表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界奴隷兵団  作者: 久保系
第一章 魔獣の森
6/26

異世界流挨拶

「そういえば、おにーさんの名前は何というのですか?わたしにだけ名乗らせるなんて、ズルいですよ」


「いや、別に伏せるつもりはなかったけど。俺の名前は佐久間だ。よろしく頼むよ、レナ」


「サクマと言うんですね。これからよろしくお願いしますね。サクマ」


 レナは右手を差し出して握手を求めてきた。笑顔は本当に素晴らしい子だなあ。あとほんの少し頭が良ければ、何も言うことは無いのだが。


「初対面でお互い呼び捨てで呼び合うというのは、なんだか照れくさいな」


「あっ、さん付けしましょうか?さすがに馴れ馴れしかったですよね…」


 そう言って、露骨にしょんぼりするレナ。そんな表情をされると、こっちまで悲しくなってしまうじゃないか。


「そんなの、気にしなくていいぜ?俺は、フレンドリーに接してくれた方がうれしいし」


 俺は慰めるように言ったが、別に嘘と言うわけでも無かった。本来の俺は馴れ馴れしい奴が大嫌いだが、不思議とこの少女に関しては、親しくされることが嫌ではなかった。


 そして、差し出された右手に握手を返すと…


「……ギャアアー―!!なに女の子の手をいやらしく握っちゃってるんですか?そういうつもりで右手を差し出したわけじゃありませんよ!?早く離してください!!」


 レナは俺に握られた右手をぶんぶんと上下に振り、俺の手を引き離した。


「おい、何すんだよ。せっかく握手を返したのに。結構傷ついたぜ」


 いくらブラック企業で鍛えられた俺でも、こんなに全力で拒絶されると心にダメージを受ける。


「はぁ?サクマがしたのはただの変態行為です!…本当にわからないんですか?右手を差し出した意味が…」


「まったく分からん。薄々気付いている事を言わせてもらうと、俺は多分、異世界に来ているみたいだしな」


 これではまるでラノベを読みすぎた奴の発言だが、だんだんと現実味を帯びてきた気がする。こんなファンタジーな子が、地球上に存在しているとは考えにくい。まさか一人の少女との出会いで、異世界の可能性が浮上するなんて思っていなかったが。


 ただ、こんな馬鹿げた話を信じてくれるわけないよなぁ。


「えぇええーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


 ところがどっこい、全面的に信じてくれたようだ。


「サクマは異世界から来たのですか!?なるほど。それであんな変態行為に及んだのですね!!ごめんなさい。わたし、そうとは知らずに…」


「気にするな…あと、あれは変態行為ではない。ただの挨拶だ」


 変態扱いされるのは心外なので、一応訂正しておいた。やれやれ、異文化との交流は難しいものだ。


「そうだったんですね。わかりました。それでは、こちらの世界でのあいさつを教えますね!さあ、右手を出してください」


 俺は言われるがまま右手を差し出した。すると、レナはニヤりと邪悪に笑い、差し出した手の平を勢いよく”パン”と叩いてきた。


「痛っ。おい、何すんだよ」


「これがわたしの世界でのあいさつですよ。ふふん」


 レナは舌をべーっと出して挑発してきた。何で挑発方法は俺のいた世界と同じなんだよ。


 …異世界の挨拶とか言いつつ、復讐したいがために嘘をついてるのでは?まあ、別に良いか。叩いた衝撃で、あちらも手にダメージを負ってるみたいだし。レナの方が涙目になるとは、なんて面白い子なんだ。


 こんな感じで、俺はレナと共に森の出口を目指すのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ