謎の光
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ある日の日曜日。夕方。
~タランランララン、タランランララン~
国民的アニメ”サ●エさん”のエンディングが、四畳半のワンルームに空しく響いている。即ち、もうすぐ月曜日か訪れるということだ。このアニメは一体、どれほどの社畜を自殺に追い込んだのだろうか。…いや、このアニメに罪はない。本当の悪は、月曜日を憂鬱にさせるブラック企業の方だ。
”残業地獄”、”安月給”、”人間関係最悪”のトリプルパンチを食らっている俺は、それでも会社を辞めることができない。なぜなら、3流大学へと支払った奨学金を返済しなければならないからだ。転職すれば済む話かもしれないが、こんなクソ企業からの転職したところで、優良企業は雇ってくれないだろう。やれやれ、俺みたいに粘る奴がいるから、ブラック企業は無くならないんだろうなー。
「はぁ…飯でも食うか」
気持ちを切り替えるために、うまい夕飯でも食べるとしよう。冷蔵庫に何か食料はあっただろうか。
「1日期限が切れた卵と…納豆1パックと…これだけかよ!」
おいおい、こんなんじゃあ、今日を生きていくことすら危ういぜ。しょうがない、近くのスーパーで惣菜でも買うとするか。
俺は適当に身支度をして玄関を出る。そして、念入りに鍵がかかっている事を確認する。まあ、盗まれる物なんて何もないのだが。
外へ出ると、太陽が今にも沈みかかっていた。光は肉眼で見られる程度に弱くなり、空をオレンジ色に染めている。
「今日は一段と綺麗な夕焼けだなぁ」
おっと、最近は独り言が多くて困る。何かの病気かもしれないし、病院へ行くべきかもしれない。診断書を貰えれば、明日は会社休めるのかな?
―――――ブゥウウウウウン――――――
ぼ~っとしていると、突然大きなエンジン音が聞こえてきた。その瞬間、世界がスローモーションになる。俺は歩道を歩いているはずなのに、なんであの車は俺へ向かってきているんだ?ああ、よく見ると車に高齢者マークが付いている。どうせ、アクセルとブレーキを踏み間違えたとか、そんなところだろう。最近では珍しくもない話だ。まさか、俺がその被害者になるとは想像もしていなかったけど。
ここで何もかもが終わるのか…。残念なはずなのに、日々の苦しみから解放されるのかと思うと、少しだけ幸せな気分になった。
そうだ。もしここで死ぬのなら、一つだけ神様に願いたいことがある。
(どうか、人間には生まれ変わりませんように…)
嗚呼。こうなることが分かっていれば、貯金なんてせずに遊びまくっていたのに。ほんと、つまんねぇ人生だったなー。
俺は接近する死を受け入れた。身体が宙へ浮いた気がしたが、痛みは感じなかった。そのとき、不思議なことに、辺りが白い光に包まれる。光の正体は分からないまま、徐々に意識が遠のいていく。
『――――さい』
誰かの声が聞こえる。
『ご―――さい』
とても優しそうで、哀しみを帯びた女性の声が聞こえる。何を言っているのかはわからないが、悲痛さだけは伝わってくる。ただ、別に何を言っていようがどうでもよかった。
今はとにかく眠りたい。社畜は慢性的な寝不足なんだから。
読んでくださりありがとうございます!
そのうち面白くなる予定です!