼畜の所業だなと思いつつ、準備をして作業を開始する。



生産魔法で作った大きい木のボウルに小麦粉を入れ、塩水を少しずつ加えながら、混ぜ合わせて塊が大きくなってくるまで練ってまとめてもらう。



「見て見て兄貴!俺の方が綺麗にまとまってるよー!」



と自慢げで粉だらけなレオを無視してアルの方は慎重に丁寧に練っている。そして私の方は次の作業に必要な道具を取り出す。



「ちゃらちゃちゃっちゃらぁ〜♪ビニール!!」



そう、今回のメニューをうどんにしたのは、ビニールの開発に成功したからだ。ただし、材料はスライム。



以前、スライムを鑑定した際に「特殊な素材に変換できる」と記載があったのを思い出し、兄弟を看病しながら試行錯誤を重ねてみた。というのも、暇すぎてスライムをいじり回していた結果、ビニールやラップ、さらにはゴムまで作れるようになった。



それ以来、スライムが思いのほか便利で、たくさん捕まえられた日はついニヤニヤしてしまうほどだ。



さて、こねているうちに愛着が湧いたのか、小麦粉の塊を撫でている2人。彼らの手元から一旦その塊を回収し、床に敷いた板の上に大きく作ったビニール袋(スライム袋)に入れた生地を置いて、指さしながら告げた。



「踏んで?」



すると、アルが少し悲しそうな顔をしたので、慌ててその理由を説明する。



「そんな悲しい顔しないでー!美味しくするために必要なの。踏むと全体に均等な力がかかって、粘り気が増して弾力がでるの。茹でてもコシが残るしっかりとしたうどんになるんだよー!」



「あれ?うどんて食べ物なの?」

「え?これ食べるの?」



「ん?ご飯作るの手伝ってもらうって私言ってなかったー??」



「「言ってないよー!!」」



そこからごめんごめんと謝りながら生地を踏んでもらい生地を休ませている間にうどんの汁を作る。



「デスラッシュボアの肉入りすましかき玉汁作りまーす!!」



というと、俺たちも手伝える? と、やる気満々の様子だったので、アルには山で手に入れた生姜のすりおろしと、同じく山で手に入れた山葱を微塵切りにしてもらう。レオには卵を割って溶いてもらう道具を手渡す。



私は、お鍋のお湯にフローリーフを入れて出汁を取ろうとしたその時、レオが言いかけた言葉を途中で遮った。



「それ、ケツを拭「違います!!!」



「この葉は、女神様が地上に産み出した天才的な植物なの!我々、味覚を持つ者に幸せとU・MA・MIを与えてくれる至高の存在なんだから!金輪際、決して『ケツを拭く葉っぱ』なんて言っちゃダメ!!」



「興奮して自分で言っちゃってるじゃねーか。トイレで使った後の葉っぱを間違えて料理に使わないでね?」



と、人にツッコミを入れながらも、冷静に考えて一番汚いことを言っているアルに物申しながら、3人でワイワイと料理を進めた。




「「うまーい!!」」

「美味しぃー!!」




かき玉汁が完成し、あまりの香りに我慢できなくなってしまい、うどんの生地を伸ばして切る作業は思わず生産魔法で済ませてしまった。



それでも、アルが練った生地のうどんはアルの器に、レオが練ったものはレオの器にと、それぞれ別々に茹でて渡すと、2人ともとても喜んでくれた。ちなみに、私のうどんは、2人のうどんをミックスさせてもらった。



3人そろって、まずはレンゲにひと掬いのかき玉汁をすくい口に運ぶと、思わず声を上げてしまうほどの美味しさが広がった。



フローリーフから取った出汁の風味がしっかりと効いたスープは、口に含むとまずその香りの奥深さが広がり、生姜の爽やかな香りと山葱のシャキッとしたフレッシュな香りが鼻をくすぐり、心が温かく包まれるような感覚に浸れる。



続いて、薄く細切りにして炒めてから加えたデスラッシュボアのバラ肉が存在感を放ち、コクと甘みのある脂がふわっと口の中に広かった。濃厚でありながらも重くない絶妙なバランスで、煮込まれた肉はとても柔らかく、噛むたびに甘さと旨味が溶け出していくのを感じる。



さらに、ふわふわの卵がスープにまろやかな軽さを添え、口の中で優しく広がる。卵のほんのりとした甘みが豚バラ肉のコクと調和し、味わうごとに豊かな風味がじわじわと押し寄せてくる。



次に、かき玉と絡むように少しだけ細く切り揃えたうどんをレンゲに乗せ、丁寧に冷ます。とろみがついた汁が絡んだこのうどんは、もはや熱々の危険物。勢いよく啜りたい気持ちをグッとこらえて、私の教えに従い、隣で兄弟も「フーフー」と冷ましている。



ゆっくりとうどんを口に運ぶと、驚くほどのモッチモチ感!手作りならではの弾力と、つるんとした表面が口当たりを優しくし、しっかりとしたコシがありながらも柔らかさを併せ持つ絶妙なバランス。スープの旨味が染みたうどんは噛むごとに美味しさが溢れ、舌から心までじんわりと満たされていく。手作りだからこそ味わえる温かみが幸せに拍車をかける、まさに最高の一杯が完成した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ