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第1話~主夫がまさかの異世界召喚!?~

「はぁ~…今日もまた家事に育児にの一日が始まるな~…ほんっと主夫も主婦も報われない職業だよな~…自由過ぎる子どもの相手をしながら隙間を縫って家事をして、おまけに家族にはやって当たり前な顔をされるという…本当にしんどいぜ…」


 報われない日々に思わず愚痴をこぼす俺こと斎藤俊介(28)は、日々の鬱憤をSNSにぶちまけている。よく見かける子ども可愛い!育児最高!!なパパアカウントとは違い、数年サラリーマンをした後に実際に主夫になって知ったリアルな主夫業を今日もTwitterにツイートする。


「さて今日はどんなことを呟くかな…」


 始めてからそれなりに経ってRTやいいねをされるようになった俺は、日々積極的にTwitterにツイートしている。そんなある日見知らぬアカウントからDMが来た。


「何だ?このアカウント…アイコンはたまごだし、プロフィールは未設定。そしてDMの内容は…」


『あなたの主夫業で培ったスキルを異世界で役立てませんか?』


 「…いや、怪しさ爆発だろ。誰がこんなん返すかよ。削除だ削除。」


 俺はイラっとしたら即ブロック!うざいDMは即削除!が信条なので速攻で削除した。そして何だかツイートする気になれず、また家事育児の忙しさに翻弄され気が付けばその日はツイートしないまま終わった。そして翌日再度Twitterを開く。


「さーて昨日はへんなDMのせいで何もツイートしないまま一日が終わってしまったから、今日はちょっと多めにツイートしようかな。」


 そんなことを思いながらTwitterを開くとまたも例のアカウントからDMが来ていた。


「しつこいな…しかも何か昨日と文が変わっているし…」


『あなたの主夫業で培ったスキルで異世界を救ってみませんか?』


「…主夫業で培ったスキルって何だよ。毎日毎日子どもを見ながら家事しているだけだぞ。まぁそれだけで十分凄いと自負しているが…」


 関わると面倒そう。でも何故だか今日はそのDMを削除する気にならない。むしろ来る日も来る日も主夫業に追われる日々の俺には、その何かを「救う」という言葉は凄く魅力的に映った。


「はぁ~…まぁ何かの企画だろう。反応したからといってお金を請求されることもないだろうし、ちょっと返してみるか。俺こんな怪しいDMに心惹かれるほど日々にストレスを感じていたんだな…」


 そんなことを思いながらDMをスクロールすると、


『異世界召喚に応じる』

『はい』

『いいえ』


 とある。ははは、まんま異世界物じゃねーか。まぁこれでドッキリだったら、それをツイートして笑い話にでもしよう。ということで俺は「はい」を選択した。すると画面がぱーっと激しく光った。


「え…マジ?」


 異世界物でおなじみの「はい」を選んだらやたら神々しい光が俺を包む。異世界転生・転移ものを片っ端から読み漁っていたからか、何故かその状況をすんなり受け入れる俺。


「いやー、異世界って本当にあるんだな…」


 そんなことを考えていたら…


『あなたの選択は受理されました。転移を開始します。』


 そんな声らしきものが頭に響いた。


「あぁ妻と子ども達どうするかな…異世界といえばモンスターとかがいて物騒だから妻や子ども達は連れていきたくない。でも二度と会えないのも嫌だし…そうだ!これ多分神様的な存在にまず会うだろうから相談してみよう。うんそうしよう!」


 そんなことを頭の片隅で考えながら、今まで読むだけだった異世界転移を実際にしている状況に俺は大興奮だった。



光が収まるとそこはとにかく広くて、テーブルとイスが置いてある以外何もない空間だった。


「…とりあえず座っていれば神様?が来るのかな?」


 ということで、とりあえず座ることにした。


「…誰も来ないな。」


 待てども待てども誰も来ない。


「もしやこれ夢…白昼夢というやつか?うわ恥ずかしいな~…こんなん黒歴史やん。とりあえずテーブルが汚れているから拭いとこ。染みついた主夫スキルが恨めしい!!笑」


『残念ながら夢じゃないよ。』


 テーブルを拭き終わったと同時に背後から声がした。振り返るとそこには神という言葉がとても似あう神々しいナイスバディなお姉さんが立っていた。


「…夢じゃないってことは、マジもんの異世界転移ですか?」


『そうよ。貴方達の世界で流行っている異世界転移よ。今回は現地の人間ではもうどうにもならない状況になった世界を別世界の人間にどうにかしてもらおうと思って。それで厳選な審査を通過した数名の中から最終的に貴方が選ばれたってわけ。』


「…何故俺なんですか?こう言っちゃなんですけど、俺特別優秀ってわけでもないですよ?」


『貴方が選ばれた理由はズバリ真面目な主夫だからよ』


「主夫だから…ですか?」


『そう。貴方ぶーぶー文句を言いながらも毎日きっちり家事育児をこなしているわよね?そして日々主夫スキルが向上しているでしょう?そんな貴方だからこそ異世界でも着実に問題を解決してくれそうって思ったわけよ。』


「いや主夫スキルがモンスターが徘徊するような世界でどう役立てろと?」


『そこはほら、貴方の世界で定番の「チートスキル」で何とかするのよ。』


「おー!チートスキル!俺ももらえるんですか!?」


『ええ。ただスキル授与も万能ではなくてね。与えるというか、今あなたが持つスキルを最大値まで引き上げるという方が正しいわね。』


「いやだから俺に特別なスキルなんてないですって…」


『あら、あるじゃないの。主夫スキルという立派なスキルが。私も子どもがいるからわかるけど、子どもがいるとそれだけで全ての難易度が跳ね上がるわよね?子どもの相手をしつつ、いかに効率よく家事をこなすか。そして同時に複数のタスクを処理する。これは立派なスキルよ。』


「そうですかねぇ…」


『もちろんよ。まず同時タスク処理は、効率よく味方を動かすのに長けている。これを最大限引き上げ指揮力・統率力MAXに。次に子どものわがままを適切に捌くのは、刻々と変化する戦場の情報全てを適切に把握・分析し瞬時に適切な対応ができる。これを最大限引き上げると情報処理MAXに。あと家族とよく会話していたようだから話術スキルもMAXにできるわね。』


「…何でもありっすね。」


『そんなことないわよ~。さぁまだまだ行くわよ。日々の料理で培った料理スキルを最大値まで引き上げ料理スキルMAXにし、料理には火を使うから火の扱いスキルを引き上げ火属性魔法LVMAXに。また料理で包丁も日常的に使っていたから刃物の扱いを引き上げ剣術スキルMAXに。それからトイレ掃除や風呂掃除で水を使うから水の扱いを引き上げ水属性魔法LVMAXに。あと掃除洗濯などのきれいにする系は浄化だから聖属性として最大値まで引き上げて聖属性魔法LVMAXにし、ついでに頑固な汚れを落とすのも日常的だから汚れ=不浄なものとして引き上げ闇属性魔法LVMAXに。それから家事を効率よくこなすために身体の動かし方なども効率化していたようだからそれを引き上げ、付与・強化などの無属性魔法LVMAXに。それから最後に肉体的にも精神的にもキツい主夫業をこなしてきた貴方のHPMPは共に高水準だからそれも増やしておきましょう。まぁこんなところかしらね。』


「…若干無理矢理感が否めないのですが、これだけのチート能力があれば確かに何でもできそうです。」


『まぁね。とはいっても風属性は残念ながら家事育児には関係ないし、賃貸物件に住んでいた貴方は庭作業とかしてこなかったから土属性も与えることができないわね…』


「いやいやいや、これだけあれば十分でしょ。むしろもらい過ぎな気がするくらいです…」


『あら欲がないのね~。そんなんであの異世界「ルカージュ」を救うことができるかしらね』


「ルカージュ?それがこれから行く異世界の名前ですか?」


『そうよ。いい名前でしょ?』


「えーっと…そうです…ね?」


『何よ!変だって言うの!?』


「いや良いんじゃないですかね?ルカージュ!」


『そうでしょ!じゃあ準備も整ったし、早速転移してもらおうかしら』


「あっ!ちょっと待って下さい!」


『あら何かしら?』


「あの俺愛する家族を置いてきているんです。だから役目が終わって元の世界に帰った時に浦島太郎みたいになるのは嫌なんです。その辺なんとかなりませんか?」


『あぁそれなら大丈夫よ。こちらに来ているのはあくまであなたの魂だけだから、役目が終わったら元の世界に戻してあげるけど、その時はこちらに来た時に戻すから心配いらない。』


「あぁそうなんですね。良かった…」


『それに貴方が仮に死んでしまった時も同じように元の時間に戻るだけだから安心して。その場合はまた別の誰かを召喚するわ』


「なんか俺にデメリットが全くないですね」


『そりゃあそうよ。こちらの都合で勝手に呼び出しているんだもの、貴方に迷惑がかかるようなことは極力避けるわ。とはいえ攻撃を受ければ普通に痛いし、精神攻撃を食らえば心が病むこともあるから迷惑をかけないとは言えないけれど』


「まぁそれはそうでしょうね。うん、わかりました。では見事ルカージュを救ってみせます!」


『頼むわね!』


「あっそういえば聞いてなかった。これから行くルカージュはどういう状況なんですか?倒すべき相手とか、味方になりそうな存在とか」


『あらそうね、うっかりしていたわ。えーっと、まずルカージュは魔王と精霊王が戦争している状態で、人間はその戦争に巻き込まれている感じね。そして人間は基本的に精霊側に付いているわね。だからあなたは同じように精霊側に味方することになるかしら。人間達が勇者を召喚する儀式をしていたから、それを私が利用してあなたを呼んだわけだから』


「なるほど…じゃあ俺は精霊側に付いて魔王を倒せば良いわけですね?」


『そうね…まぁ魔王もそんなに悪い子じゃないはずなんだけど』


「ん?子?魔王は子どもなんですか?」


『いえ、子どもじゃないんだけど…』


「?」


『実は魔王は女性なのよ。貴方の世界の異世界物では大体倒すべき敵が魔王で男でというのがスタンダードだと思うけど、ルカージュは逆なのよ。おまけにまだ若いし…』


「へー、そういうこともあるわけですか。でもそれだと何だかやりにくいですね」


『貴方の世界の価値観だとそうよね~…でもこればかりは納得してもらうしかないわね』


「まぁ仕方ないですね。でもなるべく女の子は傷つけたくないから話し合いで決着つけたいですね」


『それが可能ならもちろんそれでも良いわ。私はルカージュを平和にしてくれれば文句はないわよ』


「わかりました。ではなるべくその路線でいきます。で無理そうなら最悪…という感じで」


『お願いするわね。では異世界の主夫勇者「斎藤俊介」よ!そなたに滅びの運命にあるルカージュの命運を託します!授けた力を駆使し、彼の地を救いなさい!』


「はっ!必ずや使命を果たしてみせます!」


『よろしくお願いします。それでは…転送!』


こうして日々何となく主夫をしていた俺は、いきなりよく読む異世界物の漫画のように異世界を救うこととなった。果たしてどんな困難が待ち受けているのか。まぁ神様からもらったチート能力があればどうとでもなるだろう。本来ならあり得ない体験だから可能な限り楽しむことにしよう―




~俊介が転送された後~


『アルビス様、良かったのですか?彼にあのことを説明しなくて。』

『あのこと?ん~…何のこと?レクス。』

『ルカージュに異世界から勇者を召喚するのは初めてですが、他の世界では今まで幾度となく召喚しているじゃないですか。』

『そうね。それがどうかしたの?』

『いやどうかしたの?じゃなくて!召喚した勇者は毎回困難を乗り越えた仲間の異性とだいたい恋仲になり、元の世界に恋人や家族がいようがほとんどの場合こちらの世界に残ることを選択するじゃないですか!』

『あ~…そうね。うん。…ま、まぁ大丈夫なんじゃない?彼はかなり奥さんと子どもを愛しているみたいだし…』

『召喚した勇者は毎回似たようなことを言いますが、あちらの世界と違ってこちらの世界の衣装は露出が多いですし、戦闘を重ね仲間と苦楽を共にし続けるうちに親密になり、こちらに来た勇者は最終的にこちらの異性に夢中になるじゃないですか!』

『で、でも彼はあちらで流行っている異世界物をよく読んでいるようだから、その辺の知識もあ、あるんじゃないの?』

『イラストと実物は別物でしょうが…』

『え~ん、どうしよー!』

『はぁ~…、まぁここは彼を信じるしかないでしょう。それにアルビス様で若干耐性も付いたでしょうし』

『ふふん。下界の女の子にはまだまだ負けないわよ』

『こちらはあくまで彼の家族から彼を借りる立場ですし、今までと違い独身ではなく結婚しているわけですからね。何としても家族の元に返さないといけませんよ!』

『もう!わかったわよ!もしもの場合は私が直接行って、女の子に目が向く気が起こらないようにするわよ!』

『(いやそれ最もダメなパターンじゃ…いやここでこれ以上言ってアルビス様の機嫌を損ねても面倒だから、仕方ない彼をとりあえず信じることにしよう。)』


従者レクスの苦難もまた始まるのだった―

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