第一話 ロリコンは美少女に生まれ変わる
暗い。何も見えない。
結局異世界転生は成功したのか?
確か俺はあの時トーラちゃんの名前を連呼してたんだよな…あの状態があと数分でも続いていたなら今頃俺は発狂死していただろう。
エンジェルさん含め他の六人は大丈夫だろうか。確か異世界転生の成功者は一人しかいないとか言っていたよな。いくらロリコンでもあの中の全員が召喚に成功するとはとても思えない。うーむ…
ていうか、今俺はどんな状態なんだ?真っ暗だし、俺死んだのか…?だとするとここは黄泉の世界的な?
そう考えると寒気がした。
い、嫌だ!死にたくない!俺はまだ美少女になってないんだぞ!こんなんじゃ死んでも死にきれねえ!
思わず手足をジタバタさせる。
すると手に何か当たった感触があった。
結構強く叩いたうえにそれが硬かったのでで手がヒリヒリする。
落ち着いてもう一度手で触れてみる。
それは鉄のザラザラとした肌触りだった。他の場所を触っても同じ。
もしかして俺、閉じ込められてる……?
どうりで暗いわけだ。
まるで棺の中に入っているみたいだ。
そう考えて俺は一つ閃いた。
もしかしたらこれ、棺桶なのかも知れない。やっぱり俺死んだのか?
などと思ったがそれだと手が動くのはおかしい。
棺桶だったら開くのではないか?そう思った俺は無理やり手でこじ開けることにした。
ギギギギギギ……
普通に空いた。
さっきまで死んだとか言ってた俺が馬鹿みたいじゃないか!一瞬ホントに異世界転生に失敗したのかと思ったよ!
生きている事を確認し安堵した俺はほっと胸をなで下ろす。
棺桶の隙間から光が差し込む。
ゆっくりと、地に足をつけてから、俺は周囲を確認した。
そこはどこかで見覚えのあるような城だった。無駄に高い天井。長い間眠っていたようなインテリアは埃を被っている。少し壊れた天井から漏れる光で埃が漂うのが見える。
思い出した。ここは俺が高校時代にドハマりしたゲーム、<吸血姫とヴァンパイア>に出てくる城だ。そこにソックリだ。
そうそう、こんな場所で初めてトーラちゃんと出会ったんだよなー。その時俺は女キャラを使っててトーラちゃんに会うために何度も訪れたんだっけ。
<吸血姫とヴァンパイアハンター>のメインキャラクターでもあるトーラは、主人公であるヴァンパイアハンターと敵対することになる。戦いに勝利した主人公はトーラを倒すか、生かすかの二択を迫られることになる。
俺が過去の思い出に浸りながら城を見回しているとふとあることに今更気が付く。
目線が低かった。まるで子供に戻ったかのように。
これは…!!
期待を抑えきれず俺は急いで姿を確認できるものを探しまわった。
ここがもし同じゲームのような世界ならトーラちゃんの寝室があるはずだ。きっとそこに姿見がある。
俺はゲームの知識を頼りに、城内を歩き回った。
…あった!ホントにあった!
俺は寝室に駆け込み高級そうなベットの横にある姿見で自分の体を確認した。
………そこには俺の理想の体であるトーラ・カーミラーの姿があった。
……思わず姿見に移る自分の体に触れる。
流れるような銀髪に蒼い瞳。漆黒のドレスが少女の雪のように白い柔肌をより一層引き立てている。
涙が零れる。
中身は冴えない大学生なのに少女が泣くとすごい映える。
美少女になりたいなりたいと思っていたが、いざ本当になれると感慨を覚えるな。
苦節二十年、長い道のりだった。高校時代に俺は美少女になるぞ!と高らかに宣言したら周囲に馬鹿にされるし、進路相談で真剣に第一志望に<美少女>って書いたら先生に殴られるし……。
エンジェルさんは四十歳とかだったから俺の倍も長いのか…
俺がトーラの姿になっているという事は、エンジェルさんももしかしたら本当の<天使>になっているかもな。
まあ今は見事美少女に転生出来たことを祝いこの体を楽しもうじゃないか!
俺は我慢できずにトーラちゃんの自室にあるベットにダイブした。
はぁぁぁぁ……!これがトーラちゃんの匂い!!
思わず毛布をクンカクンカしていた。これが本来の俺だとヤバイ絵だが今は美少女なんでね。
美少女なら何やっても許されるのだよ!はっはっは!
〇〇〇
気が付いたら美少女に転生してから一日ぐらい経ってた。
不思議と眠くもならないし食欲も湧かなかった。
え? 一日も何してたかって?
それはもう自分の体を触りまくりトーラちゃんの匂いに包まれながら幸せな時間を過ごしましたが?
当たり前だろ?
ただ俺はロリコンではあるが紳士でもある。超えちゃいけないラインはしっかり弁えているとも。
俺が自分の体を堪能していると、部屋の扉がコンコンと叩かれた。
「トーラお嬢様!トーラお嬢様!お目覚めになられたのですか!」
……誰?