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本を書く仕事  作者: 竹仲法順
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第56話

     56

 その日も午後九時にはベッドに潜り込み、眠った。秋の夜の涼しさは快適だ。一晩熟睡する。午前五時には自然と目が覚めて起き出し、キッチンでコーヒーを一杯淹れて飲む。そして朝食を作った。味噌汁を作り、ご飯と納豆で栄養を取る。食べ終わってから、洗面を済ませ、書斎でパソコンを立ち上げた。出版社が休みでも原稿は書く。いつも通りに、だ。

 確かに俺の作品は部数が出ない。それに出版元もあまり宣伝してくれないのが事実である。宣伝されない本は売れないのが当たり前だ。逆に言えば、芥川賞作家や直木賞作家などで、どんなにつまらなく、読むだけ時間の浪費のような本を出しても、宣伝さえされれば派手に売れる。全くひどい話なのだが、現実はまさにそうなのだ。まるで無内容なベストセラー作品とやらに、読者が延々騙され続ける構図が続く。

 ただ、売れる人間は気の毒な側面もある。ずっと原稿に追われ、休む間がない。金を稼いでも、使うだけの時間とゆとりがまるでない。それは昔から同じなのだし、今でも続く文壇での慣習のようなものである。俺にはそういったものは何もない。単に公募新人賞を一つ獲り、デビューを果たしてから、愚直に書き続けてきた。あくまで寡作だ。わずかな生活費と遊興費を稼ぐ程度で。

 原稿はメールに添付して入稿している。IT社会は便利だ。普通なら原稿をわざわざ紙に印字し、その束を郵便で送るのだが、そんな煩瑣な手間は必要ない。零れ聞いた話なのだが、警察官が逮捕状をメールで受け取ることがあるという。怖い時代となった。現代社会は。

 正午前には仕事が終わり、昼食を自炊する。気を抜いてゆっくりし始めた。抱えることはいろいろある。だが、男性も四十代となると、迷うこともない。自ずとやるべきことをやっていく。日々の生活は果てなく続くのだから……。(以下次号)

 


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