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異世界奴隷兵団  作者: 久保系
第一章 魔獣の森
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金髪少女

 しばらく森の中を走って移動し、少女は「この辺で大丈夫でしょう」と足を止めた。ここは、木々の隙間から太陽光が差し込んでいる。なんだが幻想的で見とれてしまいそうだ。


 そして、光が少女のポニーテイルを照らし、黄金色に輝いた。さっきまで薄暗い森の中だったので、こんなにきれいな金髪だとは気がつかなかった。青い瞳と端正な顔立ちも合わさり、まるで森の妖精みたいだ。


「それにしても、おにーさんは何者ですか?魔獣がうじゃうじゃいる森の中で、一人でいるなんて」


「…俺にもわからないんだ。目が覚めたら、この森で眠ってた」


「へぇー…あっ、わかった!おにーさん、ひょっとして貴族ですね!間違いありません!だって、高そうな服を着ているもの。その剣も、すごく歴史を感じますし。きっと家宝とかですよね?あ、でもあんなところで一人でいたってことは…没落貴族ですね!!」


「全然違う」


 俺に没落するほどの地位は無い。高そうな服とは、俺が着ている仕事用スーツのことか?確かにこの服を知らない人から見れば、高い身分に見えるのかもしれない。ただ、いまどきこの服装を知らない人なんているのだろうか。


「というか、君は外国人に見えるけど、随分と日本語が上手だな。ひょっとして日本で育ったのか?」


「はい?ニホンゴってなんですか?なんだかおいしそうな響きですね!どんな味がするのですか?」


「食べ物じゃない。…日本語をしらないのか?君は今、日本語って言葉をしゃべっているだろう?」


 俺は当然の疑問を投げかけたつもりだったが、少女はポカーンと口を開けた後、ブッと噴き出して笑い始めた。


「あはははっ!!おにーさん、面白い人ですねぇ。言葉なんて、1000年前から一つしかないじゃないですか。文字を読めないわたしでも知っていますよ。やれやれ、お母さんから教わらなかったんですか?」


「へ、へぇー。そうなんだ。初めて知ったよ」


 うーん。馬鹿っぽい子に馬鹿にされると、無性に腹が立つな。しかし、言葉が一つしかないとはどういうことだろう?世界には、星の数ほどの言葉が存在していたはずだ。なんだかわけが分からなくなってきたし、この少女にいろいろと聞いてみよう。


「ねぇ君。ここって、どこだっけ?」


「君じゃないです。わたしの名前はレナです」


「…ねぇレナ。ここって、どこだっけ?」


「見ればわかるじゃないですか。森ですよ」


「それはそうだけど…あっ!ここがどこの国かは、分かる?」


「はぁ、おにーさんは何を言ってるのですか。ここは国の外ですよ」


「…ウォッホン。じゃあ、レナはどこの国から来たのか教えてくれない?」


「えっ?そんなことを知ってどうするのですか?なんだか怪しい人ですねぇ。こんなところに一人でいることもおかしいですし…。おにーさんの疑いが晴れるまでは、教えてあげません!」


 …あれ?この子からまともに情報を聞き出せる自信がない。少女との会話って、こんなに難しいものなのか?いいや、きっとレナって子が特別難しいのだろう。人と出会えたのは幸運だったが、それがこの少女だったことは残念と言うほかない。贅沢はいってられないのだが。


「そんなことより、おにーさんは行くあてがあるのですか?ないなら、わたしがお仕事を紹介してあげますけど」


 レナは唐突にそんなことを言ってきた。この子は中学生くらいに見えるけど、実はリクルーターか何かなのか?


「…ふーん。仕事ねぇ」


 俺はこんな訳の分からないところまできて、まだ仕事をしなければならないのか。まぁ、社畜の運命なんてこんなものかもしれない。そして、自力でこの森を出られない以上、俺に選択肢はない。


「わかった。俺に仕事を紹介してくれ」


 今はとにかく森を脱出し、レナ以外の人間から情報を聞き出すことが必要だ。

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