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エピソード4:
宇宙開発企業で働く灯牾とうごのもとに、ある日、思わぬ知らせが舞い込んだ。なんと、火星探査計画のメンバーに選ばれたというのだ。
「冗談で言ったことが、現実になるなんて...」
半信半疑の灯牾とうごだったが、それは本当の話だった。宇宙服開発での功績が認められ、火星探査計画の宇宙服担当に抜擢されたのだ。
訓練は過酷だった。障害を抱える灯牾とうごにとって、体力的にも精神的にも大きな挑戦だった。しかし、八百屋時代に培った忍耐力と、宇宙開発で磨いた技術力で、灯牾とうごは乗り越えていった。
出発の日が近づくにつれ、灯牾とうごの心は高鳴った。いよいよ、自分が宇宙に行けるのだと。
「お父さん、火星土産、楽しみにしているからね!」
出発前日、娘からの応援メッセージが届いた。灯牾とうごの目頭が熱くなった。家族の支えがあったからこそ、ここまで来られたのだ。
いざ、打ち上げ当日。ロケットに揺られながら、灯牾とうごは窓の外を見つめた。地球が、だんだん小さくなっていく。
「昔は、野菜の箱を担いでいたのに、今は、宇宙船に乗っている。人生って、わからないものだなあ」
そんなことを思いながら、灯牾とうごは目を閉じた。長い旅の始まりだ。
数ヶ月後、灯牾とうごは火星に降り立った。赤茶けた大地に、感動で言葉を失った。そして、そこで灯牾とうごは、ある決断をした。
「私、火星で野菜を育ててみたいです」
科学者たちを前に、灯牾とうごは提案した。八百屋の経験を活かし、火星での食料自給を目指したいと。
提案は受け入れられ、灯牾とうごは火星での野菜栽培に取り組み始めた。試行錯誤の連続だったが、ついに、火星で初めての野菜の収穫に成功した。
「八百屋の経験が、火星で役に立つなんて...」
そう呟きながら、灯牾とうごは収穫した野菜を眺めた。地球から遠く離れた この地で、自分の人生のすべてが繋がった気がした。
「夢は、諦めなければ叶うんだ」
火星の空を見上げながら、灯牾とうごはそう呟いた。手取り28万円の八百屋から始まった物語は、今、宇宙へと続いている。