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さかしらマリオネット

作者: 椎田ろこ

不意に手指が軽くなる

小さな四肢は落ちてゆく

こわばりながら不器用に

糸を舞わせて落ちてゆく


かちゃりと跳ねた 傀儡子(かいらいし)


くずおれたパーツ張り直し

つまさきで地面踏みしめる


操躯の糸を切って落ち

自由な立場を得られたか

想いの意図は天に伸び

自然の糸は地に向かう


ぐらつく継ぎ目 しなだれて

うつむく力に 耐えがたく (さか)しまに頭

ただひたすらに 棒立ちで

地にあらがうか 賢しく哀し 若木の体躯


薄布で覆う胸の虚ろ

風が吹くたび笛となり

だらりと下がる手と脚は

触れ打ち合って変拍子


垂下(すいか)に揺れる絶たれ糸

翻りてはすきま風

懐かしいとは思わぬか

吊られしときの暖かさ


身を切る寒さにうち震え

道化の衣かき(いだ)

背を丸めれば地に引かれ

倒れまいとて脚踏み(いだ)


うつむいても倒れず

操られずとも落ちず


地に足付けて よたりよたりと歩みゆく


ああ、さびしいな

――さびしいね

ああ、むなしいな

――むなしいね


軽くなった両の手の指、引くものなく

垂れた紐のほつれた先が揺れている


わびし、さびし、かなしや、うれし

ともの手にぎり

ひとときの温もり

あけて再び、新しき糸を結ぶ


糸、見事に舞って喝采も

いずれさびしや 傀儡師(かいらいし)


(さかしらマリオネット・了)

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