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エピソード2:
そんなある日、灯牾とうごは突然倒れてしまった。病院に運ばれ、医師から「脳出血」と告げられた。幸い一命は取り留めたものの、後遺症が残ってしまった。片麻痺と言語障害だ。リハビリに励んだが、八百屋の仕事は難しくなってしまった。
障害者手帳を受け取った灯牾とうごは、自分の人生を見つめ直した。八百屋の仕事一筋だった人生だが、もはやその道は閉ざされてしまった。何かに打ち込みたい、社会の役に立ちたいという思いは消えていなかった。
ふとしたきっかけで、宇宙に興味を持った灯牾とうご。「宇宙飛行士になりたい」という子供の頃の夢を思い出した。歳を考えれば非現実的だが、宇宙関連の仕事に就くことは不可能ではない。
灯牾とうごは、宇宙開発企業への就職を目指して勉強を始めた。障害者雇用枠でも構わない。宇宙に近づきたいという一心だった。
家族は快く灯牾とうごの挑戦を応援してくれた。リハビリと勉強の日々。それでも灯牾とうごは希望に満ちていた。「障害があっても、宇宙には行ける」そう信じていた。
数年後、灯牾とうごは宇宙開発企業に採用された。障害者枠ではなく、一般枠だった。面接では八百屋時代に培った経験が評価されたのだ。宇宙服の開発チームに配属され、服の素材選びを任された。
灯牾とうごの人生は、思わぬ方向に転がっていった。でも、それは決して不幸なことではなかった。
八百屋時代の経験が、宇宙服開発という新しいフィールドで花開いたのだ。
灯牾とうごは、障害を乗り越え、夢に向かって歩み続ける。「いつか宇宙に行く」その日を夢見ながら。
手取り28万円だった人生は、一変した。でも、灯牾とうごの心は変わらない。
「人生に障害なんてない。ただ、新しいチャレンジがあるだけだ」
灯牾とうごはそう言って笑った。宇宙への夢は、まだ始まったばかりなのだから。