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エピソード6:
火星居住計画が順調に進む中、灯牾とうごに新たな転機が訪れた。地球から一通のメッセージが届いたのだ。それは、国連宇宙機関からの招聘状だった。
「灯牾とうご様、あなたの火星での功績が高く評価されています。ぜひ、地球に戻って、あなたの経験を世界中の人々に伝えてください」
メッセージを読んだ灯牾とうごは、しばし言葉を失った。自分の活動が、地球でこれほどまでに評価されているとは思ってもみなかったからだ。
家族や仲間と相談した末、灯牾とうごは地球に帰還することを決意した。火星での仕事は後進に託し、灯牾とうごは再び宇宙船に乗り込んだ。
地球に到着すると、世界中から報道陣が集まっていた。カメラのフラッシュを浴びながら、灯牾とうごは晴れやかな表情で語り始めた。
「私は、ただの八百屋でした。でも、諦めずに夢を追い続けたら、火星で野菜を育てることができました。夢は、決して遠くないんです。一歩一歩、前に進めば、いつか必ず叶います」
灯牾とうごの言葉は、多くの人々の心を打った。障害を乗り越え、宇宙で夢を実現した男。その生き様が、世界中の人々に希望を与えたのだ。
その後、灯牾とうごは世界中を講演して回った。自身の経験を語り、夢を追うことの大切さを訴え続けた。
「諦めなければ、夢は必ず叶う。私が、その証拠です」
聴衆は、灯牾とうごの言葉に心を打たれ、スタンディングオベーションを送った。
講演活動の傍ら、灯牾とうごは新たなプロジェクトにも着手した。それは、世界中の障害者が宇宙を目指すことができる「宇宙は皆のもの」計画だ。
「障害があろうとなかろうと、宇宙は皆のものです。私のように、宇宙で夢を叶えた人間が、もっと増えてほしい」
そう語る灯牾とうごの眼は、かつての八百屋時代の眼差しと重なった。いついかなる時も、人々の幸せを願う眼差し。それが、灯牾とうごの本質だったのだ。
灯牾とうごの物語は、まだ終わらない。手取り28万円の八百屋から始まった夢は、今や世界中の人々の夢と繋がっている。そして、その夢は、宇宙へと無限に広がっていく。