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うたた寝

 しばらくは優也と他愛のない会話でもしていたのだろうか。

 良く、覚えていないが寝てしまったらしい。

 起きて横に目をやると優也はイヤホンで音楽を聴いていた。


「おう、おはよ。」

「ごめん、僕、どれくらい寝てた?」

「さあ、飛行機乗ってちょっと話したら寝たからな。2、3時間は寝てるんじゃないか?カフェインもお前には敵わないんだな。」


 笑い事じゃない。

 実はまだ眠いし、胃が痛い。何故なら、カフェインの大量摂取は健康に良くない上に水分が身体から減って余計に眠くなるのだ。逆効果って奴だ。


「目を瞑っていれば寝れるもんだよ。」


 ニコッと営業スマイルに近いような笑みを浮かべた。

 僕は、日頃から笑みを作るように心がけているのだ。


「呑気でいいな。俺なんて一睡も出来てないよ。『いつもの』が効き過ぎたみたい。」

「そうか、それは大変だな。で、何聴いてるんだ。」

「洋楽。英語の勉強に基づき丁度いいんだぜ。」

「いいよな。英語できて。」


 自分で言うのもなんだが、僕は英語はさっぱりだ。そもそも、紙に書く以外に使った事もないのだからイメージもわかない。中一からつまづき続けたおかげで高校・大学と入試には苦労した。大学に提出するレポートも英語にされる所で院に進めるか不安だったものだ。疑問詞とかいうのが色々あった気はするがワットくらいしかパッと出そうにない。

 しかも、残念なことにそれがどれほど、致命的なのかすらも分からないのだ。


 そんな感じで、ここまでやってきて、今から英語しか通じない国に今から行くと思うとゾッとする。

 少なくとも、英語は重要と洗脳され続けた僕の脳はそう感じている。


「レディース エンド ジェントルメン&/@/ー△□、◉♡ーー△△ーーーーーーーー」


 全く聞き取れない。起きたばかりで、頭が冴えていないのも確かだが、英語が出来ないせいだというのも確かだ。


「何だって?」

「もうすぐ着くとよ。」


 飛行機の機内放送も聞聞き取れなくてこれから大丈夫だろうか。

 そんなことを思いつつも、行き当たりばったりでも何とかなるだろうと自分に言い聞かせた。

 そんな感じで今まで生きてこれたのだ。それに比べりゃ、外国なんてちょろいはず。


「ホンジツハ ホンコンコークーヲ ゴリヨウイタダキーーー」


 機内放送の片言の日本語も頭が重くて最後の方が聞こえない。

 すると、急に体が浮き上がるような感覚に襲われ、そのすぐあとにガクンという衝撃が僕に追い討ちをかけた。完全に油断していたため、頭がグラングランする。


「着いたぞ。ここがホンコンだ。」


 元気そうに優也が、僕に声をかけた。


「はぁ、はぁ、そうみたいだな。」


 ぐらんぐらんする頭を支えつつ、日本と大差無い黒い滑走路を視線を移しそう言った。

 いくら見ても国の違いなんて分からない。


「何、着陸ごときでビビってるんだよ。子供じゃあるまいし。」

「ビビってなんきゃない。ビビってなんかないぞ。かんどーに浸っていたんだ。」

「滑走路に感動したのか?まあ、これから、驚くこともまだまだあるだろうし。俺は感動はそん時に取っとくよ。」


 ニヤニヤしながら、優也は言った。

 こいつは、イケメンなのに男に対しては性格が悪いところがあるのかもしれない。

 1日二人でいると、性格のせいでこの前の子にも振られたんじゃないかとさえ思えてくる。


 ふと、降りる準備をする人に目をやり、僕は思った。

 日本語では無い言語を話す人々がいる、と。日本からの帰国などもあるだろうから当然なのだが、僕は改めて英語しか通じないということを不安に思った。


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