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ローズマリーへようこそ  作者: みるくてぃー
夢のはじまり
11/63

第11話 初日の喧騒

「いらっしゃいませ。スイーツショップ ローズマリー本日オープンです」

「ご試食をご用意しております。お手間を取らせませんのでお一つお受け取りください」

「よろしくおねがいします、お一つどうぞ」

 私とエレン、そしてエリスの三人でお店前を通る人たちに試食用のケーキを配っている。


 そしてリリーは空から花びらの幻影を降らせてくれているので、行き交う人々は物珍しさに私たちに寄って来てくれているのだ。

 おかげで試食用のケーキが湯水のように無くなっていく。


「エレン、ここはお願い。私は調理場へ戻るわ」

「はい、お嬢様」

「エリス、リリーも頑張ってね」

「はい、お姉さま」

「はい、ママ」


 店の中はそれほど混んではいないけれど、そろそろグレイ一人では苦しくなりそうな雰囲気ね。

 私はすぐに調理場に入り、ディオンと一緒に試食用のケーキを切り分けていく。


「お嬢様、シュークリームが売り切れました。あとタルトが残り僅かでございます」

「分かったわグレイ」

「シュークリームできたぜ、タルトはもうちょいだ」


 前言撤回、店内も戦場だわ。

 お客さんが少ないと思っていたけれど、思った以上に大量買いのお客様が多いみたい。

 商人さんたちや使用人さんたちは大勢の仕事仲間に差し入れとして買っていってくれるみたいで、一人一人のお客様が大量買をしてくれているらしい。

 そこまで考えてなかったわね、買いやすい値段設定にしたのが更に拍車をかけたみたい。


「お嬢様、試食用ケーキがなくなりました」

「今持っていくわ」

 私は急いで切り分けたケーキをエレンたちに持っていく。


「一つもらっていいか?」

「これ何て食べもんなんだ?」

「美味しいけど高いんじゃないの?」

 持っていった瞬間沢山の人たちが寄ってきた。


 嬉しいことだけど全てのお客様に対応しきれていない。


「スイ、エン、悪いんだけどエレンたちと一緒にお客様の対応をお願い、言葉遣いにはくれぐれも気をつけてね」

「まったく精霊使いが荒い主人あるじだ」

主人あるじだ」

 二人とも口では文句を言っているけれど顔はとびきりの笑顔だ、任せても大丈夫だろう。


 二人の後ろ姿を見送り私は再び調理場せんじょうに戻った。






「はぁ、少し落ち着きましたね」

 嵐のような午前が過ぎ、お昼を少し回った辺りでようやくお客様が引いてきた。

 エレンもエリスもさすがに疲れたのか、奥の休憩スペースでぐったりしている。


 さすがにディオンやグレイ、それに私は疲れてはいるが互いに顔には出していない。


私奴わたくしめはお嬢様に謝らなければなりません」

「どうしたの急に?」

 簡単にお茶の準備をし、みんなに配り終えたところでグレイが私に話しかけてきた。


「お嬢様がお店を始めると言い出された時、正直難しいだろうと思っておりました。ですが今はあの時のお嬢様の言葉は正しかったのだと、考えを改めさせていただきました」

「ありがとう、今の私にとっては最高の褒め言葉だわ。でも謝るのまだ早いわよ。そうね……一年後、今の気持ちがまだ残っていればもう一度その言葉を聞かせて頂戴。それまでは振り向かずに頑張るから」

「畏まりました」


「それにしてもこのお茶おいしいですね、何なんですかこれ?」

 エレンが聞いてきたのは今私が適当に入れたハーブティー。


「これはオリジナルのハーブティーよ」

 この世界にもハーブティーは存在するのだが、種類が極端に少ないのだ。定番とされるカモミールやシナモン等はあるのだけど、ちょっと風変わりの物がまったくない。

 だから屋敷に出入りしていたセネジオにお願いして色々なもので試していたのだ。


「オリジナルですか?」

「ええ、ハイビスカスとローズヒップの組み合わせよ」

「これも嬢様の発案で?」

「もちろん、色々試している課程でできた新商品……の予定よ」

 ごめんなさい嘘です! 前世の記憶です! エレンに心の中で思いっきり謝罪しました。


「あと、ついでに言うなら美容の効果もあるわよ」

「美容ですか!? これ絶対売れますよ!」

「そ、それはいいんだけど、茶葉の状態で売るには人手も時間も足りないのよ。今飲んでいるのは屋敷にいた時に試作品として作った残り物ね」

 エレンの勢いに思わず後ずさりしてしまったわ、やはりエレンもお肌が気になるお年頃なのね。若いけど。


「勿体ないですね、こんなに美味しいのに」

「今はまだ攻める時ではないからね、今は広めることが先決よ。でもこのまま行けばそう時間はそう掛かりそうにないけれど」


カランカラン

「いらっしゃいませ」

 話をしていたらお客様が入ってこられ、すぐさまエレンが対応に入る。

 さすがノエルに鍛えられて来ただけのことはあるわね、業種が変わったというのに対応がすごくスムーズだわ。


「さっきうちの店の子が買ってきたんだけど、美味しくてまた買いに来ちゃったわ」

「ありがとうございます。どのような感じのものをお求めですか?」

「そうね、白い雪のようなものが乗っているのがいいわね。まぁ、こんなに沢山の種類が? 困るわね」

 やっぱり庶民の人達には馴染みのない食べ物なんだ。生クリームなんて恐らく見るのも食べるのも初めてだろう、美味し美味しいと食べ続けると太ってしまうんだけど。

 神様、女の子の体型を壊してしまう私をお許しください。



 カランカラン

「いらっしゃいませ」

 そろそろ午後からのお客様が入りだしてきたみたいね。


「さぁ、もう一息頑張りましょう」

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