表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本を書く仕事  作者: 竹仲法順
9/245

第9話

     9

 基本的に毎日七時間睡眠なのだが、昼間眠くなることもある。その時は軽く仮眠を取っていた。秋は涼しい。いい時季で、文学をやるにはもってこいだ。と言っても、俺は年中執筆していて、原稿はちゃんと書けているのだが……。

 ネット小説はアクセス数がそこそこ多く、徐々に読者も付いてきている。普段から俺の作品を紙媒体で読む人間は極少ない。滅多に増刷が掛からないのも、ネックといえばネックだった。だが、ネットだと、パソコンだけじゃなくてスマホからも見れるのだし、どんな作品を書いているのか、さわりだけでも読んでもらえる。知名度アップには十分な武器だった。

 確かに独りの部屋で原稿を書くのは孤独だ。このマンションも一人で住むには無駄に広い家で、使う部屋だけ常に掃除していた。書斎には本棚を三つ置いていて、買い込んだ本を並べている。毎日マイペースでやっていた。パソコンに向かい、キーを叩く。単調だが、それでも何もないよりはマシだ。

 最近、昔の学校時代の友達が自宅の固定に電話してきた。二十分ほど話をしたのだが、どうやら皆、同窓会などに集まりたがらないらしい。そりゃそうだろう。俺も地元の中学、高校に行って、大学は都内だったが、何かしら集まるということがない。どうやら飲みに行くのは職場の上司とか後輩たちとで、旧友とは付き合いがないようだ。一応昔の同級生たちも、俺が職業作家で地元に住んでいるのは知っていても、誘いにくいらしい。それに酒自体一滴も飲まないことは、ブログやツイッターなどで公言しているので尚更だ。「加田って面白くねえな」という噂が当然立つだろう。「一日中、書斎で原稿なんか書きやがって」とも言われているかもしれない。それでも、原稿料などをもらう現役作家である以上、やるしかない。

 執筆するのも、楽しいことの一つだ。素直にそう思える。妻子がいなくても、器用に何でもこなしていく。四十代までずっと独りで来た。学生時代に付き合った女性はいたのだが、その女性は大学での専門の研究に勤しむために、俺との交際を諦めた。そして俺の方もその女性とはそれから何もない。

 その日も朝から昼前まで所定の原稿を綴り続けた。淡々とではあるが、キーを叩きながら……。(以下次号)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ