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エピソード7:
「宇宙は皆のもの」計画が順調に進む中、灯牾とうごはある決断をした。それは、自身の故郷である日本に、宇宙野菜を広めるという新たな挑戦だった。
「日本の農業も、宇宙技術を取り入れる時代になったんだ。私の経験が、少しでも役に立てばいい」
そう語る灯牾とうごの言葉には、八百屋時代からの "野菜愛" が溢れていた。
日本に帰国した灯牾とうごは、まず自身が働いていたスーパーマーケットを訪れた。かつての同僚たちは、灯牾とうごの帰還を心から歓迎した。
「お帰りなさい、灯牾さん。あなたは、私たちの誇りです」
店長の言葉に、灯牾とうごの目が潤んだ。かつてのように、青果コーナーに立つ灯牾とうご。しかし、その姿は以前とは違っていた。宇宙で鍛えられた知恵と技術を携えた、新たな灯牾とうごの姿だった。
灯牾とうごは、スーパーマーケットを拠点に、宇宙野菜の普及活動を開始した。火星で培った栽培技術を応用し、日本の気候風土に合った宇宙野菜を次々と開発していった。
「この野菜は、厳しい宇宙環境でも育ちます。地球の気候変動にも強いんです」
灯牾とうごの説明に、農家の人々は驚きと感心の眼差しを向けた。宇宙野菜は、徐々に日本中に広がっていった。
そんなある日、灯牾とうごの元に、一通の手紙が届いた。それは、かつて火星で出会った宇宙飛行士からの便りだった。
「灯牾さん、地球でも頑張っているみたいですね。実は、私も日本に帰国したんです。ぜひ、また野菜の話でもしましょう」
その手紙を読んだ灯牾とうごは、心から嬉しくなった。火星で結ばれた絆が、地球でも続いているのだと実感したのだ。
再会した二人は、夜遅くまで野菜の話に花を咲かせた。火星での苦労話、地球での普及活動の話。そして、二人が共有する "宇宙と野菜への愛" について語り合った。
「私たちの挑戦は、まだまだ始まったばかりだ。宇宙と地球を、野菜でつなげていこう」
そう語り合った二人の目には、共通の夢が輝いていた。
手取り28万円の八百屋から始まった物語。その主人公は今、宇宙と地球を股にかけ、野菜の可能性を追い求めている。
「野菜は、宇宙だって育つ。夢も、きっと育つはずだ」
そう呟いた灯牾とうごの瞳には、次なる夢が映っていた。