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エピソード3:


宇宙開発企業で働き始めて数年が経った。灯牾とうごは、宇宙服開発チームのリーダーに抜擢された。障害を抱えながらも、その仕事ぶりが認められての抜擢だった。


ある日、とある宇宙飛行士候補生が灯牾とうごのもとを訪れた。「宇宙服について相談したい」と。その候補生は、灯牾とうごと同じく、脳出血の後遺症で片麻痺があった。


「disability(障害)ではなく、this ability(この能力)を活かすんだ」


灯牾とうごはそう語りかけた。自分自身の経験から、障害は個性であり、強みにもなり得ると伝えたかったのだ。


その候補生は、灯牾とうごの言葉に勇気づけられ、宇宙飛行士への道を諦めずに進んでいった。そして、ついにその日が来た。その候補生が、宇宙飛行士として選ばれたのだ。


打ち上げ当日、灯牾とうごは管制室で、自分が開発した宇宙服に身を包んだ宇宙飛行士の姿を見つめていた。ロケットが打ち上げられる瞬間、灯牾とうごの脳裏に、八百屋時代のことが走馬灯のように駆け巡った。


キャベツの箱を運ぶ自分、野菜の品出しをする自分、お客さんと談笑する自分。そして、倒れた自分、リハビリに励む自分、宇宙服を作る自分。


「人生って、面白いなあ」


灯牾とうごは、そんなことを思った。八百屋から宇宙開発へ。予期せぬ出来事が、人生を思わぬ方向へ導く。でも、それもまた人生の醍醐味なのかもしれない。


宇宙飛行士が無事に任務を終えて帰還した日、灯牾とうごは、その飛行士から一枚の写真を受け取った。宇宙から見た地球の写真だ。


「僕が宇宙に行けたのは、灯牾さんのおかげです。この写真は、灯牾さんに捧げます」


その言葉に、灯牾とうごの目が潤んだ。八百屋の仕事も、宇宙服作りも、全ては誰かの幸せにつながっているのだと、改めて実感した瞬間だった。


「宇宙に行けなくても、宇宙に貢献できた。これが、私の宇宙への旅だったんだ」


そう呟いて、灯牾とうごは満足そうに微笑んだ。人生の後半戦を、思いもよらない形で駆け抜けた灯牾とうご。でも、それが灯牾とうごの人生だ。


「次は、火星かな?」


冗談めかして呟いた灯牾とうごの顔は、生き生きと輝いていた。

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