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ローズマリーへようこそ  作者: みるくてぃー
夢のはじまり
24/63

第24話 聖祭と赤い服

「るるるーん、るるるーん、るるるーるる♪」

「お姉さま、何かいい事でもあったのですか?」

 私が鼻歌を歌いながら朝食の合間にシロの肉球を堪能していたら、エリスが不思議そうに覗き込んできた。


「だって今日はクリスマスイブなんだよ、テンション上がっちゃうじゃない」

「何ですかお嬢様、そのクリスマスイブというのは?」

 今日は十二月二十四日。前世で言うクリスマスイブ、恋人同士が最も街にあふれてしまう苦行の日でもある。だけど此処は異世界、つまりカップルが目につかない上クリスマスを堪能できちゃう! 悲しくなんかないやい。ぐすん。



「ん〜、なんて言えばいいのかな」

 まさか別の世界で神様を信教していた人の誕生日って言うわけにもいかないし、ましてや私に宗教の心得などあろうはずもない。

 ただお祭り騒ぎを楽しみたいだけ。


「えっとね、赤い服を着たおじいさんが赤鼻のトナカイに乗って、真夜中になると小さな子供のいる家に煙突から入ってね、そこで良い子にしている子供にだけお菓子やおもちゃを置いていくのよ」

「それって真っ赤な返り血を浴びた盗賊が、赤鼻の精霊と一緒にこっそり夜中に煙突から強盗に入っているだけなのでは?」

 怖いわ! どんな想像をしてるのよエレンは。


「あくまで例えばの話よ、実際にそんな事はないから。もっとメルヘンちっくな考えをしてくれると助かるわ」


「それでそのクリスマスイブに何かするんですか?」

「もちろん、そのための準備も整っているわよ。じゃーん!」

 ふふふ、私が夜なべして作ったサンタガールの服! 肩出しワンピースにボレロ付き、胸元を白のボンボンで止めるようデザインされておりスカート狙ったかのように膝上10cm。赤いロングブーツは街中を探して見つけてきたわ。

もちろんエレンとエリスとリリーの分。

私? 着ないわよ、素足が見えちゃうじゃない。


「これ誰が着るんですか?」

「もちろんエレンたちの分よ」

 鼻歌を歌いながらルンルン気分の私に、どこか諦め顔にガックリ肩を落としているエレン。逆にエリスは渡したサンタガールの服に興味深々なご様子。

 この世界にスマホがあれば画像に残して毎日堪能できるんだけどなぁ。





「それじゃ今日の朝礼を始めるわね、まず今日はクリスマス限定商品を用意しているわ」

「限定商品ですか?」


「ええ、その名もブッシュドノエル!」

 じゃーん! って具合にエレン達にブッシュドノエルを見せる。


 クリスマスといえばこれでしょ! 正確にはビュッシュ・ド・ノエルと言うらしいが、この際細かなところは省いちゃおう。


 クリスマスの薪と言う名のとおり、ロールケーキを丸太に見立ててチョコ生地やチョコクリームをふんだんに使用したケーキ。

 見た目も可愛く気づけば一人で丸まま食べきり、翌朝の体重計で悲鳴をあげるというウルトラコンボ!

 美味しいのがいけないんだい。しくしく


「可愛いケーキですね、すごく手も込んでいて美味しそうです」

「みゃぁー」


「でしょー、これを今日だけ限定って事でアピールしていって、人はね限定って言葉に弱いのよ。フッ」

 遠くを見つめるようなポーズでさりげなくシロの肉球を触る。


「それとこの小さなお菓子を子供を連れてきたお客さんに配ってあげて、中には小粒状のスコーンが入っているわ」

 このスコーンはエリクの手作り、私が何か子供にあげるお菓子を考えていたらスコーンはどうかと言ってきたのだ。

 スコーンだったらコスト的にも問題ないし子供にも人気の定番お菓子、どうやらエリクの得意なお菓子の一つらしいので全て一任したというわけだ。



 朝礼も終わり、エレン達もサンタガールの服に着替え準備万端! さぁ開店よ。






 結果から言おう、ブッシュドノエルは売れに売れた。

 見た目も可愛いので女子から大人気だった。だがそれ以上に男どもが寄ってきたのだ、エレン達のサンタ姿に惹かれて!


 想像してみてほしい、この世界の女性はロングスカートが一般的だ。子供のスカートでもせいぜい膝辺りまで。

ただでさえ普段の膝上ニーハイ×絶対領域の制服は女性はおろか男性陣にも大人気、密かにエレンのファンクラブもできているという噂さえあるのだ。そんな当店自慢の可愛い売り子さんが男心をくすぐるサンタ姿、これで萌えなければいつ萌えるというのだ! 言い切った!


 そのため、本日限定と言う言葉に導かれた男どもがエレン達の姿を一目見ようと集まる集まる。

 噂が噂を呼び、どこかに情報網でもあるのかと疑いたくなるほど聞きつけた男どもが買いに来たと言うわけだ。


 そして更に拍車をかけたのがエレンの言葉。

「こちらは本日限定商品となります。よろしければいかがでしょうか?」

 ドッキューン!


 サンタガールのエレンに、真近でお願いされたとあっては買わざるを得まい。

 単純にエレンの姿を見に来ただけの男どもはこぞって顔を赤く染め「じゃ、じゃこれを」と言ってしまうのはしかたあるまい。わかるぞ男ども。


 こうやって罪深いエレンはこの日、開店以来最高の売りげを達成したのだった。


 サンタガールこえーっ!






『ローズマリー営業日誌』


 本日エリスに近寄ったヤローどもの顔を全員グレイに覚えさせた。

 今後一切可愛いエリスに近寄らせてはいけない。娘は嫁にやらん!

「お父様、お母様、私は必ずエリスをヤローどもから守りきってみせます」




 余ったブッシュドノエルを、いつものようにこっそりシロにあげたら嬉しそうに食べてくれた。

 肉球サイコー。

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