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俺の左右がハイスペック天使達に占拠されたんだが  作者: 影木とふ「ベスつよ」②巻発売中!
1 俺の左右がハイスペック天使達に占拠されたんだが

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41 俺の左右には天使達がいる 終




「…………子供の頃の俺よ、ついに夢が叶う時が来たぞ」



 早朝、俺は自室にて、子供の頃に買ったキャラクター物の貯金箱に手を合わせる。


「いつか叶えと願い、こつこつと貯めたこのお金。今こそ中身全てを使う時が来た……せぇのっ、オープン!!」




 夏休みに入り、一週間以上が経過。


 もう準備は終わっているのでのんびりと過ごしていたが、ついに『当日』が訪れた。


 朝風呂に入り身を清め、俺は赤い貯金箱を勢いよく開ける。


「うむ、結構あるな……よし、これなら余裕だ。ちょっと豪華に行けるかもしれない」


 中身を確認してみたが、少し驚くぐらいの金額が入っていた。


 子供だったし一体いくらかかるのかも分からず、無心でこの箱に全てをぶっこんだからなぁ。


 でもグッジョブだ子供の俺。


 買いたい物を我慢し夢を見続け……辛かったが、そのおかげで想定以上に豪華なフェリー旅になりそうだ。


「共に行くぞ、貯金箱」


 貯金箱一個はさすがにかさ張るので、フタだけをリュックに詰める。


 まぁアルバイトをしたので、そっちだけで充分お金は足りるのだが、元々はこっちが俺の夢の始まりだしな。苦労を分かち合った友みたいなもんだ。お守りとして付いてきてもらおうじゃないか。




「リューくーん、待ちきれなくてもう来ちゃったー」


 午前十時過ぎ、フェリー旅の集合時間はお昼過ぎなのだが、俺の実家の喫茶店の前に黒塗り高級車が来訪。


「ふふ、もう早くリュー君に会いたくて。集合時間まで二人でイチャイチャしながら……」


「おぅ、ざけんなよミナト。いくらなんでも早すぎだろ」


 黒髪お嬢様ミナトが車から降り、ニッコニコ笑顔で俺に走り寄ってきたが、そこに立ちはだかる壁が登場。


 金髪ヤンキー娘カレンが、ミナトと俺の間に仁王立ち。


「あれぇ……カレンさんの集合時間は夕方じゃなかったでしたっけー? 時間を守れないとか人として信じられないですねぇ」


「んなワケあるか。夕方のフェリーに乗るんだから、その集合時間はおかしいだろぉ?」


 いきなり俺の幼馴染みのハイスペック美女二人が睨み合っているんだけど、一体どういうこと。


 お昼過ぎに集まろうって伝えていたはずだけど、なんで二人同時に午前十時過ぎに集まるの。もはや、二人がしっかり打ち合わせをしていないと、無理な登場シーン。



「ミナト、カレン、来てくれてありがとう。今日は俺の夢が叶う瞬間を見届けて欲しい」


 俺はなんだか睨み合う二人の頭を撫で、優しく微笑みかける。


 ミナトはラベンダー色のワンピースに、同じ色の大きめの帽子。


 カレンはジーパンに緑のジャケット、さらにトウモロコシみたいな鮮やかな黄色いキャップ。


 ……なんとなく二人のカラーが北海道。


「……うわぁ、リュー君の顔が穏やかです。ふふ、リュー君にこの顔されちゃったら、私、なんでもOKしちゃいそう。こちらこそ夜はよろしくお願いいたしますね」


「リュー、その顔フェリーに乗ってからもう一回しろ。すぐに押し倒してヤっからよ……へへ」


 二人がいつもの笑顔に戻った。うん、これでいい。いや、なんか企んでいる悪い魔女みたいな顔だけど……まぁよし。


 せっかく旅に行くってのに、トラブルはごめんだぜ。



「あ、リュー君、一応うちのジェイロンにも付いてきてもらおうかと。彼はどうしても北海道に行ってみたかったそうで、自腹での参加になります。別部屋で、まぁ一応の保護者ですね」


「申し訳ありませんリューイチ様。勝手ではありますが、ご同行させていただきます」


 ミナトがイケメンハーフ運転手ジェイロンさんを指し、二人が頭を下げてくる。


「あ、どうぞどうぞ。北海道って楽しめるポイントたくさんありそうですし、行ってみたい気持ちは分かります。それにジェイロンさんがいてくれるのは、助かります」


 正直高校生三人旅は不安があるしな。そこに大人のジェイロンさんがいてくれるのは心強い。


「大丈夫です、絶対に邪魔はしませんから。存分に……お楽しみ下さい」


 ジェイロンさんが俺に近付き、小声で耳打ちをしてくる。


 え、あ、まぁフェリーの旅は夢だったので、そりゃあ楽しむつもりですけど。


 それより、なんで『お楽しみ』の前にタメを作ったの?



「カレンお姉ちゃん頑張ってきてねー!」

「お土産は事後写真ねー」


 ん? そういやカレンが来た時、ちびっ子が一緒にいるなと思ったら、カレンの妹さんたちも見送りに来てるんかい。


「おぅ、任せろ。ぜってぇ決めてくっからよ……!」


 二人の妹たちの声援に、カレンが拳を突き出し答える。


 フェリーの旅を楽しむではなく、頑張る? 事後写真に、決める……?


 なんというか、カレン姉妹って使う言葉が独特。



「リュー兄、負けないでよ。されるがままじゃなくて、ちゃんとリュー兄の主導で二人を喜ばせてあげるんだよ」


 我が妹リンも俺に声援を……ってリンも言葉が独特だけど、何。


 いや、そりゃあ二人には俺の夢に付き合ってもらうんだから、喜んでもらえるように全力を尽くしますよ。



「三人のフェリー旅を祝して……かんぱーい!」


「カンパーイ!」


 出発にはまだ少しあったので、喫茶店に入ってもらい飲み物を振る舞う。


 なんだかミナトがご機嫌に乾杯の宣言。テンション高いなー。


 妹リンにアイスを求められたが、いいよ、今日は俺のおごりだ。北海道産のアイスがあるからそれを食ってくれ。


 ついでにカレンの妹たちにもアイスを振る舞う。


「ありがとうリュー!」

「リューって紳士ー?」


 カレンの小さい頃にそっくりな妹たちだな。


「かわいいなぁ二人とも。お見送り偉いなぁ。うん、頑張ってくれた二人には俺が飲み物奢ってあげるから、いつでも喫茶店に来てね」


「うわぁ、リューが誘ってきたぁ」

「狙われてるぅ? これロックオン?」


「……おいリュー、どういうことだ。私じゃ物足りねぇのかぁ? いいだろう、フェリーで私の実力を思い知らせてやるからな。結構色々読んで勉強したんだぞ……覚悟しろ!」


 見送りに来たカレンの妹たちに優しい言葉をかけたら、カレンにすっごい睨まれたんだけど、なぜ。


 勉強って、何……。


「まぁ……いつもの力任せのやつかしら? ダメですよ、そんなんじゃリュー君は喜んでくれませんよ? その点私は優しく包み込むように甘くゆっくりと存分にリュー君を締め上げ……」


 カレンの言葉にミナトも反応してきたが、締め上げ……?


 なんか最近、ミナトから予告犯罪みたいな単語が出るんだけど、なんだろう。


「リューから来るなら、私は強引でもいいぞ。全部リューのヤりたいようにしていい。最初なんてそんなもんだろうし、何度もヤれば慣れるだろ」


 カレンさん? 俺はずっとフェリー旅の話をしているんだけど、周りのみんなの会話が微妙にズレている気が……。


 初めてのフェリー旅だし、そりゃあ状況によっては予定通り行かず、強引とも思える強行軍のスケジュールもありえるけど。


 まぁそれこそ何度かフェリー旅を経験すれば、慣れ、も出るだろうな。



「でも最初は優しく、がいいですねぇ……耳元で甘い言葉をかけてもらって……」


「それもいいけどよ、ガツンガツン来るのも良くねぇか?」


 ああもうダメだ、二人が妙な方向に興奮し始めた。


 これはもう、それこそ強引に出発だ。



「今日はわざわざ俺のフェリー旅のお見送りに集まっていただき、ありがとうございます! 少し早いですが、もうフェリー乗り場に移動したいと思います。随時連絡は入れますし、俺一人ではなく、ミナトとカレン、そしてジェイロンさんが付いてきてくれるので、心配はないと思います。それでは……行ってきます!」


「あ、リュー君、最低一回ずつお願い……ってもう行くのですか? ふふ、早いですが……リュー君が望むのなら、良いですよ」


「ここじゃ邪魔が多くて集中出来ねぇってことだろ。早く向こうで楽しもうぜ、リュー。あはははは」


 これ以上のお見送り会はトラブルが大きくなりそうなので、早めにフェリー旅へと出発することにする。


 俺はミナトとカレン、二人の手を握り、喫茶店を出る。


 集まってくれた両親、妹リン、カレンの妹たちに感謝をし、俺は夢を叶える為の一歩を踏み出した。


「あー楽しみですね、リュー君! ついに始まる三人でのフェリー旅、もう今から心臓がドッキドキです!」


「私にミナトにリュー、この三人だから楽しいに決まっている。今後何度も三人で行くんだろうけど、これが最初のフェリー旅だぜ!」


 ミナトとカレンがとても良い笑顔。


 ああ、やっぱり二人を誘って良かった。


 この二人が一緒じゃないと、楽しいフェリー旅にはならないと思う。


 

「行こう、ミナト、カレン。この三人だからこそ楽しいフェリー旅へ!」




 俺の左右には天使達がいる。


 この二つの羽があれば、俺はどこにだって行けるような気がする。


 俺の手に引かれ笑っている二人を見て、俺はそう思った──








俺の左右がハイスペック天使達に占拠されたんだが ──完──



















最後までお読みいただきありがとうございました。


 影木とふ







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