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守護の魔王─最弱魔王の転生─  作者: 芯ノ一
はじまりと出会い
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西風の街フリズ

 

 赤い煉瓦の屋根の群と、隙間から覗く白い壁。遠景に見える巨大な風車。街には、ヴェール領の山脈から吹き下ろす風が絶え間なく巡っている。


「西風の街、フリズ……綺麗な街だな」


 メルテロリスがポツリと呟く。

 リアンとメルテロリス、レディ&カム、行商の一行は、災難に見舞われながらもなんとか西風の街フリズに到着した。


「いやはや皆様ご無事で何より。傭兵のお二人に関しましては感謝してもしたりません。後ほどお礼金のお話をさせて頂きましょう」


 馬車を商店の裏の広場に整列させた後、少々やつれたようにも見える副長が顔を出した。ただ副長にも大きな怪我は無いようで、指示出しも大声のままだ。レディ&カムは副長に連れられて商店の裏口へと消えていった。

 リアンはメルテロリスに自走椅子を降ろしてもらい、数時間ぶりにそれに腰掛けた。この自走椅子とはほんの数日の付き合いだが、やはり椅子に座っている方がしっくりくる。


「リアンさん!お疲れした。これリアンさんの分け前!」

「私の?」


手に銭袋を持ったカムがそこそこ中身の入っているだろうそれをリアンに差し出した。


「魔獣から馬車守ってくれたのはリアンさんだからな。副長さんに言って魔獣討伐の分は三等分してもらった」

「なる程。そういう事ですか。わざわざどうもありがとう」

「もっと欲張ってもいいと思うぜ?じゃあオレらは行くな。またどっかで会えたらよろしく!」

「ええ。レディさんにもよろしくお伝え下さい」

「おう!」


 カムは沢山の荷物を抱えながら大きく手を振って広場を出ていった。プロの傭兵と同じ額を貰ってしまうのは少し申し訳ない気もしたが、彼らが納得しているならまあいいかとリアンは有り難い臨時収入を鞄にしまいこんだ。


「あ、あの!」

「はい……私に何か用ですか?」

「いえ、いや、えーと、その、あ、ありがとうございました……!」


 いきなり頭を下げてきたのはあの馬の世話係。


「僕、こんなトラブル初めてで、テンパっちゃって……。そんな中貴方は堂々としてて、とってもカッコよかったっす!僕らを守ってくれて、ありがとうございました!」

「わざわざ伝えに来てくれたのですね。ありがとう。貴方を守れて良かった」

「ふ、副長もあの傭兵さん達に事情を聞いて、お礼を言いたいとのことで!一緒に行きましょう」


 どぎまぎしながら商店の裏口まで案内してくれる世話係の男。リアンはメルテロリスに椅子を押してもらってその後を追う。

 店内でテキパキと指示出しをしていた副長は、世話係に連れられてきたリアンを見て近付いてきた。


「貴方が馬車を守って下さったとお聞きました……!なんでも断魔術の使い手であられるとか。珍しいですなあ、こうして移動しながら商売をしていますが、なかなかいらっしゃいませんよ。運が良かったのでしょうな。貴方が馬車に乗り合わせていた幸運に感謝致します。フリズは私共の拠点でございますから、ご入用ありましたらどうぞお気軽にご利用下さいませ。事前にご相談頂ければサービス致しますよ」

「それは有り難い。さっさくお聞きしますが、奴隷は扱っていますか」

「奴隷ですか。申し訳ありません、私共の商店では奴隷の取り扱いはしておりませんでして。ご期待に添えず申し訳ない」

「そうでしたか」

「この街の奴隷商店は一軒だけでございます。この商い通りの端に店が出ておりますので、案内させましょうか?」

「それはありがたい。ぜひ頼みます」


 副長の申し出で、リアン達は奴隷商店まで案内してもらうことになった。案内を買って出てくれたのは若い獣態系魔族の女性。


「トレト商隊の看板娘、ニーツォンですにゃ!奴隷商店まで案内を任されましたにゃ!この街の事ならなんでも聞いて下さいにゃ!」

「よろしくお願いします。ニーツォンさん」

「それじゃさっそくいっくにゃー!」


 テンション高め声大きめ、薄桃色の猫耳が可愛らしいニーツォン。ニーツォンは二人の横に並んで表通りを進んでいく。賑わった商い通りの人並の中でも、その他と違う耳はよく目立つ。


「お兄さん名前はなんて言うにゃ?」

「リアンと言います」

「リアンさんにゃ!白い肌と髪とっても綺麗ですにゃ!」

「それはありがとうございます。(レイ)も喜びます。ニーツォンさんも可愛らしいお耳をお持ちですね」

「ありがとにゃ!ちょっとだけ大きめなのがニーツォンイヤーのチャームポイントですにゃ!」


 耳をぴょこぴょこ動かして可愛らしく首を傾げるニーツォン。看板娘と言われて納得の愛想の良さだ。


「普段はお店で働いているのですか?」

「そうにゃ!沢山お話しして、沢山買ってもらうにゃ!」

「頼もしいですね」

「リアンさんもこの後お店覗いていくといいですにゃ!お買い物してくれるとニーツォン喜ぶにゃ!」


 セールストークも程々に、ニーツォンは通りの店の説明もしてくれる。古くからある小さな武器屋、その親戚が営む花屋兼防具屋。ヴァンパイア貴族御用達の染め物屋。青果店、加工肉屋、文具店、傭兵ギルドなどなど。多種多様の専門店が軒を連ねるなかで、少し距離を置くようにして看板を掲げるのは『認可奴隷商店フリズ店』。


「ここが奴隷商店ですにゃ!」


 人を商品として扱うだけあって、なかなか大きい建物だった。ぶち抜きの一階フロアには左右の壁と一体化しているレンガの腰掛けに何人かの奴隷が座っている。簡素だが清潔そうな服を身に着けていて、首の枷から伸びる鎖さえ無ければ寝間着の農民とほぼ変わらない様相だ。店の中央に左右隔てるように並べられた棚には、真新しい枷や鞣した革、アクセサリーなどが雑多に並べてある。


「ありがとうございましたニーツォンさん。またお店にも伺います」

「こちらこそにゃ!ぜひお越しくださいにゃ!」


 眩しい笑顔を残してニーツォンはもと来た道を戻っていった。あるはずの尻尾は服に隠されて見えなかった。



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