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第六話

 日曜日は何もせずに終わり、すぐに月曜日がやってきた。憂鬱だ。

 特に何かやりたいことがあるわけでもないのに、何故学校に通っているのか、全くわからない。


「青野、次の授業生物だぜ? 移動しないと」


 机に突っ伏していた俺に、声をかけた人がいたみたいだ。男の声だった。


「ん?」


「青野起きろ、お前遅刻するぞ」


 いつもは暗い俺になんか、話しかけてくるヤツなんていない。ただ、一人を除いては。

 だが、今日話しかけてきたヤツは、その一人ではなかった。


「武藤か。ありがと。そんでゴメン」


「ああ、気を付けろよ。オレ鍵係だからよ、最後に鍵閉めなきゃいけねぇんだよ」


 それは悪かった。


「あー、マジでごめん」


 俺はもう一度謝った。


 周りをよく見渡すと、教室に残っているのは、俺と武藤だけだった。


 俺のクラスの担任が生物を担当している。普段の俺の生態を知っている教師の授業を受けるのは、なぜだか言葉では言い表せないが、あまり好きではなかった。


 話しかけてきた武藤は、一年生にしてサッカー部のエースらしく、女子からモテモテだった。彼女の有無は、一切知らないが。

 笠原のことを気にしているとかの話は、聞いたことがある。無論、盗み聞きであるが。


 俺は武藤の後に続くように、教室から廊下へ出た。


* * *


 放課後のことだった。

 掃除当番を終え、教室を出たとき、廊下の突き当たりに、人影を感じた。


 武藤、そして武藤の友人である園中の二人に、肩を組まれて怯えている男子生徒を見つけてしまったのだ。その三人は、ゆっくりと歩いて、体育館の方向へと向かっていく。


 興味本位でついて行ってみると、やはりというべきか。慌てた様子で財布から金を出して、武藤に渡す男子生徒の姿が見えた。廊下の壁の影に隠れる俺は、気づいたら呟いていた。


「あぁ、そっか。そうだな……」


 自分でも何に納得したのかは分からない。分からないけど、俺は不思議と目の前に広がる光景に対して、何の感想を抱くことはなかった。

 人間なんて、そんなものだから。人に対して態度を変えるのは、もう当たり前と言えると思う。俺だって、学校と家、そして早川といるときは、少しずつ性格に差異があるだろう。

 

 どの人格も、人から金を取れるほど偉そうにできる俺はいないが、武藤ほどの人気を誇るクラスの中心人物的存在には、そんか一面があっていいんじゃないだろうか。


 だってこういうのは。


 ———いじめられる方が悪いんだから。

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