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ローズマリーへようこそ  作者: みるくてぃー
希望へのはじまり
42/63

第42話 王家のパーティー 前編

後半最大のイベントの始まりです。

前・中・後の三部になる予定です。

 城門より馬車の長い列ができている。

 会場入り口で一人一人優雅に下車するために時間が少々かかってしまうのだ。


 今日の私のドレスは前回と同じノースリーブのドレスにショールを掛けている。

 エレンたちに『このドレスやっぱり変だよ』と抗議したものの、全員一致で却下された。私の立場って……。

 まぁ、これ以外社交界に着ていくドレスもないし、あの時点では時間的にもオーダーは不可能だった。

 じゃセルドレスでいいじゃないと言えば、私の白銀の髪に似合うドレスがないと、これまた全員一致で却下されたのだ。

 ちょびっと傷ついたんだからね。


 私の乗る馬車がようやくお城の入り口に止まり、ベルボーイにエスコートされながら入り口へと向かう。


『アリス・アンテーゼ伯爵令嬢、ご入場』

 正装の騎士服に身を包んだ男性が、私の名前と爵位を高らかに名乗りあげる。

 ちょっと、あまり大きな声で言わないでよ。


 あれから色々調べたが結局何も分からないままだった。

 ユミナ様やルテアに聞けば何か分かるかもと思ったが、なぜか招待状が届いた以降、お店に来てくれなかったのだ。

 相手は共に公爵家だからね、簡単にこちらから連絡する訳にもいかないし、どうすることも出来ないまま今日を迎えてしまった。


 とりあえず今私がするべき事はただ一つ。招待状が届いてから私が何もしていないと思ったら大間違いよ。


 エレン直伝『隠密スキル発動!』サササっと壁のオブジェとなるべく、隅っこに退避する。

 ふははは! 見たか、この()()()()隠密行動を! 私はあれからエレンに隠密スキルの訓練を受けていたのだ!

 エレンからも「お嬢様の()()()()動きに、私にはもう教える事はありません」と太鼓判を押してもらったのだ。

 隠密行動に()()()()動きが必要だとは知らなかったけど、今の私はそう簡単には見つけられまい。


「アリスちゃん、こんな隅っこでなにしてるの?」

「わぁっ!」

 ななな、何でよ! 何で速攻見つけてるのよルテア! でもまだよ、まだ終わってないんだから!


「ひ、人違いでは?」

 『おほほ』と私は扇で顔を隠し、声色を変えて誤魔化す。

 ふははは、私が鍛えたのが隠密スキルだけだと思ったら大間違いよ。

 エリス直伝、ハリウッドスターもびっくり! 大根役者……ってダメじゃん!


「あっ、カマキリ」

「きゃ!」

「ほらアリスちゃんじゃない」

 ぬ、謀ったな!

 私が嫌いなカマキリを出してくるなんて卑怯なり!


「それで、なんでこんな隅っこに隠れているの?」

「うぅ、目立たないためよ。世間では私の事で色々噂があるんじゃないの?」

 私は諦めてルテアに話しかける。

 エリスに演技指導をしてもらった事って逆効果だったんじゃないかしら。


 先日ティアナ様には大丈夫的な事を言われたが、全員がそうだとは言い切れないもんね。

 私としては噂自体は気にならないが、影でコソコソ言われるのはやっぱり嫌だ。

 無意識のうちに『おっとごめんなさいね』と言いつつ強風でスカートをめくってしまうかもしれない。

 心配しないで、相手は若い女の子限定だから。


「噂ってあれの事?」

「うん、でも何だかそれも怪しいんだよね」

 ユミナ様とジーク様から私の婚約破棄の経緯は聞いたが、世間では叔父たち、特にロベリア辺りが盛大に言いふらしているだろうから、今更『間違いでした』と言っても手遅れだろう。


「ティートも言ってたけど、学園でも社交界でも気にするほど噂にはなってないよ」

「ティアナ様からもそう聞いたんだけど、私としては社交界みたいな目立つ事には関わりたくないのよね」

 ルテアは私より二年ほど前に社交界デビューしているから、今じゃいろんなパーティーに出席してると聞いていた。


 年頃の若い男女は出会いを求めていろんなパーティーに参加する。特に女性にとっては深刻な問題でもある。

 男性なら少々年齢が高くなっても出会いがあるだろう、しかし女性は適齢期が過ぎると一気に出会いが少なくなる。貴族にはどうしても子孫を残すと言う重要な役割があるから仕方がないのではあるが。


 私? 私は結婚する気なんてないわよ。エリスもお嫁に出さないんだからね。


「アリスちゃんお久しぶり」

 私とルテアが話をしているとティアナ様とルテアのお父さん、クラウディア公爵がやってこられた。


「お久しぶりでございます。クラウディア公爵、ティアナ公爵夫人」

 ここは公の場で相手は現公爵様。細心の注意を払い淑女の挨拶をする。


「うふふ、公の場だからってそんなに畏まらなくてもいいのよ。別に知らない間柄じゃないんだし」

「そうだな、気楽にしてもらって構わないよ」

 そんな事をおっしゃってますが、公爵様と親しげに話してるところを見られたら、私の心臓がもたないって。


「お父様そろそろ時間なんですか?」

「あぁ、準備はいいか?」


「はい。じゃアリスちゃんちょっと行ってくるね……また後で」

 そう言ってルテアは公爵様たちと一緒に会場から出て行った。

 恐らくルテアが先日のパーティーで言ってた事、婚約発表のために準備をしにいったのだろう。


 再び一人となった私は、もう一度華麗に隠密スキルを発動させる。

 ルテアには見破られたけど、私の血と汗と涙の結晶はこんな事では挫けないんだからね!


「あら、誰かと思えばお父様に屋敷を追い出された従姉の子じゃない」

 って、なんで速攻バレるのよ! しかも一番会いたくない相手に声を掛けられるなんて。


「はぁ……お久しぶりです、ロベリアさん」

 私は嫌々ロベリアに挨拶をする。


「なんですの、その嫌なため息は」

「いえ、ちょっと会いたくない人に声を掛けられてしまったので」

 私は素直に今の気持ちを伝えた。まぁロベリアだからいいよね。


「あ、貴方ね! そもそもなんで爵位を剥奪された貴方がここにいるんですの!」

 はいはい、むしろ私が聞きたいです。


「まぁ、招待状が届いてしまいまして。仕方なく参上した訳です」

「それは何のご冗談ですの? 貴方のような輩が王家主催のパーティーに呼ばれはずがありませんわ」

 それが呼ばれたんだって、そもそも招待状がなければここにはいないでしょうが。


「それよりお祖父様はもう来られているの?」

 ぶっちゃけロベリアはどうでもいい、気になるのはお祖父様の存在だけだ。

 今後の事もあるので出来れば色々話が聞きたい、今回ばかりは嫌われているからと何もしない訳にはいかないからね。無視される可能が高いけど。


「なんでお祖父様が来られるのよ」

「えっ、お屋敷に泊まられてないの?」

 あれ? お祖父様が王都に来られる時は前日には本邸の別館に泊まられるんだけど、今日のパーティーには出席しないって事?


「そもそもお祖父様は引退して、アンテーゼ領におられるのよ。王都の社交界に出席される訳がないじゃない」

 予想通りロベリアは何も聞かされてないみたい、自分の継承順位がかなり低いって知ったら驚くだろうなぁ。


 それよりお祖父様が来ていないって事は、私の読み間違い?

 お祖父様が伯爵なら必ず招待状はアンテーゼ領のお屋敷まで届いているはずだ。そして遅くとも前日までには王都の本邸にある別館で宿泊されるのが、今まで通例だったのだ。

 じゃ、体調でも崩されているんだろうか? 屋敷を出て以来アンテーゼ領のお屋敷とは疎遠になっているから、一切の情報が入ってこない。

 流石に二年も経つし爵位の事もあるので、私たちが屋敷を出た事ぐらいは知ってるだろうけど。




 ロベリアと話をしていると、玉座が置かれている上段ステージが騒がしくなり、騎士の一人が陛下たちの入場を告げる。

 陛下を先頭に王族の方々は入場され、その後を追うようにルテアが続く。

 一緒に入ってきたルテアの姿をみて出席者がザワつくが、陛下が合図をすると一斉に静まり返った。


 陛下たちは一旦ステージに設けられた真ん中の椅子に着席され、ステージ下の左右に宰相のクラウディア・エンジウム公爵と、騎士団長を務めるエヴァルド・ハルジオン公爵が配置に着かれ、クラウディア様が開会の宣言をされる。


 ん? ハルジオン公爵様って……どこかで見た気が……って、この間ルテアのパーティーで一緒にダンスを踊った人じゃない! あぁ、どうしよう。あの時何も失礼な事はしてないよね……ってまてまて、そうじゃない、ハルジオン公爵って事はジーク様のお父さんじゃない!


 私が一人葛藤している間にも陛下の話が続き、最後に王子様とルテアの婚約が発表された。


 私は一旦考えるのを止め、王子様とルテアに拍手を送る。

 結婚はルテアが学生の事もあり、もう少し先になるだろうけどウエディングドレスかぁ、女の子ならちょっと憧れるよね。




 陛下の話が終わり、ワルツのメロディーが流れてくる。

 ルテアは大勢の大人の人たちに囲まれ、身動きがとれない状態が遠目でも見える。

 今までは自分の娘をとか考えていたのが急に相手が決まったんだからね、どこの貴族も媚を売る事で必死なのだろう。


 そして私はと言うと、今だにロベリアに捕まったままだったりする。

 私なんか放っておいて、何処かの男子でも捕まえてくればいいのに。


「王子様もあんな子の何処がいいのかしら。私だって爵位も十分だし、絶対私の方が可愛いと思うんですけど」

 いやいや、ルテアは本家の公爵令嬢で、あなたは伯爵家の血筋ってだけでしょ。もちろんルテアの方が可愛い。


「それより何時までここにいらっしゃるおつもり? 貴方みたいな部外者はとっととお帰りになられた方が良いのではなくて」

 ルテアの次はやっぱり私を標的にするのね。もういい加減なれたけど、鬱陶しい事にはかわりない。でも今回ばかりはいい事を言ったわ。


「うん、そうだね。ロベリアがそう言ってくれるならそろそろ帰るわ。それじゃ陛下や王子様への挨拶はお願いするわね」

「へ?」

 よし、あとの責任はロベリアに全てなすり付けよう。陛下への挨拶はしてないけど、私一人ぐらい分からないよね。

 私の素敵な考えで、きびすを返し帰ろうとした時……


「バカな事を申すな」

「うわっ」

 突然真後ろから声をかけられ、思わず声を出し驚いてしまった。


 もう、なんで今日に限って誰もが私を驚かそうとするのよ。心の準備が出来てないのに突然出てこないでくださいよ、お祖父様……。


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