第80話
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昼間ゆっくり過ごし、夕食と入浴を済ませたら、後は寝るだけだ。午後九時前にはベッドに潜り込み、一晩休む。熟睡できても、冬の朝は起き出すのが辛い。それに起床直後も眠気があった。起きたらキッチンに入っていき、コーヒーを一杯ブラックで淹れて飲むのだが……。いつも午前五時前には目が覚めている。寝床に潜ったまま、少しだけ二度寝していた。慢性的に疲れが溜まっている。特に脳を使い過ぎていて、疲労はかなり増していた。
朝食を作り、取ってから、後片付けする。今日は祭日で出版社も雑誌社も休みなのだが、通常通りパソコンに向かい、執筆するつもりだ。朝一で原稿を書く。いつもと同じである。健筆というやつだった。
長い年月、出版界と関わっているうちにいろんなことを体験するのだし、この世界に居続けると、思うことは多々ある。文人の才能は文筆のみならず、ありとあらゆる方面に発揮される――、間違いない事実なのだけれど、納得できることばかりじゃない。大御所作家は肝心の執筆をゴーストライターなどに任せて、別の活動に専念するのが筋だ。
ほんの一握りの書き手しか売れない。それは間違いない事実である。俺自身、迷いはない。マシーンに向かい、淡々と原稿を作っていく。執筆後の入稿作業にも慣れていた。長年続けてやっていることなので……。
昼になると、書き物の仕事も終わり、キッチンで自炊して食事を取った。午後からは寛ぎ続ける。時間を計画的に使いながら……。(以下次号)




