スマイル、スマイル
背伸びをした彼女は、こっちを見てニコッと微笑んだ。格好に合わずかっこいいとかではなく、可愛らしいというような笑みだ。
何だか、僕の身体がビクッとした。
そのまま、彼女は歩いった。
ここにいたってことはそれなりに誤解を招いたような人なのだろうか。職員らしくはなかったし。現に外に出ているということは、問題は起こしてなさそう。ま、ちょっと怖いけど可愛かったな。
とにかく、僕も出口へ向かった。出口はどこか分からないのだが、彼女が向かったのは出口のような気がする。
さて、どうしようか。
空港にあるレストラン街にたどり着いた僕は、目に入ったハンバーガーショップに立ち寄ることにした。
出口も、ホテルの場所も食事をして脳に養分を補給しさえすればわかるような気がしたのだ。
無論、パンフを見たりしても現在地さえ分からなかった。
日本でもお馴染みのハンバーガーを頬張りながら、僕は考えた。
優也に連絡するのが手っ取り早いのだろうが、あいつにも予定はあるだろうし迷惑は極力かけたくない。
となると、とりあえず出口を見つけてタクシーに乗るべきだろうか。それなら、目的地を伝えれば確実に着くだろう。しかし、それなりの距離がある場合値段が跳ね上がる可能性がある上に英語が話せない僕はぼったくられるかもしれない。なんと言っても値段の検討がつかないというのはかなり不安だ。何より、日本で両替した分だけで足りるかどうか。
……ま、何とかなるだろう。
個室送りをされるも、こうして帰還しているのだ。ホテルにはついてないけど。
しかも、ハンバーガーだって注文できた。頼みたかったのとは別のが出てきたのだが、一応頼めた。
やはり。行き当たりばったりでも何とかなるものだろう。
「何してるの?」と店の外から声をかけられた。もちろん、中国語で。
さっきの個室の女の子だった。ただ、中国語が分かるわけない。そんな感じがしただけだ。
僕が、ぽかーんとしてるので次に、英語で話しかけられた。
多分英語だ。分からないけれど。
「このホテルってどこ?」
そう聞きたい。が分からない。
「あー、ホテール。ディス。ウェア?」
僕はそういうとハンバーガーの値段が書いたレシートの裏にホテルの名前を書く。
もちろん、発音できないからだ。
海外で安心仕切るのもどうかと思ったが、こんな身なりをしてても女の子だぜ。いくら個室送りされてたってこんな可愛い子がヤクザと通じてたりするもんか。あ、香港にはヤクザっているのかもわからないや。
とりあえず、タクシーに乗せてそのままよからぬところへ連れてったり、危ないヤクを売りつけられたり何てこと。ないよね?
「Oh.OK come here .」
僕はそれにイェス、イェス言いながらついて行った。
大丈夫だろうか、なんて考えちゃいけない。考えてたら空港で夏休みが終わる。いや、餓死して人生が終わるかもしれない。