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第七話

 水曜日。七月とだけあって、暑くて死にそうだ。登校するために外に出た俺を、これでもかと太陽の光が襲う。今なら、アスファルトの上で目玉焼きが焼けそうだった。


「あっつ。ふざけんなよ……」


 この思いは届かぬと分かっていながら、天の神様に文句を言う。

 今日はスニーカーを新調した。今までの貧乏かと突っ込まれるようなクソスニーカーは、すでにおさらばした。


 体育の授業では水泳が始まっているし、この新しいスニーカーをすぐに履き潰すということは無いだろう。


 そこで、お馴染みの着信音。LINEだ。自宅で自転車を乗る前に鳴ると、つい見てしまう。


早川詩音>今週の土曜日、またお願いできる?


 ……え゛。

 またですか。毎週セックスとか、同棲しているカップルと同じか、それ以上にしてるんじゃないか?


 そんなにイヤなことでは無いのだが、なぜそんなにも求めてくるのか、疑問だった。いつもなら、早くても二週間に一回のペース。もしくは一か月に一回くらいだったと思う。


 急に早められても怖いだけだが、その日は予定なんて何も無いし、基本的に早川の誘いは断わらないようにしているので俺は、分かった、とだけLINEした。


 それにしても、世の中の高校生男女は、子供を作るわけでも無いのに、性行為をしようとするのだろうか。なんて発展性のない、蓋然性のない行為なのだろう、と自分でも思ったことは、無いことも無い。


 早川は家族がいない、ということを理由にして、俺との身体の関係を持っている。今思えば、避妊具にかかるお金は全て俺が払っているし、俺になんの得があるというのか。


 今更ながらに疑問がどんどん増えていくが、了承してしまった今となっては、考えても仕方ないことだった。


 今度会ったときに、詳しい事情をもっと深く教えてもらうとしよう。


 学校での早川は、基本的には誰とも話さない根暗なキャラを演じている。というか、誰とも関わろうともしないし、クラスメートも関わってくれないから、みんな本当の彼女を知らないのだ。


 早川がそんな感じだから、俺も校内で早川と話したことはほとんどない。話したとしても、仕方なく、みたいは感じで、赤の他人のフリをする。


 彼女がそれを望んでいるから。家族がいなくて、寂しい的なこと言っていたのに、人にバレるのはイヤらしい。俺も嫌だけど。


 俺は面倒だと思いながらも、自転車に跨って学校へ向かうことにした。

 


 教室に到着すると、早速笠原が、ぴょんぴょん跳ねながら、俺に声をかけた。


「あーおの! ねぇねぇ、今週の土曜日、私と武藤と園中で遊びに行くって話になったんだけど、青野も来てくれない? 武藤が誘っていいって言ってたし」


 ……。

 今週の土曜日……、何かあったかな? 予定があるなら断りたいところだけど……。


 あ!


「その日は無理だな。予定がある」


「え〜、どんなこと? 何? 習い事でもしてるの?」


「いや、してないけど」


「じゃあ何? バイト?」


「……そう、バイトバイト」


「そっか、なら仕方ないかな」


 そう言って笠原は、キャピキャピした女子の集団の中に突っ込んでいった。


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