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本を書く仕事  作者: 竹仲法順
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第6話

     6

 その日も夕食を取り、入浴して汗を流してから、午後十時には眠った。すぐに寝入ってしまう。メンタル面で疲れているのだ。作品を執筆し、原稿料や所定の印税などをもらう職業作家というのが、どれほど身をすり減らすのか、普通の人は想像が付かないだろう。俺だけが悩んでいることじゃない。生業とする人間は、誰もがどうしても悩んでしまう。

 だが、ある意味、健康的でもあった。原稿を作っていくのは、苦じゃないからだ。時間を掛けて練っていく暇はないのだけれど、パソコンのディスプレイがあれば、キーを叩き、文字を打ち込んで紡いでいく。普通の人には耐えられないことが、俺には耐えられる。逆に言えば、俺にサラリーマンなど勤めの仕事は、全くと言っていいほど出来ない。

 水曜の朝も午前五時に起き、コーヒーを一杯淹れて飲み、朝食を取った後、パソコンを立ち上げた。ドキュメントを開き、キーを叩いて文章を作っていく。複数のドキュメントを並行して仕上げていった。かなりの作業だ。慣れがあり、苦にはならないのだけれど……。

 ネットの連載小説も三回分一気に書く。苦痛じゃない。俺自身、小説を書くことは難しいことじゃないのだ。普通の人間と明らかに違うのである。書斎の人である以上。

 ミステリーにはコツがある。最初に死体を出すこと、それに関連して刑事や探偵などで事件を上書きしていくこと、そして最後に犯人に自白させること、作中の描写や情報などは全て推理の元手となること……、これらの条件は極めて当たり前なのだが、こういったことが事件モノの基礎となるのだ。今まで書いてきた作品でも忠実に守ってきた。

 何か逸脱したものを書こうとは思わない。最近の犯罪は美学がないなと思う。振り込め詐欺やバラバラ殺人など……。おぞましいだけで、引いてしまう。それにそういた作品群はマニアが書けばいいだろう。俺は事件モノでも正当なミステリーやハードボイルドを執筆している。邪なものは書いたことがないのだし、今後書こうとも思ってない。もちろん、舞台となれば新宿歌舞伎町や山の手など、東京都心が圧倒して多いのだけれど……。

 原稿を書き終われば、後は自由時間となる。これだから、職業作家は時間の管理が難しい。昔から書き手は皆、そういった人が多い。持て余すような膨大な時を使い、作品を作っていく人間が……。一風変わってないと出来ない。豊かだが、反面、異常な想像力や感受性などを持ち合わせていて。いつも思う。普通の人間とは違っているなと。いつの間にか、文章を綴り、物語を構築していくことが得意となったのだけれど……。

 昼前に仕事が終わったので、食事を作って取り、ゆっくりし始める。疲れはあった。腱鞘炎で掌や腕が痛む。正味五時間程度の作業で、いつものことなのだが……。(以下次号)


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