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オルビス到着

「・・・ようやくみつけた・・・」

「誰だ?」

「・・・貴方は大切な人を傷つける・・・」

「何を言って・・・」

「・・・いつか、その手でその人を・・・」

「誰なんだ?」

「・・・クス、また会いましょう。時が満ちたらね」


 ザザーン!ザッパーン!

 船は軽快に大海原を進んでいた。護は、デッキに一人立ち、ボーっと波の流れを見ていた。

 ―誰だったんだろう?何処かで出会ったことがあっただろうか?―

 記憶の糸を手繰りある人物を見つけ出そうとする。しかし、記憶の中にその人物の姿はない。ただ、感覚だけが覚えている。自分はあの人に会ったことがある。そんな確信じみたものは感じていた。

 ―・・・一体何を言いたかったんだろう・・・―

 海は何も語ろうとはしない。

「護、こんなところに居たんだ」

「あ、霞」

「どうかしたの?」

「いや、なんでもないんだ」

 ・・・大切な人を傷つける・・・その言葉だけが頭を過ぎっていく。

「?なんかあった?」

「いや、本当になんでもないんだ」

「そう、だったらいいんだけど。護は船に酔ったりとかしないの?」

「え?うん。霞は平気?」

「えぇ。私も平気。ただ、レナスと楓は寝室で唸ってたけど」

「まぁ、この辺りの潮の流れは速いし、結構時化ってるから普段酔わない人でも酔い易いんだろうね」

「そうね」

「でも、良かったよ。船が手に入ってくれて。正直オルビスに行けなかったらどうしようかと悩んでいたんだ」

「まぁ、あくまで借りてるだけで、やることやったら返しに戻らなきゃならないんだけどね」

「それでも、運航をストップさせてる原因をなんとかすれば、戻っても直ぐに船の許可証はでそうだし」

「うん」

「しかし、別に良かったのに」

「何が?」

「剣のこと」

「あ、ううん気にしないで。私たちがただそうしたいって思って勝手にやってることだからさ」

「まぁ、そのおかげでこうして船に乗せてもらってるわけだし、結果は良かったといえるかな」

 テリシャの町で護を見つけた霞たちは、事情を説明し、そのままロージーへと向かった。そして、そこで用意されていたおっさんの船に乗り込みオルビスに向けて航海を開始したというわけだ。

 ただ、護にはちょっと気がかりなことが一つ出来ていた。

 ロージーの港町についた早々、用意された船はどれだろうねと皆が見て回っている間、旅に必要なものを買い出しに行っていたときある女性と出会っていたのだ。その女性は護のことを知っているらしく軽く笑うとなにやら言葉を言い残して去っていってしまった。護はすぐさま後を追ったが姿を見失い見つけることは出来なかった。

 その女性の言った言葉が何故か凄く頭に残り引っかかっていたのである。

「ねぇ?」

「ん?」

「やっぱり何かあったんじゃない?」

「えぇ?そんなこと・・・」

「だって、なんかどこか上の空って感じだよ?」

「そう?気のせいだよ。久しぶりに海の上にいるからそういう風になってるだけじゃない?」

「そっか。剣のことだったら大丈夫だからね?」

「あはは、いいって。剣のことは気にしてないよ。そういう霞こそどうなん?」

「え?」

「いや、一見平静を装っているように見えるけど、どこか暗いよ?ほら、この間も食事のとき急に泣き出したしさ」

「あ、あれは」

「何かあったのなら話聞くよ?霞が人前であんな子供みたいに泣くなんてめったにないじゃない。あの時は、話聞く前に帰るとか言って帰っちゃったから聞くに聞けなかったけどさ。どうした?」

「な、なんでもないわ」

「んー?なんでもないことないだろう?」

「ほ、本当大丈夫だから!」

「ふーん。まぁ、言いたくないなら無理に聞かないさ。他人が踏み入れちゃいけないことなのかもしれないし。でもね。魔界に行くまでにはその心の負担なくすようにしておいてね。でないと一発で喰われるよ?」

「う・・・ん」

「さてと、楓たちの様子でも見に行ってくるかね」

 背伸びをして部屋の入り口の方に向かおうとした護に霞は慌てて声を掛けた。

「え、あ、そっとしておいてあげようよ。私今様子見てきたところだし。ふっくんが付いていてくれてるしさ。変に行って気を使わせるのも今はしんどくない?」

「うーん。そっか」

「そうだよ。それよりさ、もう少しゆっくり話でもしてない?」

 何か隠しているような雰囲気の霞を見て、なんだろうといろいろ勘ぐってどうしようかと考えたが、そのうち本人が話してくれるだろうと割り切りニコリと微笑んだ。

「いいよ」

 二人はデッキの枠に肘をかけ海を見ながら話し始めた。海風が二人の髪を撫でていく。

 オルビスに着いたのは、翌日の朝方だった。普段は活気付いているはずの港には今は人影もなく閑散としている。

「や、や、やっと・・・つき・・・ましたね。おぇ」

 船酔いにもろにやられた楓がふらふらと桟橋を渡り大地に降り立つ。

「うぅ。私もこんなに酔ったの初めてですぅ」

 同じくふらふらと口を押さえつつレナスが楓の後ろに続く。

「大丈夫でしゅか?」

 心配そうにふっくんは二人を見上げている。

「も、もう、乗り物には乗りたくない。地面万歳・・・」

 楓はガクッと膝と手を地面についた。

「二人とも大丈夫?」

「大丈夫か?」

 そんな二人の後から霞と護は緊張感もなく声を掛けた。

「くぅ!涼やかな顔して!この苦しみが分からないなんて羨ましい・・・。護さんなんて海に落ちてサメの餌になればよかったのにぃ!」

「おいおい、ひどいなぁ。霞だって平気じゃん」

「お姉さまは良いんです!お姉さまが苦しまれるくらいなら、私がどれだけだって代わって差し上げます!」

「あ、ありがとう」

「いーえ。・・・うぇ」

「はぁ、まぁいいけどさ。にしてもやっぱり交易がストップしてるせいか静かなもんだなぁ。誰もいやしない」

「そうだね」

「んー。それにしても静か過ぎる気がするけど。いくらなんでも港沿いの店まで閉まってるなんて変じゃない?」

「朝だからじゃない?」

「いや、だって霞。ここ港だよ?普通、交易がなくても地元の漁師とかの船が出てるはずだから少なくとも朝の競り市とかやってても不思議はないのに。どこもかしこも閉まったままじゃん」

「・・・言われてみれば」

「仮に朝の競りが終わったとしても、そういう気配がひとつもないのはやっぱり変だ」

「これも、その陣取ってるとか言う奴の影響かな?」

「かもね。僕の知ってるオルビスとは少なくとも一致しないし。とにかく町の中心地に行って見よう。なにか様子が分かるかもしれないし。情報も掴まないとね」

「うん」

「おし!じゃ、いくよー」

「えー、もう行くんですか?もうちょっと休ませてくださいよ。護さんの鬼!」

「・・・。レナスも休んでいきたい?」

「わ、私は・・・大丈夫・・・です」

「・・・。わかったわかった。もう少しここで休んでから移動することにしよう」

「あー」

「うー」

「乗り物酔いって大変なんでしゅね」

「ふっくんは平気だね」

「はいでしゅ。揺れるの楽しかったでしゅよ」

「そっか。海の男になれるな、ふっくん」

「海の男でしゅか?なんか、かっこいいでしゅね!」

 護にそう言われ、テトラの上に乗るとキランと凛々しく海を眺める。 

 護はそんな姿を見てニコニコとしながらふっくんの隣に行くと泳いでいる魚を見始めた。 



あとがきですよん。

今回はちょっと短めに書きました。オルビス内部の情勢にまで触れるところまで行こうかと思ったんですが、切が悪いのでここでいったん区切ります。

 最近ちょっとストーリーとは別の幕間みたいな物語りも書こうかなと思案中。旅をしている間のちょっとした閑話休題的な話です。

所々に入れていこうと考えていますので、それはそれでメインストーリーとは関係なくお楽しみくだされば幸いです。もしかすると次回はその幕間話かもしれません。未定ですが。

では、またお会いしましょう!

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