表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

墓守と守護亡霊

作者: ゆっくり

久々の短編です。

「あにきぃ~やっぱりよそうぜぇ~ここの噂はマジでやべぇよぉ」

 弱気な声が後ろから聞こえてきやがる……墓荒らしとして活動し始めて3年が経つが今回の相棒は幽霊などの噂を本気にしているらしい……

 墓荒らしが何を怖がるってんだ、俺たちが怖がるものなんて、警備隊か大親分のカミナリ位だぜ、いちいち亡霊だ、幽霊だ殺人鬼だって言う噂を鵜呑みにしてなんか要られない、俺たちは犯罪者なんだ。


「いちいちわめくな……怖いんなら何故墓荒らしなんかやってる……」

 俺は後ろの相棒に言う。


「だってよぉ俺が出来る生きていく方法がこの位しか無いんだから仕方なかったんだよぉ、俺は度胸も普通のやつらみてぇに働くっていうのが出来なかったから周りの奴らに馬鹿にされるし……」


 っとまぁこんな感じでネガティブなヤツだ、何で大親分はこんなヤツを入れたんだか気が知れねぇ


 今回荒らしに行く墓は通称『王族墓地』 なぜ通称かと言うと、ここは王族の遠縁に当る墓でしかも、王族から縁を切られた人物が眠る場所だからだ、何をして何故縁を切られたのかは調べても分からなかった。

 分かったことは埋める時に、かなりの金品を一緒に埋めたと言うことだけ、ここの墓守は既に寝に入ってる時刻、朝日が昇るまで約2時間って所か……急がねぇとな……


「おい!いつまでもそうしてんなら、置いてくぞ!こちとら時間がねぇんだからな!」

 そう、掘り起こして棺桶を解体するまで1時間以上かかる……場所を特定して墓守がいつ寝るまでとか調べたが、掘り起こすのと棺桶の解体は時間が掛かる……



 俺達は歩を早め目的の場所へ急いだ。


「ここか……間違いないな……おい!シャベルをよこせ!お前は向こうから掘り起こせ!」

 すばやく場所を確認し、指示を出して俺も掘り起こしていく、休み無く掘り続け棺桶の一部が見えたらあと少しだ、棺桶に注意を払わず、ガツガツと周りを掘り出して行く。


「やっと解体か……少し時間ねぇが仕方ねぇか……おい!急ぐぞ!」

 相棒を急かし俺も手を早める。


「やっと中身を拝めるぜ、へへっ」

 やっと中身の金品が拝めると思うとつい笑っちまうのが俺の癖だがコレばかりは直そうとも思わねぇ、労働に対する対等な……いやそれ以上の金が手に入るんだ、笑わないわけがねぇ、相棒もさっきまでの、ネガティブな顔とは裏腹に、笑みが見える……気持ちわりぃ、笑みだなぁ……


「あにきぃさっさと開けましょうぜぇ」

 と急かしてきやがる……現金なやっちゃな……まぁ別にいいが、開ける前に時間と墓守の確認をしねぇと、俺達は捕まっちまう。


「まぁ待て、時間と墓守を見てくるから先に開けてろ……チョロまかすなよ……」

 と一応釘を刺しておくがまぁ心配はしてねぇ大親分にバレた時は死を意味する、俺が墓荒らしとして、やって来た3年で、金品をチョロまかして、大親分にばれたヤツはかなりいた。

 自分の欲に食いつぶされ終いには、その人生にすら終止符を打つことになるからな俺も鋼の意思で自分の欲に制御を掛けるのが精一杯だった。

 

まぁ今じゃ何故大親分がチョロまかしを、禁止してるのかは、分かってんだけどな……連れねぇよなぁツンデレってやつはよ、まぁさっさと仕事を終わらせて、エールをかっ食らいたいぜ、身体が水分を欲してるからな。



 墓守はまだ寝てるが、朝日まで時間がねぇか……いそがねぇとな……俺は急いで来た道を戻り、棺桶の穴の前に行く。


「なんだぁ?アイツまだ中身取り出してねぇのか、いそげってんだよ馬鹿タレ」

 文句を言いながら穴の中を確認すると、相棒が邪魔で棺桶の中身が見えないが、恐らく金品と一緒に、白骨した遺体が合ったんだろうと思った。


 最初俺も見た時は驚いて固まったっけな……と昔のことを思いつつ相棒に話しかける


「おい!いつまでも固まってないで早く中身を取り出しちまえ!時間がねぇぞ!」

 と急かす、慣れないと確かに固まっちまうがそれ所じゃねぇ、こっからは時間との勝負なんだからな、俺は袋を準備しながらそんな事を考えてると、


「あにきぃ……この墓って数百年以上前のだよなぁ……?」

 って聞いてきやがった。

「ん?何言ってんだ、当たり前だろ大昔の王族の墓だって調べが付いてんだ場所も間違いねぇ」っと言い返す。

「死体って時間経つと骨だけになるよなぁ……」

 っと当たり前なことを聞いてくる。

「何を当たり前なことを言ってんだお前は……いいから早く中身をこっちに投げろ、時間がねぇんだぞ」と相棒を急かすが

「あ、あにきぃこの棺桶はやばいって……お、おれはやりたくない……」

 と声を震えさせながら、こっちに上って来る、俺はその時にやっと理解した。相棒が何故固まっていたのか、何故怖がっていたのかを。



 その棺桶に眠るのは少女だった、銀髪で腰まである髪、整った顔でまだお子様体系ながらも、将来が楽しみな体つき、成長していれば絶世の美女になってたであろう、その少女を見て、理解した。


『数百年』も昔の棺桶に『白骨化』すらしてない『つい数日前に』埋めたような『遺体』がそこにはあった。


「うそだろ……」

 情けない俺の声が静かな墓地に響き渡った、俺達は共に背中に冷や汗をかいてるだろうと、お互いに分かった。


 今の俺達は一心同体、協力してここから逃げ出さなければならないと、共に理解した。

 だが、それはもう既に遅すぎた。



「あらあら、レディーの寝顔を無断で見た罪は重くってよ、お2人とも」


 凛とした声が俺たち2人しかいないはずの墓地に響いた。 その声の持ち主は、恐らく目の前の棺桶に眠っていた少女のものだろうか、意を決して少女の遺体に目を向けるもそこにあったのは、直径12cmくらいの懐中時計だった。


 そこに居た『少女』は何処に行ったのだろうか、あの『懐中時計』は何処にあったのだろうか、なぜ自分たちは声も出ずに、ここから動けないんだろうか、様々な疑問が頭に走るが、俺は分からないまま、目を一瞬閉じた。


 次に目を開けた時は、目の前に『棺桶に眠っていた少女』が居た。

 理解できないまま、硬直し、なおかつ身体は震え、頭は考えることを放棄し、俺は動けないまま、数秒とも永遠とも言える時間を体験した。




「なんじゃ、起きておったのか、クリスティーナ姫」

 聞きなれた枯れた声が、目の前に居る二人の後ろから聞こえたわ、一年ぶりの声、私達の寝床を管理してくれている墓守の姿がそこにあったわ。


「久しぶりね、墓守。 えぇ起きたわ この馬鹿2人に寝顔を見られてイライラしてる所ですの、邪魔しないでいただきたいですわ」


 あろう事か、ゲスな男共にわたしくの寝顔を見られたのですわ、レディーの寝顔を見るなんて紳士のすることじゃなくってよ、わたくしはこの馬鹿2人の記憶を消すことに決めましたの、えぇ寝ている私の顔をみた罰とかその他色々の罰よ


「邪魔も何も、わしもこの2人を処分するつもりだったんじゃがな……まぁお優しいクリスティーナ姫にお任せいたしましょう、ベッド(棺桶)と寝室(穴)の準備はお任せください、わしは朝食の準備をしてきますゆえ……今夜まで起きていられるのでしょう?クリスティーナ姫」


 墓守はそう言いながら、小屋へ向かって行ったわ、私は墓守に向かって


「えぇ、年に一度しか見れないんですもの、今夜は寝ずにずっと起きてますわ」

 と、言っておく……毎年の事なのですけれどね


 その間にもこの馬鹿2人の記憶は消して置いてますわ、生きた年数分の記憶を消すのはやっぱり時間が掛かりますのね……新しい記憶から次々に消え、最後には自分が誰なのかさえも、分からないようにする私の能力、『レコードクラッシュ』


 私が生きていた時に、王族から縁を切られた原因、普通は女神や精霊様から加護を受け、何らかの能力を貰うのですけれども、私の場合、死神や悪魔の類の加護を受けこの能力に目覚めましたのよ、まぁ楽しくは無い人生でしたわね……縁を切られ一人孤独に森の中で住んでいた時の記憶がまた甦りそうですわ……


 私は、第2王女として生を受けた『クリスティーナ・アイリス・フォール・ビギヌス』


 このビギヌスって言うのは王族にしか受け継がれない家名、先代の王が神より授かりし名、私はそれを汚してしまった、今この国の王族はビギヌスの名を使ってはいないらしい、それは私が汚してしまったから……死神や悪魔に神を近づけさせないために、使わなくなった、名。悲しき呪われた私の人生……


「クリスティーナ姫お時間ですぞ」

 墓守の声が聞こえたわ、時間?あぁそうか、そうでしたわね、今日は年に1度のここ王都の新年のお祭り、新しい年がいい年であるようにと願いを込めて騒ぎ出す賑やかな夜


 私は、このお祭りが大好き、王都中がキラキラ眩しくって楽しい、たった一夜だけのお祭り、墓守は好きじゃないみたいだけど、私の為に一緒に見てくれる、優しい人。


 後何回この景色を見れるだろうか、私は不安でしょうがないけれども、元々死んでいるこの身体、何故起きることが出来ているのかは、謎。


 気がついたらこの夜だけ起きていられるの、何故かは分からないけれども、私はこのお祭りが大好きで、この景色だけで満足できるの、ただ眺めているだけだけども、心が満たされて私が居なくなってしまう感覚が有るけれども、私はそれを受け入れることが出来るの、だって、これはこのお祭りは……



 クリスティーナ姫は呪われたっと言っておられるが、それは勘違いじゃった、死神や悪魔の加護ではなく、クリスティーナ姫ご自身が独自で覚醒した能力じゃった。


 ワシら墓守は、死神や悪魔などと近しい仲で、クリスティーナ姫の事について聞いたことがあった。


 死神曰く、クリスティーナ姫は、次期閻魔としての才能があり、そのせいで記憶を消すという、神がもっとも嫌う能力に覚醒したとか、死神も悪魔も元をたどれば神の子、善と悪、光と闇、生と死、二つの反発しあう力によって世界のバランスは保たれ、世界の安定した形がここに有るということ。





 ビギヌスとは初代閻魔大王の名、この国の王族はその継承者であった。我ら神々が人と交わると言う事は、本来在ってはいけないこと、世界のバランスが大きく傾くからだ、だが、初代閻魔大王は人を愛してしまった。閻魔に寿命が出来てしまった。


 神やその子供たちは、死ぬことはあっても、その存在が消えることは決してない、年月を重ねまた復活するからだ、閻魔の娘クリスティーナは次期閻魔となるだろう。


 あの娘が持っていた『懐中時計』は閻魔が愛した人のが持っていた物だ、それは『証』であり『愛』であり『目印』だ、閻魔の血が絶えず残っていると言う証、閻魔が愛した人の血筋であると言う目印。


 閻魔の力によって永遠不滅の神具しんぐとなった1つ、彼女は神の名を汚したと言った、それは違う、逆に神の名を知らしめた1人になった。





「姫様……」わしは、そう声をかけるのがやっとじゃった。


「あぁ墓守……そんな顔をしないで……仕方ないのよ、元々いつ消えてもおかしくないんだもの……私は悲しくはないわ」


 墓守は泣きそうな顔をしているわ、それは私の身体が消えかけているからだと思うわ、私も悲しいけれども、それは元々分かっていた事、いつか消えるだろうと覚悟していたこと、この綺麗なお祭りをもう見れなくなるのは、悲しいけれどもコレばかりは仕方ないわね……


「ねぇ墓守……私はこのお祭りが大好きよ……キラキラ輝いて、私の生きていた中でこんなにも綺麗なものは無かったわ……死んでから見られるのが残念だったけれども……」


 いきなり、大きな音がしたわ、最初は細い音だったのに消えてから数瞬でお腹の底から響くような音だったわ、音が大きすぎてビックリしちゃったじゃないの……


 でも次が鳴った時はそれの余りにも綺麗で眩しい景色に、見とれてしまったわだって、あんなにも華やかで綺麗な景色は今までに見たことが無かったわ、去年もその前も今までに無かった景色、色とりどりのキラキラと輝く花……



「姫様、アレは『花火』と言うものです、去年の終わり頃に異国から伝わった物です、如何でしょうか」


「素敵よ……とても綺麗……」私はそれしか言うことが出来なかったわ、だって心を奪われてしまったわ、仕方ないじゃない もう一度みたいとは思うけれども私は満足してしまったわ、もうここには居られないみたいね。


「墓守……いままでありがとうね……」




 お姫様はそれだけを言うと消えてしまいました。墓守はお姫様の棺桶を綺麗なものに取替え、お姫様の懐中時計を棺桶と共に土の中へ埋めてしまいました。


 お姫様がまたここでお祭りの景色を見れるようにと願いを込めて。


お読みいただきありがとうございました。

 

 本当はクリスマスに向けて何かやろうとは思ったのですが、

個人では仕事が忙しくなり、サークルでは中々皆と時間が会わない時が多々ありまして……


少し早いですが私から、短編のクリスマスプレゼントと言う事でw


 時間が有れば、別な短編を書くか、メインの朝起き~のプロット作成をしたいと思ってます。

まぁ予定は未定なんですがw


これからも、ゆっくり応援していただけると心強いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ