あ、リトル
色々考えながらも結局、女の子の後ろをついて行くことにした。
自分で訪ねておきながら断るのはマナーがなっていない気がしたのと、どうやって断ればいいかが分からなかったからだ。
金色に染め上げられた髪が右へ左へ揺れるのを、猫じゃらしを追う猫のごとく目で追った。
言葉は通じずとも、女の子と二人。二十数年生きてきたがこんな幸福感を味わうことは他にない。
それはきっと他の男子も同じだろう。可愛い女の子というのは彼女にしたいとか、バレンタインのチョコが欲しいとまでは言わない。せめて、後ろ姿を眺めていたいのだ。
甘酸っぱいというよりかは、しょっぱかった青春がふつふつと浮かんでどこか寂しいような感じに駆られた時、彼女は何かを思いついたようで急に振り返った。
「Can you speak English?」
キャンって確かできるだったよな。ペーパーテストではこのレベルは流石にできるが会話となると中々難しいものだ。こういう時は決まっている。
「イェス ア……。」
なんだっけ。リから始まるちょっとって意味の単語。
だめだ。思い出せない。
「Oh,really? But I think you should learn English more.」
だめだ。早く話されると全然分からない。
「ソーリー アイ キャント アンダースタンド」
「uhh CanIteach English for you?」
どういう意味だろうか。僕が考え込んでいると彼女は紙に文字を書いて見せてくれた。
“Can I teach English for you ?”
そこで、いつもはほとんど使うことのない脳をひねって直訳してみた。
“私は出来ますか?あなたのために英語を教えることが”
なかなか、唐突な誘いだが可愛い女の子に誘われて断る理由がどこにある?
「イェス センキュー プリーズ。」
「OK」
僕がまじまじとみた彼女の顔は何故か少し困ったような顔だった。