時計の針は私の脈の速さを教えてくれた
他愛のない短いお話です。
R15は、ほぼ形だけ(笑)
商談はあっけなく、ほんの10分くらいで終わってしまった。
有体に言ってしまえば知坂君とクライアントの信頼関係はすっかり出来上がっていて……パステルトーンブルーのイタリア製生地のスーツにほのかにオフホワイトのブラウス、腕には1969 PETITE ROSEのウオッチという勝負服に加え、勝負下着まで身に付けた私は、本当のところ……いたたまれない程、恥ずかしかった。
でも平々凡々とした私が知坂君に対して『できる先輩』である為には精一杯取り繕わなくてはならない。
落ち着き払った笑みをたたえ、“後輩たる”彼を「お疲れ様!」とランチに誘った。
今日は土曜日、本来は休日なのだからと、グラスビールでささやかな祝杯をあげ、二人して旬野菜のセイロ蒸しに舌鼓を打つ。
少し暑くなってきたからとジャケットを脱ぎ、フレンチスリーブのブラウスを露わにしたのは勿論私の“計算”だ。
私のちょっとした所作の加減で魅せブラが彼の目に入るはず。
彼にとっては同期の女たちとは違った立ち位置の私だ。
律儀すぎるきらいのある彼ににじり寄るには“ハンター”の心が要る!!
そんなわけで…今、私の頭にはトーケンズの“ライオンが寝ている”が流れている。
やがて“オトコの子の視線”が腋の下からチラチラ絡み潜り込んで……嫌でない『ゾクッ!』が背中から髪の毛の先へと駆け抜けていく。
どうしよう!
本格的に危ない!!
こんな余裕な顔して
仕事の話でカモフラージュしているけど
カレに
「この後、予定あるの?」
なんて聞いている。
ねえ!キミは男の子でしょ?!
私の事
齧ってみたくないの??
「映画でも観ましょうか?」
なんて、すまして言っているけど、
どうせ観るんなら二人して寝っ転がって観ようよ。
何度よそ見をしてもいい様に……話を良く覚えている名作旧作にしよう!!
「あっ! この店、美味しい冷酒あるのよ!」
緩やかに彼を絡め取る為の施策の第二弾!!
可愛く片手を挙げて店の人を呼び止め、一合の徳利に猪口二つをオーダーする。
その腕で時を刻む“PETITE ROSE”は……
カレの事を齧りたくてたまらない私の胸の内のドキドキを
あからさまに指し示していた。




