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秋の俳句(スイーッチョン)

作者: まのやちお

『寝苦しや 遠慮しいしい 虫鳴く()


『「お帰り」の 声無き居間や 虫の秋』


『ワクチンの 熱に浮かされ 昼の虫』


『ふと()めて 虫(すだ)()や (われ)一人』




 “虫(すだ)く”は秋の季語。虫が多く集まって鳴くことです。


 残暑の厳しい頃、遠慮がちにジーコ、ジーコと鳴いていた虫達もずいぶん種類が増えて。

 涼しくなった朝夕には降るように鳴き競っています。


 日本人は虫の“声”を左脳で言語として聴いているのだそうですが。『チンチロリン』とか『スイーッチョン』とか面白い表現だなぁ、と思います。



 二回目のワクチンの翌日に発熱しました。38度台は久々です。

 明るい昼間から布団に横になるという罪悪感にたっぷり(ひた)らせていただきました。

 すっかり秋になり、昼間も鳴くようになっていた虫の種類をボーッと数えるうちに、いつの間にか眠っていたようです。


 昼に寝ていたために眠れなくなってしまった深夜。辺りを覆う虫の声がにぎやかなほど、かえって車の音も人の気配も無い静けさが胸に()み入るようで──。


 いや、あの有名な句じゃないですけどね。

 にぎやかな虫時雨(むししぐれ)の夜を静かだと感じるのは、発熱のせいなのでしょうか。

 無理に眠ろうと焦らず“一人ぼっち”を楽しむ時間だと思うことにしました。


 そのまた翌日は微熱と頭痛が少々。私の副反応はそれで済んだようです。

 抗体を造るのに豚肉が良いと言っている人もいたので、明日はトンカツでも食べますかね。


 遠ざかる救急車のサイレンがまた一つ虫の声に飲み込まれるように消えていきました。

 どうぞご無事で。




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