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真意

 牢屋の中は、護たち意外誰も入っておらず冷たく薄暗い。明かりは各部屋の廊下側に一つずつ、蝋燭の火がぼんやりと照らしているだけ。その雰囲気だけで体感温度はかなり低く感じられる。そのジメジメっとした嫌な空気を破るかのように場違いな叫び声をあげていた楓は、今は静かに霞の隣で座っている。

ただ、座りつつもブツブツと文句は言っているようだ。ふっくんはそんな楓の手を励ますように舐めている。

 牢屋に入れられて三時間ほど経っただろうか。いや、まだ一時間しか経っていないかもしれない。圧迫された空間が時間の感覚を狂わせる。

長く息苦しい時間。しかし、それでも楓以外皆ひどく落ち着いていた。レナスや護は過去の戦場の経験により、霞は護が傍にいることにより、ふっくんはどうやら生来的にこういう場でも平常でいられた。

ただ、至って普通の生活を過ごし、極々普通の女の子として育ってきた楓はこの状態が辛いらしくだんだんと鬱々としていっている。もともとの性格も災いしているのかもしれないが。

護「あれ~?」

ひっそりと佇む静寂の中、護の間の抜けた声が響く。

霞「どうしたの、護?」

護「いや~、おかしいなぁと思って」

霞「何がおかしいの?」

護「なんで僕たちまだ牢屋にいるんだろう?」

霞「は?」

楓「護さん!それは、私が聞きたいですよ!!何呆けてるんですか!?大体護さんが・・・!!」

 護ののほほーんとした発言にカチンと来た楓は、捲くし立てる様に声を荒らげる。それを、霞は手で制した。

霞「どういうこと?」

護「えーっと、つまり牢屋に入れられてどれだけ時間が経ったかは分からないんだけど、そろそろ何かアクションがあるはずなんだけどなぁってこと」

霞「アクションって?」

レナス「取調べとかのことですよね~。拷問とかぁ」

 レナスはおっとりとした口調のまま、笑顔を絶やさず怖いことを平然と言ってのける。楓はおもわず霞に抱きついた。

護「まぁ、普通はそうなんだけど。今回は・・・。あれ~?読み間違えたかなぁ?それとも、伝わらなかったとか・・・。いやいやあの人はそんなはず」

 護は独り言のように呟きながら首をかしげた。その発言の意図が分からず、他の者たちも同じく首をかしげる。

 そんな中、廊下の突き当たりにある扉がギシギシッと音を立ててゆっくりと開かれた。

護「ん?」

鉄格子から覗き見るようにそちらを見る。その視線の先にはミカエルがいた。ミカエルは挨拶する守衛に手で返事すると、ゆっくりとこちらに向かってくる。

護「あ、来た来た」

楓「ご!ごーもんですかっ!?ごーもんされちゃうんですかぁーー!!」

霞「楓・・・痛いわ」

楓は霞の腕をギューっと掴んで離さない。

ミカエルは、護たちの部屋の前に来ると黙って鍵を開ける。

ミカエル「出なさい」

護「じゃ、遠慮なく」

レナス「ふっくんさん、行きましょうかぁ。ほら~、霞さんたちもぉ」

楓「だ、駄目ですよー!鞭で叩かれて爪むかれて水攻めされて吊るされて・・・キャーーーイヤーーーッ!!」

霞「楓・・・五月蝿いわ」

 泣き叫ぶ楓を尻目に霞も牢屋を出る。

ミカエル「ついてきなさい」

 ミカエルに促され、護達はその後を歩いていく。一人残された楓は慌てて牢屋を出ると、霞の後ろにぴったりとくっつきながら涙目でついていった。


 牢獄を出てミカエルが進んだ先は、最初に通された部屋だった。最初と同じように中に通され、同じように皆座る。ミカエルも同じように間迎えに座った。

ミカエル「いやー、すまないねぇ。思った以上に手続きに手間取ってしまって」

 開口一番、ミカエルは護たちにすまなさそうに謝った。護は、「いえいえ」とにこりと微笑みながら手を振る。楓は突然の状態の変化に対応できず何がなんだかというような顔でミカエルを見ていた。その視線に気づいたミカエルは改めて説明を始める。

ミカエル「君たちは、不法入国者だからね。一応立場上留置する必要があったのだよ。交通が成り立っているときならまだ穏便にといくところなのだが、例の件によって今は他の国との交通自体禁止されているからね。変にあの者に勘繰られたくもなかったし、悪いけど牢屋に入ってもらっていたわけだ。その間に、極秘裏に入国手続きは取っていたのだが、それが思ったよりも時間が掛かってしまってね。いやはや、申し訳ない」

 ミカエルは、神経質そうにハンカチで額の汗を拭く。

楓「じゃあ、拷問とかは・・・」

ミカエル「拷問?あぁ、しないしない。するわけがない。そもそもわが国は民主主義だからね。拷問という人権を無視した行為は、最初から禁じられているのだよ」

楓「あー、そうなんですか。良かったー。私、どうなるかと・・・」

 楓は心底ホッとしたようにため息をつく。

ミカエル「さて、説明はさておき、例の件についてなのだが」

護「えぇ」

ミカエル「その前に、一つ聞いておきたいのだが、いいかね?」

護「はい」

ミカエル「君は、風神君と言ったね。君、ご兄弟か誰かいるかね?」

護「?・・・いませんが?」

ミカエル「あ、そうか。ならいいんだが。いや、風神とはまた珍しい名前だからね。もしや、以前この国に訪れた青年の親類かと思ったんだよ」

護「あ、それ僕です。覚えてらしたんですか」

ミカエル「ん?僕って・・・。でも背が・・・。縮んだのかね?」

護「仕様です」

ミカエル「そ、そうか。それも魔法の一種かね?いやぁ、魔法と言うのは凄いものだねぇ。私も若返ることが出来れば・・・」

 ミカエルは少し遠い目をしながら頭をさする。

ミカエル「いや、それなら納得だ。通りで隠語会話が成立するわけだ」

護「えぇ。まさか今でも使われているとは思いませんでしたよ」

ミカエル「うむ。あのときのことを参考にしてな。今でも上層部では使っているよ」

霞「護。ミカエルさんとはお知り合いだったの?」

護「ううん。知り合いってわけじゃないよ。ただ依然来たときお世話になった方のお知り合いだったみたい」

ミカエル「うむ。私は直に話すのは初めてだ」

霞「そう・・・ですか」

 護が以前来たときって何があったんだろう、と霞は気になったが今は聞かないことにした。そんなことよりも今は片付けなければならないことがある。そのうち機会があれば護の口から語ってくれるかもしれない。

護「それで、本題ですが。あぁ、えっと・・・」

 護は、尋ねておきながら口篭った。わざわざ隠語を使ってまでの会話、牢屋入り。ミカエル側としては相当気を配っていることだ。それなのに前準備もなくいきなり本題を突くというのは、いかがなものか。

口篭って会話に困っている護を見て、ミカエルは察したようだ。

ミカエル「護君、大丈夫だ。君たちが牢屋に入っていてもらっている間、手続きと共にこの部屋のセキュリティレベルを上げておいたからね。盗聴盗視の類の心配はない」

護「それは何より。では、改めてこの国に何があったのか教えてもらえますか?」

ミカエル「うむ。あれは・・・」 

 そうして、ミカエルは事件のことを話し始めた。

ご無沙汰しております。

物を書くというのがこんなにも大変だったのかと最近になって痛感しますね(汗

今回分かりやすくなるかな?と試験的に各台詞の前にしゃべっているキャラの名称を入れたんですが、いかがなものでしょう?

しばらくこの形式でいこうかと考えています。


今年も資格試験との戦いで、かなりアップに時間が掛かっていますが気長に見てくれると助かります。



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