掌の上で踊っているように見えた相手は偽物だった?
連日投稿(明日は無理かも)
「ここに来るのも久しぶりだな…」
今俺は、自分の世界で1人の少女を待っていた。
先程招待状を送った、見覚えのある「目」をしていた少女。
「いやでもあんだけカッコつけて来なかったらもうホントに笑えないよな…いや恥ずかし!末代までの恥だわホント!」
そんな事を1人でブツブツ言いながら待っていると
門が出現した。
この門は初ログイン者が来る時にだけ出てくる物だ。と、言うことは…
そしてしばらくの間待つと、少女が門から現れた。
少女はこちらを見ると話しかけて来た。
「あなたが…キ、キチゲーマー?」
「んーまあ合ってる。その呼び方されるの久々だなぁ…」
「あなたは私をどうやって楽しませてくれるの?」
「違う違う。俺はお前を楽しませたりなんかしないよ」
「じゃあなんの為に私を」
呼んだのか。その疑問を発する前に俺は被せるように答えた。
「お前が勝手に楽しむんだよ。ゲームってのはそういうもんだろ。お前は何が1番得意なんだ?FPSか?」
そう言うと、彼女は眠たげな瞳を少しだけ見開いたように見えた。実際どうかはわからない。だが俺にはそう見えた。
「それで合ってる」
「オッケー。じゃ、やろうか。ルールは簡単。リスありのデスマッチルールだ。武器は好きな物を使用していい。ガジェットも同様だ。弾とガジェットの数は無制限。マップはランダム生成。要するに好きな様に好きなだけやれるルールだ。何か要望は?」
「特にない」
「よろしい」
そう言うと、視界が切り替わり、マップが生成される。不正はないとの証明になるかはわからないが、生成されている風景を見れるようになっている。
「本当になんでもアリなんだ…」
表示されている使用可能な武器、ガジェットの一覧を見ながらKoronはそう呟いた。
メイン武器はデスする事に切り替え可能な仕様で、1種類と軽量武器しか持てない。
ガジェットは3種類まで持てて、種類は非常に豊富だ。中には誰が使うんだこんなのというような物まである。
「3種類まで持てるなら…」
koronが武器をアサルトライフルとハンドガン、ガジェットをフラッシュグレネード、フラググレネード、ワイヤートラップに決めると、すぐにReadyの文字が表示された。どうやら相手は先に決めていたようだ。
期待を持って、彼女は戦場に降り立った。
試合が始まったが、フィールド内は異様な程静かだった。マップサイズは中。小隊同士で試合をする程度の広さのマップに2人しかいないのだから当然と言えば当然だ。
1対1のタイマンの時は基本的にお互いの位置を探ることから始まる。無闇矢鱈に音を出して相手に位置を知らせるのは初心者のやる事だ。
Koronはマップに配置されているコンテナの陰を慎重に歩きながら相手の痕跡を探していた。
どうやらこのマップは倉庫街のようなものになっているらしい。そこら中にコンテナが配置され、遮蔽物となっておりなかなか視界が悪い。
こういったマップでは、音に頼ることが非常に重要になってくる。相手の足音、息遣い、それらの僅かな音が位置を報せてくれる。
突然爆発音が聴こえた。走ればすぐだが歩きながらではかなり時間がかかる程度の距離だった。
更には遠くから
『どこだ~出てこーい』
などという気の抜けた声が聞こえてくる。
挑発?それとも自信の表れ?
まあどちらにせよ…
「随分と舐められてる…」
挑発による誘いなのか真っ向勝負からでも勝てるという自信なのかはわからないがそこまで呼ぶなら行ってやろうじゃないか。
音を殺しつつ爆発音の方向に近づいていくとキチゲーマーの姿が見えた。棒立ちで喋っている…ように見える。
が、あれは恐らくガジェットにあったホログラム生成装置で作られた偽物だろう。
声が聞こえるのはトランシーバーだろう。少し声にノイズが混じっている。
だがトランシーバーの有効距離はそこまで長くはない。必ず近くにいるはずだ。
近くのコンテナの陰を慎重に覗く。相手も必ずホログラムの近くを見れるようにしているだろうからこちらから見えるはず。
…それらしき物が見えた。キチゲーマーが着ていた服の裾らしき物が若干見えている。本当に僅かだが、見える。
ホログラムで未だに悠々と喋っている。
自分の位置が割れていることに気づいていないのだろうか。期待外れもいいとこだ。
まあ、折角の試合だ。真面目にやろう。
そう思い、フラッシュグレネードをキチゲーマーのいる場所の正面に投げ、それと同時に走り出す。
これにより相手に瞬間的に複数の択を迫れる。
フラッシュグレネードのある方向を向いていられないことを利用してそちらから来るか、それとも意表を突いてあえてフラッシュグレネードのない方向から来るか。
下手に動けば的になるだけだ。その場から大きく動くことはそれこそ自殺行為だ。両方警戒するにしても複数の方向に同時に注意を払うのは難しいしある程度は注意も散漫になる。
この状態に持ち込めば勝ちは殆ど自分の物だ。
ここは意表を突いて背後から攻める!
キチゲーマーのいるコンテナの背後まで回り込み射撃体制に入る。相手は自分に気づいていない。
落胆と共に引き金を引いた
瞬間、Koronの体は背後から散弾に撃ち抜かれ
キチゲーマーがこちら見ずにKoronに向かって2本指で銃を撃つジェスチャーをしていた。
僅かに見えたキチゲーマーの口元は、楽しげに裂けていた。




