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連載再開!

 位置づけ的には「風の名のもとに」の第三章的なものです。今までのストーリーを知っていてくださっているものと思って書いていくので、知らない方はよろしかったら「風の名のもとに」の方もご覧ください。

「レナスぅ、ちょっとそこの鍋に塩入れておいてもらっていい?」

「良いですよ〜。どれくらい入れますか?」

「う〜ん?美味しくなると思う程度に」

「は〜い」

「あ、あの、護」

「あ、霞。もうちょっと待っててね。もう少しで昼食出来るから。あっ、レナス。ちょっとこれ味見してみてくれない?」

「はいは〜い」

 のどかに流れる雲、空は何処までも青く、風は穏やかに木々の間を抜け木の葉を揺らす。自分たちの生きているこの世界、この星も自分たちと同じく生きているのだと感じさせてくれる。時には優しく包み込み生命を育み、時には猛威を振るい牙を向け命を喰らう。廻る死と生。人も動物も植物も皆その理からは逃れられないけれど、だからこそ生きている事に生まれてくることに意味がある。

 そんな生そのものたる自然に囲まれた中、護達パーティは、街道沿いに設けられているキャンプ場で少し遅めの昼食を取ろうとしていた。

「私も何か手伝うよ」

「いいって。霞はふっくんと楓といっしょに休んでて。レナスが手伝ってくれてるし本当もう直ぐ出来るから」

「でも・・・」

「護さん、こっちできましたよぉ〜」

「おー、ありがとう。こっちもあとちょっと煮込めば完成するよ。やっぱり料理できる人が増えると効率よくて助かるわ」

「いえいえぇ。これくらいの料理だったら誰だって出来ますよぉ〜」

「いや〜、レナスは料理上手だと思うよ?昔より腕上げたんじゃない?」

「そうですかぁ?」

 のんびりまったり護とレナスは昼食を作りつつ和気藹々と話をしている。霞はその輪の中に入ることが出来ず、憮然とした態度で楓とふっくんの元に戻っていった。

「どうしたんですか、お姉さま?なんか機嫌悪いみたいですけど?」

「別に。なんでもない」

 平然と楓の横に座った霞だったが、なんでもないと言いながらもその言葉には軽い怒気が含まれていた。霞とふっくんはキョトンとしながら顔を見合わせる。こんなにも清々しい自然と陽気に包まれているというのに、霞の周りだけ空気がやたら重く痛い。

「お姉さまどうしちゃったのかね?」

「さぁでしゅ。なんか最近の霞しゃん、怖い感じがしゅるでしゅよ」

 楓とふっくんはこそこそと霞に聞こえないように話をしていた。負のオーラを発しまくっている当の霞は、ただ護とレナスの方をジーッと見つめている。

 リリムのモンスター襲撃事件が片付き、町もようやく安寧を得、すぐさま町の復興が行われた。モンスターを退治した護達は急ぐ旅でもなかったのでその復興に手を貸していた。復興に手を貸したいと言い出したのは護で、霞も以前のラゼルの状態とリリムをダブらせその申し出には断らなかったし、楓はお姉さまが良いのならと反対もせず、ふっくんは頑張るでしゅとむしろやる気満々だった。

 ただ、霞には一つ気になっていた事があった。それは護の手伝いたいと言った理由の一つ、レナスの事である。護は、どうしてもレナスともう少し話がしたいし放っておけないと言ったのだ。昔の仲間に久しぶりに出会ったのだから積もる話もあるのだろうと、そのときはなんとか割り切ってはいたものの、その後は予想外の出来事が起こってしまう。

 復興に目処が立ちモンスターを退治した賞金も貰って旅費問題が解決したので、いざ旅を再開しよう、レナスさんサヨウナラ〜という時にレナスから思わぬ申し出があった。

「護さん。よかったら私も一緒に旅に付いて行っても良いですか?」

「え?いいけど?」

「よかったですぅ」

 この護のあっさりとした返事によりパーティにレナスが加わった。それからというものやたら護はレナスを頼り仲も良く、反対に護はあまり霞と話をしなくなった。

 そして今に至る。

「は〜い、お待たせさん」

「わぁ〜!良い匂い!この匂いだけでご飯食べれそう」

「おいしそうでしゅね」

「今日はレナスが作った故郷に伝わる風土料理がメインだよ」

「レナスさんの料理は美味しいから私好きです。ね!お姉さま?」

「え?・・・えぇ」

「お口に合うとよろしいんですけど〜」

「大丈夫だって。レナスの料理は本当美味しいから。僕が保障するよ」

「ありがとうございます。護さん」

「いっただきま〜す!」

 そうして心地よい快晴の下、賑やかに食事が始まった。一人を除いて。

「う〜ん。おっいしぃー!お姉さま、これ凄く美味しいですよ。食べてみてください」

「・・・」

「護さん、はい、これどうぞ。護さん食べるの遅いから確保しておかないとなくなっちゃいますからねぇ」

「うん。ありがとう、レナス」

「いえいえ〜」

「・・・・・・」

「あらぁ?霞さん。あまりお箸が進んでないみたいですけどぉ。お口に合いませんでしたかぁ?」

「ん?食べないの、霞?」

「・・・食べてるわよ・・・」

 ボソッ

「あ、レナス。これ凄く美味しい。この辛さがなんとも」

「護さん、辛いのがお好きでしたから少しスパイスを多めに使ったんですぅ」

「う〜ん!グッジョブ!!」

「・・・・・・・・・」

 皆食事にはかなり満足したようだが、やはり霞は終始無言で箸もそんなに進んでいない。ずっと何か機嫌が悪い雰囲気をかもし出している。

「ねぇ。霞」

「な、何?」

 突然護に声を掛けられて、一瞬目を輝かせて霞は瞬時に聞き返す。

「そのテリーチ、食べないなら貰って良い?」

 護が言っているのは、先ほど美味しいと言っていたスパイスの効いたレナスの作った料理だ。

「・・・食べたいなら勝手に食べれば!」

「え?え?どうしたの霞?」

 霞の怒気を含んだ声に思わず護は身体をビクつかせる。

「なんでもない!」

 霞は皿を護に突き出し無理やり渡すと、立ち上がって林の方に歩いていってしまった。

「・・・。ねぇ、霞どうかしたの?」

「さぁ。お姉さまなんか今日はご機嫌斜めみたいなんです」

「今日だけじゃなくて、最近ずっと怖いでしゅよ、お兄しゃん」

「そうなの?」 

「はいでしゅ」

「全然気がつかなかったけど、何かあったのかな?」

 以前と違う霞の態度を不思議に思いながら、護はテリーチを頬張っていた。

 食事を終え、しばし食後の休憩をした後、パーティは再び街道を北へと足を運ぶ。食事の途中何処かに行ってしまっていた霞も程なく戻ってきて、何事も無かったかのように旅路を共に歩んではいたが一番後ろで何か俯きながら付いて来ている。

 先頭でレナスと一緒に歩いていた護だったが、先ほどの霞の態度とふっくんの最近変だという発言が気にかかり、時折チラリチラリと霞の方に目をやっていた。

 ―やっぱり、なにかあったか?―

 ずっと俯いている霞を見て、さすがに心配になった護は霞の元に歩み寄ろうとした。そのとき、レナスから声が掛けられる。

「護さん。ずっと小さいままなんですねぇ」

「え?うん。駄目?」

「い〜え〜、可愛らしくて良いと思いますよぉ」

「あ、そう?」

 可愛いと言われ、ついつい照れ笑いをしてしまったときにたまたま霞と目が合った。しかし、霞は直ぐにフンッ!と顔を背けた。

「?」

「ねぇ、護さん」

「ん?何、楓?」

「ロージーまであとどれくらいなんですか?」

「ん〜、そうだね。あと二日、三日くらいじゃないかな?今日中に次の町、テリシャには着けると思うんだ。で、テリシャからロージーまでは半日くらいで着くから、テリシャでの滞在を考えるとそんなものくらいじゃないかなと」

「半日で着くなら、滞在しないで直ぐに向かった方がいいんじゃないですか?」

「そうしたいのは山々なんだけど・・・」

「何かあるんですか?」

「ま、ちょっとね」

「?」

 護が思わせぶりな態度をしたので、楓は凄く気になったが、あえて言わないような事ならむしろ知らない方がその何かに直面した時に驚きがまして良いだろうと思い深く追求しない事にした。もし、何か急迫する問題ごとなら前もって護は言ってくれるだろうと思っていたところもある。

 その後も特に何も問題なく旅は進み、夕暮れ時にはテリシャの町に着く事ができた。 



あけましておめでとうございます。新年を迎えるに当たって「風の名のもとに」の続編を書くことに決めました。

 一年前、もろもろの諸事情によりもう二度と書くことは無いだろうと思っていたのですが、非情に中途半端に連載を中止した事と、ありがたいことにまた書いてくださいという応援メッセージをいただいたことに励まされ、字書きとして初心に戻ろうと思い立って連載を再開いたしました。

 世界観をそのままに、以前とは違った雰囲気で書いていこうかと思いますので、よろしくお願いいたします。

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