13.さぁプライドを賭けよう
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「なんでよ。私はいやよ。春を売るような真似だけはできないわ。触らせるのも無理」
たしかにすでに貴族籍は失っている。
それでも、父と母の娘として15の歳まで子爵家令嬢として育てて貰った。自分の中の誇りまで失った訳ではない。
「何を言ってるんだい。ここは娼館ではないよ。お酒を飲みながら楽しく会話をする場所だ。御触りも厳禁。もちろん爵位と金を笠に着てごり押ししてくる奴もいるが拒否して全然構わない。通路で食事や酒を運んでいる黒服がいるだろう? 手を上げればすぐに彼等がきて連れ出してくれる。そういった意味での安全は保証する。僕が助けに行ってもいい。約束だ」
「……勝敗は、どうやって判定するつもり?」
「美人は簡単に稼げるんだろう? 今夜この店で働いて、さくっと稼げれば僕の勝ちだ。全然相手にされなくて不細工だと言われたらオリ―ちゃんの勝ち」
一瞬素直に頷きそうになったけれど、ちゃんと理解しようと頭を巡らせてみて、憮然とした声が出た。
「なによそれ」
私は、私が不細工だということくらい理解しているけれど、だからって不細工だと言われたい訳じゃない。
それを確定してこいといわれるのは、やっぱり不愉快だ。
「オリ―ちゃんが、美人は簡単に大金を稼げるって言ったんだ。サクッと稼げたら僕の勝ちだからオリーちゃんに治療費と滞在費の支払いが生じるけれど、ここで稼いだ金で治療費その他を支払えるし、オリーちゃんの言うとおりに美人じゃないと証明できれば、稼げなくても僕が支払うからお店には迷惑を掛けないで済むっていうことさ」
不快だとはまだ思うものの、おじいさんの言っていること自体は理解できた。
勝敗の基準についても、それなりに納得した。
たしかにそれならこのお店に金銭的な迷惑を掛けないで済む。
そして私も、どちらに転んだとしても金銭的な負債を負わなくて済むということだ。しかし、だ。
「……何故かしら。勝っても負けても、私のプライドが傷つきそうな気がするのよねぇ」
ついジト目でおじいさんを睨みつけてしまう。
そんな私の視線を受けても、おじいさんは怯むことなく笑うばかりだ。
「ん? 僕が負けたらオリーちゃんはここでの稼ぎとドレスを戦利品として持ち帰れるし、僕が勝ったらオリーちゃんは美人だってことになるだけさ。何も傷ついたりしない」
旨く丸め込まれている気がしなくもない。
けれど、どちらにしろこのおじいさんのいう勝負を受ける以外に、ここでの治療費プラスαを支払う方法はなさそうだった。
それに、このお店の責任者がほぼ平民と同じ状態になった私をお店に出すことを了承するかも問題だ。
もし駄目だと言われたら不戦勝にして貰おう。
私はため息と共に、勝負を受けて立つことにした。




